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第七話 先生達との個人授業 三日目 

「来たわね。付いて来なさい」

 翌日の放課後、今度はユリアの補習を受ける為、職員室に行ってユリアに会い、補習を行う英語準備室へ案内される。

 昨日と一昨日のすみれと彩子の補習が色々と刺激的だったので、今日は何をされるのか、緊張していたが、ユリアはいつもと全く変わらず、淡々とした表情をしており、昨日までみたいな事にはならないだろうと、彼女の態度を見てむしろ拓雄も安堵していた。

「「ジーーー……」」

「何ですか、すみれ先生、彩子先生?」

 二人が職員室を出ると、すみれと彩子が、ユリアをジーっと睨みながら後を付いて来ていたので、何事かユリアが訊ねると、

「ユリア先生~~、いくら補習と言えど、年頃の男子高校生と二人きりなんですから、くれぐれも気を付けるようにしてくださいねえ」

「そうです! 女性教師が、生徒に間違いを犯して、解雇されたって事件、耳にしますから、ユリア先生も誤解のないようにしてくださいね」

「誤解とは?」

 すみれと彩子がそれぞれ自分の事を棚に上げて、ユリアに忠告するが、ユリアは何の事かと首を傾げながら、二人に聞き返すと、

「大人なんだから、意図くらい察してください。じゃあ、拓雄君。補習頑張って。ユリア先生にいやらしい事するんじゃないわよ」

「し、しませんよ!」

 すみれが拓雄にそう告げた後、すみれと彩子は拓雄達の元を去って行く。

「変な事を言うわね。さ、付いて来なさい。時間、もったいないわ」

 ユリアは確かに美人なので、拓雄も彼女と二人きりとなると意識はしてしまうが、いくら何でもユリアに手を出す様な度胸は彼にもなく、すみれ達に茶化されても顔色一つ変える事なかった冷静な彼女に付いていったのであった。


「そこに座りなさい」

「はい」

 補習の為に準備室へと二人で入ると、ユリアは用意していた席の前に拓雄を座らせ、指示棒を持って彼の前に立つ。

「何で今日、私に補習を言い渡されたのか、まだ理解してないようね。君は、授業中の態度がよくないの。どういう意味かわかる? 先生の事を良く見ないで、ボーっとしている事が多いからよ」

「は、はあ……」

 と、前にも言われた事を拓雄はユリアに改めて指摘されるが、そんな事を言われても、別に騒いでる訳でも授業中にスマホを弄ってる訳でもないのに、何故ここまで言われねばならないのか、理解に苦しんでいた。

「授業中、何を考えているか、当ててみようか。先生の事や授業の事じゃなくて、漫画とかゲームとか、授業早く終わらないかなとか、そんなくだらない事でしょう」

「そ、そんな事は……」

 ないと言いたかったが、完全に言い当てられてしまい、拓雄も視線を逸らして口篭る。

 自分の考えている事が何でわかるのかと、拓雄も驚いていたが、ユリアはすかさず、指示棒で彼の顔を上げ、

「先生を見なさい。私が話している時は視線を逸らさない。人によってはジロジロ見られるの嫌がる人も居るけど、私が話している時は私を見るの。オッケー?」

「はい……」

 まるで女王様の様に鋭い目で見られ、凍り付いていた拓雄であったが、それ以上に彼女の美しい顔を直視し続ける事はまた困難であり、ユリアを意識しすぎて、これでは逆に授業に集中出来ない恐れがあったのだ。

「うん。じゃあ、そろそろ補習を始めるわ。ちょっと暑いから脱ぐわね」

「――!」

 と拓雄に告げた後、ユリアは着ていたスーツを脱いで、ブラウスの姿になり、拓雄も一瞬、ドキッとする。

 だが、普通の無地のブラウスだったので、ホッと一息したが、ユリアの白のブラウスとタイトスカートと言う今まで見る事のなかった比較的ラフな格好を見ただけで、とても色っぽく感じてしまい、胸が高鳴っていった。


「テキストの四十五ページを開いて。君は文法と発音の問題が苦手みたいだけど、文法をちゃんと理解しないと、英語の長文問題をちゃんと読み込めないし、発音問題も受験では重要なの。だから……」

