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君が好きなのは姉御肌のセクハラ女教師?おっとり美人のだだ甘女教師?それともクールなストーカー女教師?  作者: beru


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第八十九話 ユリア先生との距離を縮めたくて

「と言う訳で、ここの動詞の訳し方は……」

 英語の授業の時間になり、ユリアがいつもの調子で淡々とした口調で、黒板に書いた英文の解説をし、拓雄も彼女の解説を聞きながら、ノートを取っていく。

 ユリアの授業はわかりやすい解説ではあったが、無駄が一切なく、淡々とし過ぎている為、生徒によってはつまらないと感じてしまい、居眠りしてしまう生徒もクラスによっては少なからずいた。


 しかし、ユリアは居眠りしている生徒を見ても、よほど熟睡したり、いびきをかいて授業の妨げになる時以外は放置しており、拓雄もそれで良いのかと不安になってしまったが、ユリアはそんな事より、授業をとにかく進める事を優先させている様であった。

「ここ、英検でもよく出るから、ちゃんと復習しておくように。じゃあ、拓雄君。百三十ページの文を読んで」

「あ、はい」

 ユリアに指されて、拓雄がテキストの英文の朗読を始める。

 彼女は黒板の前で表情を一切変えず、テキストを眺めながら、拓雄の朗読を聞いていたが、彼女は普段自分の事をどう思っているのか、拓雄もふと気になってしまった。


(先生、本当にキレイだなあ……)

 改めて見ても、ユリアの美貌はずば抜けていたが、本当に自分に好意を持ってくれているのか、拓雄は未だに信じられずにいた。

 ましてや、自分の家のすぐ近くに住んでいるとなると、どうしても意識をしてしまい、こうやって授業中でもやたらと意識して、胸が高鳴ってしまう事がしばしばあり、授業に集中も出来ない程であった。


 休み時間になり――

「ちょっと、拓雄君。いいかしら?」

「は、はい?」

 突然、ユリアに呼び止められ、拓雄も何事かと振り返ると、

「さっきの授業、やけにそわそわしていたみたいだけど、先生に何か話でもあるの?」

「え? いえ、そういう訳では……」

「そう。なら良いけど。授業中はちゃんと集中しなさい」

「はい……」

 と淡々とした口調で告げ、ユリアはこの場から去っていく。


 どうやら、拓雄の視線にユリアも気付いていたようだが、

 廊下を歩いていると、ユリアから声をかけられ、

「最近、授業中、集中出来てない事が多いみたいだけど、何かあった?」

「え? いえ、そんな事は……」

「そう。気のせいかもしれないけど、先生に何か話でもあるんじゃないかと思ったわ」

「す、すみません……」


 ユリアをちょっと意識していると、こうやって休み時間に即座に釘を刺されてしまうので、拓雄も気が抜けず、気を付けなければと思っているが、どうしても拓雄はユリアを意識してしまうのであった。

「別に謝る事はないわ。それじゃ」

 あまり、拓雄を引き留めても不審に思われると思ったのか、ユリアはそう告げた後、職員室に戻る。


「あらー、拓雄ー。ユリア先生と何を話していたのかしら?」

「え? す、すみれ先生……」

 ユリアの背中をボーっと眺めていると、すみれがいつの間にか拓雄の背後におり、頬を膨らませながら、彼に声をかけてきた。


「駄目よ、いくらユリア先生が美人でも学校でナンパしたりしちゃ」

「そ、そんな事してません」

「どうかしら。ほら、さっさと教室に戻りなさい。次、私の授業なんだけど」

「あ……す、すみません」

 ユリアと拓雄が仲良くしているのを見て、通りかかったすみれが嫉妬したのか、ポンっとお尻を叩いて、教室に入るよう促す。


 流石のすみれも休み時間の学校では、この程度のセクハラ行為しか出来なかったが、拓雄はそれでも顔が真っ赤になってしまい、周囲を見渡しながら、小走りで教室へ入っていった。


