第七十九話 新年早々、先生のセクハラが重い
「ん? はい……」
『ヤッホー、拓雄。あけおめー』
「すみれ先生。あけましておめでとうございます」
夜中になり、すみれが電話をかけてきたので、新年の挨拶をする。
『拓雄~~、もう姫始めは済んだの?』
「? えっと、何ですかそれ?」
『何って、セックスよ、セックス。ユリア先生か、真中先生と元旦早々、済ませたのかなって』
「なっ、何言ってるんですか、いきなり!」
新年から、とんでもない事をすみれが聞いてきたので、拓雄も顔を真っ赤にして、声を張り上げる。
全く変わらないすみれのセクハラじみた発言に、拓雄も恥ずかしくなってしまったが、すみれは変わらず、
『なら、先生としない~~? ん、はああん! あん、駄目よ、教室でそんな事しちゃ……♪ あっ、やああん! そんなグチョグチョさせたら、イクウう!』
「…………」
『何よ、テレフォンセックスしたくないの? ノリが悪いわね。そうそう、あんたに渡したい課題があるわ。明日、会える?』
「明日はおじいちゃんの家に行くので……」
『時間は取らせないわよ。すぐ終わるから。あんまり遅くなるようなら遠慮するけど、先生も拓雄にも会いたいわ』
「は、はあ……あの課題って?」
『それは会ってからのお楽しみ~~♪ じゃあ明日、帰ってきたら先生に電話かチャットで連絡よろしく。拓雄に新年のお祝いのオカズ送るわね。ありがたく受け取りなさい』
「お祝い? あの、それって……」
ガチャ!
「切れちゃった……」
すみれが一方的にそう告げると、電話が切れてしまい、拓雄もしばし部屋の中で立ち尽くす。
そして、しばらくするとメールの着信があったので、スマホを取ると、
「すみれ先生からだ……ぶっ!」
メールに添付されていた写真を開いて、思わず吹き出してしまう。
すみれが下着姿で胸元をよせて、コンドームを口に咥えている自撮り写真で、拓雄にはとても正視出来ないようないやらしい写真であった。
ほとんど迷惑メールのようなメールだったので、消そうと思ったが、明日会った時になにか言われそうだったので、それまでは消すに消せないと思い、そのままにしておくことにした。
翌日――
「んー、ただいま。おじいちゃん、元気そうで良かったわね」
夕方になり拓雄の一家が祖父の家から帰ってきて、拓雄もすぐに自室に戻る。
祖父の家は隣の市だったので、彼の家から車で三十分程の場所にあるため、定期的に顔を合わせており、昼をご馳走になった後、あまり長居することなく帰宅することが出来た。
「すみれ先生に連絡してみようっと」
一応、帰ってきた事をメールで報告すると、すぐに既読マークがつき、
『今すぐ、公園に来なさい』
とDMですぐに返信が来た。
「なんだろう……?」
課題と聞いて、勉強の事かと思ったが、すみれの事なので、
「ハーイ、拓雄。あけおめ」
「すみれ先生。あの課題って……」
「車の中で渡すわ。入りなさい」
「はあ……」
公園の近くに停めてった、すみれの車に案内され、彼女に言われた通り、車の助手席に乗り込むと、
「はい、これ課題ね」
「課題って……何ですか、これ?」
「開けて見て」
「はあ……なあっ!」
すみれに紙袋を渡され、中を見てみると、アダルトDVDが三本入っており、卑猥なパッケージを見るや、拓雄もすかさずしまってしまった。
「な、何ですかこれ……!」
「何でもなにも課題よ。拓雄の好きそうなの選んでやったの。タイトル見てみなさい。命令よ」
「タイトルって……」
何の冗談かと思い、もう一度DVDを取り出すと、三本とも女教師物のAⅤで、とても
「『女教師強制エロ夏期講習』に、『魅惑の教壇』と、あと……」
「も、もういいです……冗談は止めてくださいい……」
「冗談じゃないわよ。拓雄、これ冬休みの間に観て、感想を述べてねー」
強引に突き返されてしまい、渋々、バッグの中にしまう。
まさか、こんな物を渡されるとは思わず、来て後悔してしまい、泣きそうになっていた拓雄に、
「言っておくけど、拓雄がその気になったら、そのAⅤの内容と同じこと、体験できるんだけど、わかってるのそれ?」
「わ、わかってるって……」
すみれが拓雄の腕を組みながらそう言うと、拓雄も顔を真っ赤にして俯く。
彼女の言葉に嘘はなかったのだが、だからこそ、拓雄もどう答えていいのかわからなかった。
「今年の目標は拓雄の童貞奪うことー。いや、ちょっと修正。あんたとセックスすることね」
「だ、だからそういう事は……うわっ!」
堂々ととんでもない宣言を口にした後、すみれが拓雄の座っていた助手席を倒して、彼の前に跨る。
「んーー、何ならここでやる? そこのAVみたいに、やる時は学校でしたかったけど、拓雄がお望みだったら、構わないわよ」
「そ、それは……」
拓雄の手を握って、すみれが自身の胸に彼の手を押し付けていく。
正月の夕方で人通りが少ない場所とは言え、車の中では人に見られるリスクもあり、とても拓雄も首を縦に振れる状況ではなかった。
「ったく、ヘタレね。まあ、覚悟してなさい。あんたのそんな態度が許されるのはもう長くないから。取り敢えず、今年中に筆おろし完了して、来年、受験にも関わらず、先生の体に溺れて、卒業後は即同棲ってのが理想かしら」
これ以上強引にやると、拓雄が本当に大声を出しそうだったので、すみれも渋々、起き上がり、着崩していたブラウスを整えていく。
「明日、真中先生と出かけるんでしょう。まあ、あんたの事だから、心配ないでしょうけど、万が一の時はこれしなさい。コンドーム」
「ううう……そんなこと、しないですう……」
コンドームを一個、強引に拓雄に渡したすみれは、助手席を起こして、車のエンジンをかける。
「お望みなら家まで送るけど」
「大丈夫です」
「そう。今年は本当にあんたとセックスするつもりだから、覚悟なさい……じゃあね。好きよ、ちゅっ♡」
「っ!」
と言って、すみれは拓雄の顔を引き寄せ、軽く頬にキスし、拓雄も彼女の唇が触れた瞬間、ビクっと体を震わせる。
すみれの『好き』という、告白を受けて、俄かに胸が熱くなってしまい、ドキドキが止まらなくなってしまっていた。
「ほら、行かないの?」
「は、はい……さようなら……」
彼女に促されて、拓雄は車を出て、家路に着く。
正月に入っても、先生たちに振り回されて、心が休まることはなかったのであった。




