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結婚するまで落ちない女になるって決めたけれど、もうすでに無理そうです。  作者: いか人参


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ダブルデート


「観劇なんて初めてだったけど…ぐすんっ…すごく良いものね。」


「良かったな。」


シモーネは隣でぐすぐすと涙するフランカに、ハンカチを差し出した。


シスト達の後を追って劇場に来ていた二人だったが、せっかくなら劇見て行こうぜというシモーネのノリにフランカが渋々ついて来たのだ。


結果、悲哀の恋を主題にした劇は、フランカの胸に深く突き刺さり、隣にシモーネがいることも忘れ、ただひたすら劇の世界に入り込んでいた。

ここに来た目的すらもすっかり頭から抜け落ちていた。




「やぁ、二人とも。観劇は楽しめたかい?」


「「…ひいっ!!!」」


座席の後ろから聞こえて来た聞き慣れた声に、悲鳴を上げた二人は、振り向けずに固まっていた。



「まぁ!二人とも来ていたの?」


シストの後ろからひょっこりと現れたミーナに、二人はあからさまにホッとした様子を見せた。



「ふふ。二人とも君のことを心配して来てくれたらしいよ。シモーネ、チケットが必要だったなら僕に直接言ってくれれば良かったのに。」


「お、お前、なぜそれを…」


「貸切にしたのは僕だ。いくらペンテ子爵家の名を使ったって、僕まで情報が降りてこないわけがないだろう?」


口調こそ穏やかそのものであったが、人を射るような視線をシモーネに向けている。

内心は、二人きりの初デートを邪魔されたことに、かなりキレていた。


そんな殺伐とした雰囲気の中、ミーナとフランカはきゃっきゃと観劇の感想を言い合っている。

これまで王都にすら碌に来たことのない二人にとって、生で見る劇は中々に刺激的だった。


目をキラキラと輝かせながら話しているミーナの姿に、シストは目を細め、その愛らしさにしばらく見惚れていた。




「せっかくだから、4人でお茶でもしてこうぜ!」


シストの機嫌が戻ってきた頃合いを見て、シモーネが提案して来た。

彼は懲りずに、シストとミーナのことを質問攻めにしてやろうなんて不埒な思惑を抱いていた。


普段だったら考える間もなく断固拒否するシストだが、フランカと楽しそうに話す姿を見て、たまには良いかと誘いに乗ることにした。もちろん、彼女達は大賛成であった。



こういう時ばかり用意周到のシモーネは、劇の終了予定時刻に合わせて、近くのカフェを予約していた。それも、王都で1位2位を争う超有名を。


その価値を知るシストは、シモーネの案内で着いた店を見て苦笑した。



ミーナとフランカは、見たこともないお洒落な外観のカフェに、ひどく緊張していた。紅茶1杯いくらするかしら?と彼らに聞こえないように、野暮な会話をしていた。


店内に入るとそこは、女の子の夢を詰め込んだような可愛らしさで溢れていた。

ローズピンクと白を基調にした店内に、フリルのカーテン、真っ白なソファーとテーブル、窓際に飾られた色とりどりの花々、ミーナとフランカは、その可愛らしさに店内をぐるりと眺めてため息を吐いた。


案内されたのは、窓際のソファー席だった。横並びで4人は座れそうなほど幅の広いソファーに、シストとミーナ、シモーネとフランカが隣同士で座っている。


注文した飲み物と、女性陣用のティースタンドが来ると、待ってましたとばかりに、シモーネが身を乗り出して来た。



「で?ミーナ嬢はシストのどこが好きなの?…いや、やっぱりこういう時は男から聞くべきか…っても、シストは一目惚れだもんな?」


シモーネのいきなりの発言に、滅多に動揺しないシストが軽く咳き込んだ。


ミーナは、咳き込む姿ですら美しいだなんて、もはや神の領域だわ…とうっとりとした目をシストに向けていた。



「確かにそうだけど…でもあれは、一目惚れなど軽々しいものではなく、運命そのものだったんだ。昔、たまたま街で見かけた君に、僕は心を奪われた。恋心を知る前に、僕は君に恋に落ちたんだ。あの日から、僕の心は君に奪われたままだ。」


自分が眺めていた相手に、今度は逆に照準を当てられたミーナ。

こんな大好きな美しい顔に見つめられ、溶けてしまいそうなほど甘い言葉を囁かれ、ミーナの頭は沸騰直前まで温度が急上昇した。



「ミーナ、僕の心は奪ったままで構わないけど、その代わり、責任を取ってくれる?」


隣にいたシストは、難なくミーナの髪に触れ、唇に当てた。

髪に神経なんてあるはずないのに、触れられた瞬間、彼女の全身に衝撃が走った。


こうなるともう何も考えられなくなる。ミーナは、自分の落ちない女設定も忘れ、じっとシストのことを見つめ返してしまった。



シモーネの変な質問のせいで、なし崩しになったミーナを見たフランカはため息を吐いた。


隣にいるシモーネに向かって、口パクで、「責任とってよね!」と訴えていた。




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