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ラディムの述懐

「公太子殿下......よく意味が」

 カレルの言葉にくすっと笑うラディム。

「ここには二人しかいないし、あなたは私――いや僕の臣下でもない。少し年上の先輩として話をしてみる気になりませんか」

 意外なラディムの誘いに驚きをカレルは隠せない。

「僕もまだ十五歳の子供ですから。自分の与えられた役割はよく理解しています。公太子、そして若くしてクリューガー公爵となる身の上は。だからこそ、同年代の同性の方とたまに楽しくお話したいという気持ちもあります。年下なので『ラディム』とでも二人の時はお呼びください」

「なにをお戯れを......」

 普段あまり焦りを顔に出さないカレルが、完全にラディムに圧倒され、その気色を失っていた。

「カレルさんは辺境伯――おねえさまのことが大好きですね」

 さらにラディムはぐいぐいと押していく。

「この間二人でお話したとき、『おねえさま』と良いと許可を頂いたので。カレルさんにはちゃんとお伝えしないとと思いまして。お互いに彼女を好きな者同士」

 にこにこと笑みを浮かべるラディムに、カレルはまるで蛇ににらまれた蛙のように、その動きを失う。

「ハルトウィン様に対して失礼な言説はいかに公太子殿下といえでも......」

「僕は長くは生きられないと思う」

 カレルの言葉を遮って、ラディムがそうつぶやく。

「別に病気があるわけでもないけど......そういう気がしてしょうがないんだ」

 この時代、貴人の血を多く引き継いだ者の予言はよく当たるという迷信があった。まして、自分の運命を、少年としか思えないラディムがさらりと語ること自体が言葉の重さを増していた。

「『おねえさま』――は辺境伯殿です。二人だけの呼び方って言ったんだけど、カレルさんには教えてあげるね」

 すっと、ラディムは立ち上がる。

「僕には肉親がいないから」

 後ろ姿を見せながらそうラディムは告げる。

「私は、辺境伯殿に利用されているとは思っていない。むしろ、恩義のある立場だ。クバーセク副使殿にも本日命を助けていただいた。とりあえずは、とっておいていただけないだろうか。いずれまた、報いさせていただく」

 そのまま、ラディムは帷幕を退出した。

 なぜか軽い体の震えを感じるカレル。そっと体の傷を包帯の上から触る。

 机の上には、短剣が一つ置かれていた。ラディムのものらしい。クリューガーの紋章があつらえてあり、古くはあるが重厚な雰囲気が感じられた。

 すっ、とその鞘を抜く。銀色のよく手入れされた刃がその姿をあらわす。その刃に自分の姿を写す。怪我をした自分の顔がそこに映っていた。

 刃をおさめ、それを腰につける。

 突然襲う睡魔。カレルはそのまま朝を迎えた――


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