表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オストリーバ興亡史~ある転生辺境伯の生涯  作者: 八島唯
クリューガー公国との戦い
20/50

大広間での対決

 フンメル準男爵が手招きする。ハルトウィンはすっと右手をラディムの前に掲げる。

「公太子殿下をお渡しする前に、一つお聞きしたいことがあるのだが」

 ハルトウィンが音程は高いが、重々しい口調でそう問いかける。

「なんでしょうか」

「公太子殿下のお命を狙っているのは、奈辺に目的があるかをお聞かせいただきたい」

 その言葉に大広間がざわめく。それまで普通を装っていたフンメル準男爵の顔色が変わる。その風体から、まるで爬虫類の肌の色の変化のようにも感じられた。

「なんのことやら――」

 カレルが腰に下げていた剣を、床に投げ出す。大きな金属音が響き渡る。

「これは、先日公太子殿下を暗殺しようとしていた騎士が帯びていたもの。銘から見るに、準男爵の下賜されたものとおみうけするが、如何に」

「そのようなものだけで......謀反の疑いをかけられるのは......本意ではありませんな......」

「主君は公太子殿下ではないでしょう。あなたにとって」

 静まる大広間。どんどん準男爵の顔色が変わっていく。汗すらじっとりと、額に浮かんでいた。

「あなたにとって、心の主君はアロイジウス=フォン=クリューガー公爵でしょう。公太子殿下は単なる監視の対象でしかないはず。機会があれば、抹殺するようにとでも命を密かに受けていたのでしょうが......」

「うるさい!」

 ついにフンメル準男爵の怒りが爆発する。ほくそ笑むハルトウィン。その怒りこそが、フンメル準男爵の疑惑を周りに明らかにするものであったからである。

 大広間がざわめく。

 決して、すべての兵士がフンメル準男爵の子飼いというわけでもなさそうだった。純粋に公爵家に忠誠を誓い、その嗣子であるラディムを奉じている者も少なくはなさそうだった。

(ならば、これがチャンスか......)

 ハルトウィンは目でラディムにサインを送る。こくんとうなずく、ラディム。

 すっとハルトウィンの前に出て、声を上げる。

「準男爵。私を襲ったのは、父上のもとから直接使わされた家臣。そしてそなたも。うすうすとは気づいていた......父上の私に対する感情も、そしてそなたが父上に――命令されていたことも。私を機会があれば亡き者にせよ、という......!」

 悲痛なラディムの訴えに、大広間の一同が悲嘆の声を上げる。

 状況不利と見たのか、フンメル準男爵は踵を返し、扉の外へと逃げ出そうとする。

 カレルの詠唱。それはショートカットバージョンの『魔弾』の詠唱で、それが終わるやいなや、腰の小銃の弾倉に流れるように『魔弾』をチャージする。

 そして一撃。

 『魔弾』はフンメル準男爵の足の甲を貫通し、大きな音とともに地面に転がる。

 周りの兵士がそれを見て、フンメル準男爵を抑えにかかる。

「殺すな!聞きたいこともある」

 ハルトウィンの命令。本来ならばそのような権利はこの城内でないはずなのだが、すっかりイニシアティブを獲得していた。

 数名の兵士がこの混乱に紛れて逃亡を図る。

「追いますか?」

 カレルが小銃を構ながらそう問う。

「それには及ぶまい」

 大広間のテラスを指差すハルトウィン。城の入口から大きな爆発音と、煙が上がる。

「イェルドだな。どうやら城外の敵を片付けてくれたらしい」

 ハルトウィンはラディムの手を取り、大広間の奥にある玉座に彼をいざなう。

「公太子殿下。お座りください」

 促されて、玉座に座るラディム。

 それまで騒然としていた大広間の兵士たちが、膝を付きラディムに臣下の礼を取る。


 数分の戦闘で、ハルトウィンはクリューガー公国内に橋頭堡とも言える城を手に入れる。

 また、クリューガー公爵嫡男という、何者にも代えがたい『切り札』も。

 これからの戦いの行方を、ゆっくりとハルトウィンは模索するのであった――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