「ただいま……」

 放課後、拓雄は珍しく真っすぐ家に帰り、鍵を開けてまだ誰もいない家の中に入る。

 両親は仕事で、妹は部活で不在であったのだが、静まり返った家の中で自室に戻り、溜息を付きながら、目の前にあるユリアが住んでいるアパートを眺める。

 改めて、ユリアが自分の家の目と鼻の先に住んでいるという事を思い、余計にユリアの事を意識してしまい、ソワソワした気分を抑えきれなくなってしまっていた。


「ああ、何を考えているんだろう……」

 ユリアの部屋に行ってみたいという欲求が俄かに湧き出してしまい、拓雄も必死にそれを打ち消す。

 いくらお隣さんとは言え、いきなり押しかけたら迷惑になるのは明らかだったので、何とか自重しようとしていたが、それでもユリアに会いたいという気持ちがどんどん湧き出していった。


 既に何度も行っているのだから、今更緊張する事はないだろうとも思っていたが、いきなり行くのは迷惑だと言い聞かせ、何とか抑えようとする。

 しかし……。


「えっと、この部屋だっけ……」

 私服に着替えた後、拓雄はユリアの自宅のあるアパートに向かい、彼女の部屋の前に行く。

 今の時間だと、恐らくユリアは不在ではないかと思っていたが、とにかくユリアに会いたいと言う気持ちを抑えきれず、遂に彼女の部屋の前に来てしまったのであった。


「何をしているの、そんな所で?」

「え? ゆ、ユリア先生っ!」

 呼び鈴を押そうとすると、コートを着たユリアが拓雄の前に現れ、拓雄もビックリして引っくり返りそうになる。


「私に何か用?」

「い、いえ……その……」

 まるで不審者を見るような鋭い目で、拓雄を睨みつけながら、そう詰め寄ると、彼女の視線に恐怖を感じてしまい、オドオドしながら口ごもる拓雄。

「あの……先生に会いたくて……」

「私に? 何か用でもあるの?」

「いえ……用と言うか、その……あ、遊びに来ちゃ駄目ですか?」


 思い切って、拓雄がユリアにそう告げると、ユリアも思いもかけない事を言われたのか、溜息を付きながら、

「はあ……気持ちは嬉しいけど、いきなり来るのは止めなさい。せめて、事前に連絡をしてくれないと困るわ」

「すみません……」

「仕方ないわね。ほら、入りなさい」

「良いんですか?」

「ええ。ちょっとお茶くらいは出すわ」

 追い返されると思いきや、ユリアがドアを開けて、拓雄を招き入れてくれたので、拓雄も拍子抜けしながら、彼女の部屋に入る。


「おじゃまします……」

「ふう……それで、何で先生の家に来たいと思ったの?」

「いえ。特に用事はないんです、本当に……ただ、先生に会いたいなって……」

「いつも学校で会っているでしょう。それじゃ、不満だったの?」

「ぷ、プライベートで会いたかったっていうか」

 とにかく、学校外でユリアと会って仲良くなりたい。


 そんな気持ちを彼なりにストレートに告げたつもりだったが、ユリアはコートを脱ぎ、それをクローゼットにかけ、

「お茶を出すから、それを飲んだら、今日は早く帰りなさい。夜遅くまで、生徒を部屋に置いておくわけにはいかないわ。明日も学校なんだし」

「は、はい。本当にごめんなさい」

「でも、家に来たのはうれしいわ。出来れば、今度からはちゃんと事前に言いなさい。先生にも予定があるんだから」

 拓雄が会いに来てくれたのが、ユリアも嬉しかったのか、キッチンで紅茶を淹れながら、そう言うと、拓雄も安堵し、ピンと背筋を伸ばしたユリアの姿を眺める。


 やっぱり、ユリアともっと親しくなりたい――

 今の自分では釣り合いが取れないのはわかっていたが、それでも少しでも距離を縮めて、彼女といつかは……と、拓雄も思うようになっていった。

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