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オストリーバ興亡史~ある転生辺境伯の生涯  作者: 八島唯
クリューガー公国との戦い
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首都ミュットフルト、混乱する

 クリューガー公領首都ミュットフルトはここ数年にないくらいの混乱をきたしていた。

 突然、公城になだれ込む使節団。それは城塞都市ドレスタンに派遣されていたフンメル準男爵の一行である。

『公太子反逆せり』

 驚きべき言葉が彼の口からもたらされる。アロイジウス公爵は苦々しく、顔をしかめさせる。慌てふためく、宮廷の家臣たち。そんな家臣を一喝するわけでもなく、年老いたアロイジウス公爵は状況をただ眺めていた。

 この話は噂となり、あっという間に城下にも広がった。帝国でも指折りの大都市であるミュットフルトが公太子により、攻撃されるかもしれない——逃げる場所があるわけでもない。差し当たっては食料の買い占めにより諸物価が高騰する。町には得体の知れない輩が日を追って増えていく。様々なギルドも自衛のために、自ら自警団を結成し武装する始末である。

「よろしくないな、この状況は」

 そのような街の様子を見て馬上の騎士はつぶやく。

「公爵閣下から何も命令はないのですか」

 もう一人の騎士が尋ねる。それに対して若い男性の騎士は首を振る。

「最近はすっかり——な。決断力自体がどこかに行ってしまったらしい。そもそも、こうなる可能性があればラディム公太子を廃嫡なり、暗殺なりしておけばよかったのだ。中途半端に辺地へ飛ばしたりするからこんなことになる」

 若い騎士の名前は、ローベルト=スヴェラーク少将。クリューガー公爵の軍団で騎兵参与を務めている人物である。

「公太子の軍はハレンスブルクをすでに占領したと?」

「はい、かの都市より逃げてきた者たちの話によると、商業参事会の裏切りもあり、完全に都政を掌握したらしいと。守備隊長であったヒューブナー少佐も自害されたとか」

「ヒューブナーか——まじめな軍人であったな」

 能力が突出しているタイプではなかったが、軍人として一隊を預けるに十分すぎる信頼を置ける人物であった。

「現状では中央街道を公太子の軍勢が首都を目指して進軍途中であるとか——それで少し気になる情報が」

 馬の足を止める、ローベルト。

「いえ、兵士たちが噂していたのですが。クリューガー軍旗に混ざって『四足の鷲』の旗があったとか」

 ローベルトは馬上で目を閉じる。『四足の鷲』、その旗印は——

「ゼーバルト辺境伯か——げせないな。なぜ——」

 ローベルトが手にしていた情報は断片的で、また完全なものではない。ゼーバルトの意図なども当然、知る由もなかった。

「いずれにせよ、公爵閣下には目を覚ましていただくことが必要だな。同じ公爵家の家臣同士戦いたくはないが、公太子が反逆の意思があるというならやむをえまい。そうなったときは我々、クリューガー騎兵の腕の見せ所となろう——」

 そういいながら、馬をかけるローベルト。その後を部下が追う。

 目指すはミュットフルト城。アロイジウス公爵に対応を進言するために。


 敵味方ともに、決戦への準備がどんどん進むこととなる——

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