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君が好きなのは姉御肌のセクハラ女教師?おっとり美人のだだ甘女教師?それともクールなストーカー女教師?  作者: beru


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第七十八話 新年早々、先生と一緒に……

「あけましておめでとうございます!」

 テレビのレポーターが新年の挨拶をし、除夜の鐘が鳴り響く。

 新年が明けて、拓雄も浮かれた気分になっていたが、冬休みの課題がたくさん残っており、素直に楽しめない状況にあった。


 部屋でぼんやりと新年の特番を見ている最中、彩子から電話がかかってきたので、すぐに出る。

『はーい、拓雄君。あけましておめでとう』

「あ、はい。おめでとうございます」

『うん。えへへ、ねえ、拓雄君、新年の予定はもう決まってる?』

「えっと、明日はお祖父ちゃんの家に行く事になってて……」 

『そうなんだ。先生も実家に顔出さないといけないから、今日、明日は会えないかもしれないの。あーん、寂しいなあ。んで、三日予定ある?』

「一応、何もないですけど……」

 予定は何も無かったので、拓雄も正直に答えるが、彩子が何を言ってくるのか、鈍感な彼でも予想出来たので、少し気が重くなる。


『ね、デートしようよ。もちろん、拓雄君と二人きりで!』

「は、はあ……えっと……」

 予想通りのことを言ってきたので、拓雄も苦笑してしまうが、正月くらいはのんびり過ごしたかったので、拓雄も少し考える。

 だが、ここまで好意をストレートにぶつけてくる彩子を無碍にするのも気が引け、

「良いですよ……」

『きゃー、ありがとう! じゃあ、三日の日に駅前で待ち合わせね。先生、車出すから。それじゃあ、楽しみにしてるからねー』

 とはしゃぎながら彩子がそう告げると、電話が切れ、拓雄も軽く溜息をつく。

 うれしいことは確かだが、正月でも彼女達から離れて生活出来ないのかと、諦めの気持ちになっていた。


「ふふ、この前のカラオケで一番高得点を叩き出したからねー。約束通り、邪魔しないでもらうわよ、二人とも」

 電話を切った後、彩子はそう呟きながら、前回3人とのカラオケ大会で


「じゃあ、初詣行ってくるね」

 彩子と電話した後、拓雄は一人家を出て近所の神社に初詣に行く。

 毎年、元旦の夜に近くにある神社に初詣に行くのが習慣になっていた。

 いつもは妹も一緒だが、今日は友達と約束があり、一人で行くことにしたのだ。


「今日は寒いなあ……」

「拓雄君」

「え? ユリア先生?」

 家を出てしばらくすると、背後からユリアに声をかけられる。

 ユリアはベレー帽とコートにマフラーを着こなしており、暗がりの中でも凛々しい美しさがあった。

「何処に行くの?」

「ちょっと初参りに……ユリア先生は?」

「なら、私も同じね」

「ならって……あの良かったら、一緒に……」

 さり気なくそう答えたユリアに若干引きつる拓雄であったが、ユリアは全く意に介すこともなく、

「人目もあるし、生徒と並んで歩くのはちょっと。私のことは気にしないで、先に行きなさい」

「は、はい」

 一緒に行きたいのかと、誘ってみたが、ユリアにそう言われ、拓雄も一足先に歩く。


「…………」

(やっぱり気になる……)

 ユリアが拓雄のすぐ後ろをピッタリと歩いて付いてきており、彼女の視線が気になって仕方なかった。

 だが、並んで歩いている所を見られてもまずいというのは、拓雄もわかっていたので、ユリアの言う通り、おとなしく前を歩いて話しかける事もしないまま、神社へと向かっていったのであった。


「うわあ、並んでいるな」

「そうね」

 神社に着くと、既に行列が出来ており、拓雄が列に並ぶと、ユリアは何食わぬ顔をして、彼の隣に並ぶ。

「あ、あの……」

「二列に並んでいるじゃない。偶然よ」

「そ、そうですよね」

 とても偶然には思えなかったが、ここまで来て一緒に並ばないのも不自然だと思い、このままユリアと並ぶことにした。


「…………」

 ユリアはジーっと前を見て、黙ったまま、拓雄と共に列を進んでいく。

 気まずい気分になった拓雄は何か話を振ろうか考えたが、他人のフリをしろと言わんばかりのオーラを全身からユリアが発していたので、話しかけるのも躊躇していた。


(やっぱり、キレイだなユリア先生……)

 彼女の横顔を眺めると、ユリアの美貌に改めて拓雄は見惚れる。

 既に学園で見慣れた顔でもあるが、じっくり見ると、本当にきれいで夜中に神社の灯で照らされた彼女の横顔は幻想的な美しさを醸し出していた。


「いつもこの神社に来ているの?」

「え? は、はい」

「そう。結構にぎわっているわね」

「そうですね。あの、先生、お正月はどうするんですか?」

「さあ。考えてないわ。四日から、仕事に出ないといけないし、遠出は出来ないわね」

「そうですか……」


 話を振るが、ユリアは表情も変えず淡々と話し、楽しんでいるのかもよくわからなかった。

 そうこうしている間に、列は進んで、賽銭箱の前にユリアと並んで、賽銭を投げ入れる。


「私がやるわ」

「あ、はい」

 お賽銭を入れた後、ユリアが鈴を鳴らして、二人で手を合わせる。

 まさか、ユリアと一緒に初参りをすることになるとは思わず、拓雄も新年早々得した気分になっていた。


「じゃあ、これで。拓雄君ももう帰るんでしょ」

「あ……ちょっと待ってください。甘酒飲みませんか? あそこで、配っているんですよ」

「甘酒? まあ、寒いしね」

 拓雄が社務所の近くのテントで、甘酒を無料で参拝者に配っているのを見て、そう言い、すぐに並んで、二杯甘酒を貰う。


「どうぞ」

「いただきます」

 紙コップに入った甘酒を、ユリアに手渡すと、ユリアも恐る恐る口にする。


「うん、温まるわね」

「ですよね」

 人気のないご神木の陰に移動し、二人で並んで、甘酒を飲んで、夜空を眺める。

 空にはきれいな星空と月が輝いており、空気も澄んでいて、寒くても心地よさを感じるほどであった。


「いけないわね。教え子と二人で初参りなんて。偶然とは言え」

「僕はその……嬉しいです……先生と一緒で……」

「お世辞でも嬉しいこと言うようになったじゃない。ごちそうさま。もう帰るわ。並んで帰るのまずいから、あなたは後から来なさい」

「は、はい……」


 甘酒を飲んだ後、紙コップを焚き火の中に捨て、ユリアと共に家路に着く。

 拓雄もユリアに言われた通り、彼女の少し後ろを歩き、そのまま話すこともなく、彼女を家まで送っていった。


「じゃあ、これで。今日は悪かったわね」

「と、とんでもないです。一緒出来て嬉しかったです」

「そう。でも、彩子先生とのデートで羽目を外し過ぎないようにね。じゃ」

「え? な、何でそれを……」

 ユリアがアパートの前まで来たとき、拓雄にそう告げ、拓雄もビックリして、なぜ知っているのかと聞こうとしたが、その前に自宅に入ってしまった。


 こうして拓雄の初参りはユリアと共に過ごして終わったのであった。

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