 と、目の前で拓雄の前に足を組んで座りながら、ユリアが淡々とした口調で補習授業を進めていく。

 その様子は普段の授業と全く変わりなかったが、密室で二人きりなので、余計に意識をしてしまい、緊張感はすみれや彩子以上であった。


「という訳なの。ここの、関係代名詞の用法は……」

(やっぱり、先生綺麗だな……)

 テキストを開いて、解説しているユリアの顔を見て、拓雄は改めてそう思い、彼女の美しさに見とれる。

 綺麗で整ったブロンドの長い髪に、透き通るような青い瞳に芸術作品のように整った顔立ち。そして、薄手のブラウスだからか、胸もそれなりに大きく、足も長く美しく、ユリアの何処を見ても、見惚れてしまい、とても授業に集中出来なかった。

 すみれや彩子も美人ではあったが、顔の美しさではユリアはダントツであり、何故こんなに綺麗な女性がウチの学園で教員をしているのかと首を傾げていたが、授業中に聞く勇気もなく、

「聞いてる?」

「は、はいっ!」

 拓雄がユリアに見とれていると、その視線に気が付いたのか、ユリアが顔を上げて、彼を睨みつける。

 だが、彼女の講義など全く頭に入っておらず、すべてを見透かしているかのような瞳で見つめられ、身動き出来なくなってしまっていた。

「うそね。何を考えていたの?」

「それは……」

 まさか、ユリアに見とれていたとは素直に言う訳にいかず、ただ視線を逸らして、顔を真っ赤にして俯く。

 しかし、ユリアは眉一つ動かすこともなく、少し溜息を付き、

「じゃあ、本当に聞いていたか、今やった所の確認テストを行うわ」

「はい……」

 そう言って立ち上がり、鞄から用意していたプリントを取り出して、小テストを行う。

 しかし、授業に全く集中出来なかった拓雄は、殆ど解く事が出来ず、酷い点数を取ってしまった。


「十点……酷い点ね」

「はうう……」

 小テストの結果は散々な物で、拓雄もうなだれており、ユリアも少し呆れていたが、

「まあ、良いわ。今度は頑張りなさい」

 と、彼の手を握りながら、ユリアは拓雄にそう言い、怒られるかと思った拓雄もユリアの意外なまでの優しい言葉に少し驚く。

 ユリアに見とれて授業を聞いていなかったと知ったら、さぞ怒られるだろうと思ったが、むしろユリアは授業の事、そっちのけで自分に見惚れていた事の方が嬉しく、少し頬を赤らめながら、怯えていた拓雄の頭を撫でていた。

「そんなに怖がらないの。先生が話している間、ずっと私の事を見ていたでしょう。それで良いわ。普段の授業もそうしなさい。良いわね?」

「は、はい?」

 補習授業中、ユリアに見とれて話を聞いてなかったのに、何故褒められているのか拓雄は理解出来なかっず、首を傾げていたが、

「くす、わかったなら宜しい。これからも、その調子で授業中も先生の事を考えるように。そうだ。スマホ持ってるでしょう? 出して」

「え? 何でですか?」

「良いから」

「はい……」

 言われた通り、拓雄が鞄にしまっていたスマートフォンを出すと、

「私の写真撮って」

「先生の……何でですか?」

「良いから。何枚でも良いから先生の顔を撮りなさい」

「は、はい」

 ユリアの意図が全くわからなかったが、とにかく指示された通り、ユリアの顔をスマホのカメラで二枚ほど撮影すると、

「撮りました」

「宜しい。それじゃ、これ今日の課題ね。家でやってきて。その際、今、撮った先生の写真を見ながらやる事。先生が常に見ていると思って、課題に取り組んで。もちろん、誰かに見せたりネットで公開するの駄目だけど、拓男君が個人的に家でその写真をどう使おうが自由よ。夜のお供にしても構わないわ」

「はあ……」

などと、教師とは思えない、卑猥な事を口にするが、年齢以上に幼かった拓雄は『夜のお供』の意味もよく理解出来ず、ただ頷いていた。

が、ユリアは何処か満足そうに微笑みながら、

「それじゃ、今日の補習はおしまい。職員室まで先生を送ったら、帰って良いわよ」

「はい」

 と言って、彼の手を引き、一緒に準備室を後にする。

 英語の勉強には殆どならなかったが、ユリアの事は今まで以上に女性として意識する事になってしまい、繊細な彼女の手に触れながら、胸がいっそう高鳴っていったのであった。


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