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フランカの作戦


「はぁ…はぁ…あんたは何でそんなに俊足なのよ…。」


教室に入る手前でようやくミーナに追いついたフランカは、息を切らしていた。ミーナも膝に手をつき、肩で息をしている。相当本気で走ったことが見て取れる。


「だって、あんな…恥ずかしくて、走って逃げるしかないじゃない…」


「恥ずかしがって逃げるにしては、本気で走り過ぎよ…あの走りっぷりを見たこっちが恥ずかしいわ…」




よくやく呼吸が整ってきたフランカは、ちょっと話があるからと、ミーナを連れて、人気のない階段下に移動してきた。


「ミーナ、ひとつお願いがあって…皆の前でシスト様と仲が良いところを見せ付けて欲しくて…そうね、腕に絡みつくとかどうかしら?できそう?」


「えっ!!?」


想像よりも大きな声を出してしまったミーナは、慌てて自分の口を塞いだ。

キョロキョロと周りを見渡してから、抑えた声で尋ねた。



「それ大丈夫なの?今まで散々我慢してきたのに?私飽きられないかしら…」


「ああ、それなら多分大丈夫よ。シスト様は飽きるタイプじゃなさそうだから。でもその代わり…」


ミーナに言うべきか言わないべきか…フランカは一瞬躊躇し、言い淀んだ。

しかし、親友のために言わないわけにはいかないだろうと、重たい口を開いた。



「この調子でいくと、軟禁されるかも…」

「えっ…」


ミーナは、顔を赤らめた。一体何を想像しているのか、顔がにやけている。

フランカの想像の遥か上を行く反応であった。



「ごめん、やっぱり今の嘘。一刻も早く忘れてちょうだい。」


『軟禁』という言葉のどこに顔を赤らめる要素があるのか、フランカには全く理解が出来なかった。

想像以上に危険な匂いのするミーナに、とりあえず余計なことを詮索するのはやめようと思考を放棄した。



「とにかく、休み時間とか教室にいる時に、皆にシスト様との仲の良さを見せつけて。それで出てきた尻尾を私が捕まえてやるわ。」


「ええと、よく分からないけれど…私は合法的にシスト様にお触りして良いってことね。うぅ、緊張する…けど、あんな美しい人にお触り出来るなんて…え、どうしよう…いくらかお金を払った方がいいかしら…?タダなんて虫が良すぎるわよね?」


お金を払うことは決定事項として、金額はいくらが妥当だろうか…と本気で悩むミーナ。


フランカはそんな彼女を無視して、そろそろ授業が始まるからと、教室まで引っ張っていった。






休み時間、ミーナは早速フランカに言われたことを行動に移した。


シストともに移動教室から戻ってきたミーナは、席に戻ろうとする彼の腕を取った。驚いて見返してきた彼に構わず、両手でしがみ付き、頬を寄せた。

その大胆な行動に、お願いをした張本人も目を丸くして驚いていた。


元々、シストのことをアイドルのような目で見ていたミーナは、チェキ会のようなノリで、気軽にシストの腕に抱きついたのだった。



ほぼクラス全員の視線が二人に集中した。

いくら婚約者同士とはいえ、過度な男女の接触は良しとされない。

しかも、ミーナには悪い噂が多いため、嫌悪感を含んだ冷ややかな視線を向けられていた。


だが、そんなことは微塵も気にせず、驚喜に浮かれまくっている者がいた。



わああああああああああ!!!!!!!

念願のツーショットーーー!!!!!!記念すべきこの瞬間、カメラに収めたかったわ!!


細く見えるのに、実際に触るとよく鍛えられていることが分かる…どうしよう…このギャップものすごく萌えるんですけど!!!!!もう少し触っていたいわ!


腹筋とかも鍛えてあるのかな…やだっ私ったらはしたないわ!ほほほほほほほほっ!!!




「やっと、ミーナから触れてくれたね。もっと触れて、もっと僕に夢中になって。」


「へ…」


腕から顔を離して見上げると、蕩けるような笑顔で見つめてくる青い瞳と目が合った。


人間とは不思議なもので、追われると分かった瞬間に逃げたくなる。まさに、今のミーナがそうであった。




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