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青天の霹靂


『お前、やっぱいらないわ。もう飽きた。』


その一言で私は、人生初の彼氏にあっけなく振られた。まだ付き合って3ヶ月にもなっていなかった。


相手は新卒で入った会社の先輩で、恐ろしいほどに見た目が良かった。

女遊びが激しいとか悪い噂も多々あったが、そんなことはどうでも良かった。


この顔を毎日側で崇められるのなら、何でも許せると思ったからだ。


なのに、そんな日々は相手の一言によって、すぐに終わってしまったのだ。




***



「…嫌な夢を見た。」


自室のベッドの上で目を覚ましたミーナ。

お茶会の後、前世の記憶で混乱した彼女は、王都にあるタウンハウスに戻り療養していた。


彼女が普段生活している場所は領地にある本邸で、ここ王都からは馬車で片道3日ほど掛かる。

そのため、滅多に来ない王都だが、今回はほぼ強制参加のお茶会に出席するため、両親に連れられ、訪れていた。


本来なら、お茶会の翌日である今日、領地に向けて出立するはずだったが、ミーナの様子がおかしいことを心配した両親が日程を1日ずらしたのだ。



「ミーナ様、お加減はいかがでしょうか。」


部屋の外から、ミーナの専属侍女であるララが声を掛けてきた。

ミーナが幼い頃から彼女の専属侍女を務めており、彼女のことを察する能力に長けている。



「ええ、もう大丈夫よ。」


前世の記憶を完全に思い出したミーナだったが、一晩寝た後は落ち着いていた。

元々の自分の性格と、これまでミーナとして生きてきた性格が酷似していたためだろう。




「ミーナ!もう体調は大丈夫なの?」

「顔色は戻ったようたが…無理して戻る必要も無いから、もう少し滞在を伸ばそうか。」


ララから、ミーナが起きたことを知らされた両親が心配そうな顔で部屋に飛び込んできた。


パトローニ家は貴族と言っても、男爵という最下位且つ王都ではなく田舎にある領地に居を構えているため、価値観や感覚は貴族よりも平民に近い。



「お父さん、お母さん、心配かけてごめんね。私はもう大丈夫だから、明日帰ろう。これ以上本家を空けておくわけにはいかないでしょ?」


ミーナは心配をかけないように、にっこりと笑顔を見せ、明るい声で言った。

実際のところ、身体に不調はなく、今朝の夢見が悪かった程度だ。



「気を遣わせてすまないな。ありがとう。でも、体調に変化があったらすぐに言うんだぞ。」

「そうよ、ミーナ。無理はしちゃダメよ。」


「ありがとう。分かったわ。」



まだ寝てるんだぞとと念押しをし、二人は部屋を出て行った。

14歳の娘に対しては、些か幼過ぎる扱いだ。






「特に何も変わらないか…」


誰もいなくなった部屋でひとり呟いた。




前世の記憶が戻ったからと言って、それを有効活用出来るほど大した人生送ってないしな…フラれてすぐ事故に遭ってそのまま……だから、短い人生だったし。


来年からは王都にある学園に通うけど、その後は領地に戻って遠縁の男性と結婚すると思うし、特に波乱が待っているような人生じゃないわね。


このままずっと平凡に、田舎貴族としてゆるく生きて行くんだろうなぁ…


まぁ、愛とか恋とか見栄とか権力とか、そういうのと無縁で生きられるのは良いよね。ふふ、異世界スローライフとして堪能できそう。





タウンハウスに滞在中のミーナには、特に予定もなく、思考の整理がつくと、ウトウトとまた眠りについた。


だが、しばらく時間が経った頃、屋敷内が急に騒がしくなって目が覚めた。

元々最低限の使用人しか置いてないのだが、それでもパタパタと歩き回る音や小声で話し合う声などが聞こえて慌ただしさを感じた。




ん……?なんの騒ぎだろう……??




心地良い眠りを邪魔されたことに、若干イラッとしつつも、ララを呼んで尋ねた。



「これは何の騒ぎ?」


「それが…少し前に先触れが来まして、モンタルド公爵家の方がこの屋敷にいらっしゃると…」


どことなく気まずそうな雰囲気で、視線を左右に揺らしながらララが答えた。


 


モンタルド公爵家…?なんでそんな雲の上のような大層な人がこんな田舎貴族の家に来る…??用事なんてあるはずないよね…


えっ…もしかして、お父さん、何かやらかしたのかな…

うそ…またこんな急に、私の異世界スローライフは終わりを告げるの…?


投獄とかされたらどうしよう…まだ14歳なのに…私は長く生きられない運命なのか…




ミーナの思考がどん底に沈んでいると、ララが言いにくそうに言葉を続けた。



「それが…ミーナ様へのご婚約の申し出のためにいらっしゃるとか…」


「は…………………???」


全く身に覚えのない、青天の霹靂過ぎる話に、ミーナは思考停止した。





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