プロローグ
春の風が心地よい、よく晴れた日だった。
ここは、同世代の子達が集められた、お茶会という名の王家主催の婚約者探しの場。
だが、その時の私はまるで興味がなく、たかが男爵令嬢の自分には縁のないことだと思っていた。
着飾った令嬢達が狙った男性に必死になって話しかける中、私は身軽なワンピースを着て、ひとり庭園を散策していた。
春らしく、様々な色の花が咲き誇り、眺めていて飽きることはなかった。
さすがは王家が有する土地だ。
自分の家にも似たような花は咲いているけど、こんなに綺麗に手入れはされていなく、自然に任せたまま自由に咲いている。
だから、人の手によって整備された庭園が物珍しくつい見入ってしまった。
庭園の端から端まで歩き、疲れた私は、ちょっとだけ休もうと木陰に腰を下ろした。
なのに、慣れない王都に来てひどく疲れていた私は、そのまま居眠りをしてしまった。春風が気持ち良くて、その心地良さに抗うことが出来なかった。
ウトウトと気持ちの良い時間に身を委ねる。
「やっと見つけた。」
頭の上から声がした気がした。
目を開けた瞬間、これは夢だと思った。
なぜなら、そこには、天使と見紛うほどの、金髪碧眼の美しい少年が立っていたからだ。
サラサラの金髪、長いまつ毛に宝石のように耀く青い瞳、白い肌、整った鼻筋、それは完璧としか言いようのない麗しさであった。
少年のあまりの美しさに、私は呼吸が止まりかけた。
息苦しい中、物凄い量の情報が私の頭の中に一気に流れ込んできた。
なにこれ…
それは、自分が他の人として、短い一生を送っていた時の記憶のようなものであった。
もしかして、これって前の人生の記憶…?
え…私生まれ変わった…の…??
「大丈夫…?」
木の幹に背中を預けたまま、反応を示さずに固まっている私を心配したのか、美しい青い瞳が覗き込んできた。
でも私はそれどころではなかった。
「どうぞ、お構いなくっ」
とにかく一度冷静になりたかった私は、その場から走って逃げた。
この時、相手から掛けられた言葉など、私の記憶からはすっぽりと抜け落ちていた。
ただ、彼の強烈な美しさだけは脳裏に焼き付いて離れなかった。
ちょっとまだどんな話になるか未知ですが、恐らく書いているうちに、いつものラブコメ展開になるかと笑
少しでも気になったら、続きを読んで頂けたら嬉しいです^^
よろしくお願いします!