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君が好きなのは姉御肌のセクハラ女教師?おっとり美人のだだ甘女教師?それともクールなストーカー女教師?  作者: beru


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第四十話 文化祭も先生に誘われる

「おはよう。今日からいよいよ二学期ね。みんな、気を緩まずに頑張るように」

 夏休みも終わり、二学期の始業式の日になる。

 と言っても、半分以上は夏期講習で学校に行っていたので、休みらしい休みはあまりなく、課題も多かったので、のんびりは過ごせなかった。

「もうすぐ文化祭だけど、来週から本格的な準備が始まります。なので、明日から徐々にはじめる様に」

 と、すみれが言った後、今学期の連絡事項を淡々と説明していく。

 もう文化祭の季節になるのだと、ぼんやりと考えていたが、こういう行事にはあまり積極的ではなかったので、拓雄は少し面倒に思っていた。


「ふふ、こんにちは、拓雄君」

「あ……彩子先生。こんにちは」

 始業式が終わり、廊下を歩いていると、絵の具で汚れたエプロンを付けた彩子が、彼に声をかける。

 彩子に何度もキスをされて、交際を迫られている状況なので、彼女の顔を見る度にどうしても意識してしまう拓雄であったが、彼の顔を無事に見れて、彩子も嬉しそうな笑みで、彼に近づき、

「夏休み、どうだった?」

「えっと、夏期講習が多かったので……」

「そう。くす、特進クラスは全員参加だから、大変だったわね」

 と、彩子は微笑んでそう言うが、拓雄と一緒に旅行に行った事は、四人だけの秘密であり、校内では敢えて口にしない事にしていた。

「あの、それじゃあ」

「待ってよ、もう少しお話しない?」

「え? は、はあ……」

 また何かされると警戒された拓雄がすぐに帰ろうとするが、咄嗟に彩子が彼の手を引いて引き止める。

 そして、彼を美術準備室に連れ込み、


「くす、今日は一時から、部活なの。文化祭のポスターや展示する絵を仕上げないといけないから、忙しくて」

 準備室に連れ込むと、拓雄を椅子に座らせ、彩子が向かい合って座り、笑顔でそう話す。

 室内は絵の具や画材の独特な匂いが充満しており、何となく微妙な居心地であったが、彩子はもう慣れており、彼の手を握って、

「ねえー、今度の文化祭、先生と一緒に回らない?」

「う……彩子先生とですか?」

「もう、どうしてそんな嫌な顔するの? 良いじゃない、大丈夫よ。先生と一緒なんて、別に珍しくもないわ」

 果たしてそうだろうかと首を傾げていたが、教師と生徒が二人で文化祭を見て回るのも、変な感じがしたので、拓雄も返事を躊躇していた。

「あの、美術部は……」

「ウチは油絵と彫刻の展示かな。あと、ポスターや文化祭で使うアーチの原案なんかも考えたりしてるの」

「へえ」

 アーチの原案も考えているのかと、感心していたが、拓雄も部の見学にくらいは行っても良いかと思い、

「美術部、見に行きますので」

「くす、ありがとう。でも、展示品を作っているのは、あくまでも部員で私ではないからね」

 そう彩子が優しく言うと、なるほど、文化祭はあくまで生徒が主体で行うもので、教師はサポートしかしないのだと、改めて彼も知ったのであった。


「彩子先生―、居ますか?」

「あ、はーい。ごめんね、もう部員が来たみたいだから。じゃあね」

 まだ時間には早かったが、美術部の部員が彩子を呼んだので、彼女も準備室を出て、隣にある美術室に向かう。

 もう文化祭が近いので、彩子も今は部の指導などで忙しくなっており、拓雄との時間が少なくなるのが、彼女にとっては心残りであった。


「ポスター、こんな感じで大丈夫でしょうか?」

「んとね……そうね、ここをもう少し……」

 美術部を覗いてみると、女子部員たちと彩子がポスターに使うイラストの仕上げについて話し合っており、彩子の真剣な顔を見て、

(皆、頑張っているんだな……)

 と、しみじみ思う。

 自分は文化祭のクラス展示の雑用しかしないので、あまり当日はやる事がなく、もう少し積極的に参加しても良いのかと思うようになっていた。


「あら、拓雄君」

「あ……こ、こんばんは」

 その夜、近くのコンビニに買い物に行っていた拓雄が帰宅途中のユリアとバッタリ会う。

「どうしたの、こんな夜中に?」

「ちょっと買い物に……」

「そう。あまり、夜中に出歩かないように」

「はい。あの、先生はもう帰りですか?」

「うん。ちょっとそこまで一緒する?」

 ユリアをついで家まで送ることし、二人で夜道を並んで歩く。

 こうして、二人で歩くのも何度目だろうかと、拓雄も思っていたが、街灯に照らされたユリアの顔が綺麗であまりの美しさに魅入っていた。

「何?」

「いえ、何でも!」

「そう。もうすぐ文化祭ね。あなたのクラスは焼きそばの屋台出すんだっけ?」

「はい。僕は屋台の設置係と言うか……当日は、あまりやる事がないんですけどね」

「ふーん。当日は誰かと回るの?」

「その……彩子先生に誘われていて……」

 先ほど、彩子に文化祭を見て回ろうと、誘われた事をユリアに告げ、どうすべきか相談しようとしていた所で、

「断った方が良いと思うけど。女性教師と男子生徒が二人で一緒に回るなんて、見ない光景だし、変な誤解を招くわ」

「で、ですよね……」

 ユリアにハッキリ言われたので、拓雄もちょっと安堵する。

 これでで断る決心はついたが、ユリアはどうするのかと気になり、

「あの、ユリア先生は……」

「私は当日は特にする事はないわね。生徒会の方をちょっと見て回る位かしら。でも、生徒会の出し物のチェックとか相談なんかはするから、それまでは忙しいわ」

「そうですか」

 予定がないのであれば、一緒に……と思ったが、

「まあ、いつもみたいに三人で見て回ろうって話はしているけどね」

「あ、やっぱり……」

 三人というのは、すみれ、彩子、ユリアの事であり、学園でもこの三人が一緒によくいるのはもう有名になっていた。

 歳が近いので、仲良くしているのだろうと、周囲も思っていたが、理由はそれだけではなかったのだ。

「三人と同伴なら付き合ってあげても良いわよ」

「え、それは……」

「考えておいて。じゃあ」

 と簡単につげ、ユリアは自宅のアパートへと入っていく。

 三人と――文化祭でも、また三人と過ごす事になるのかと、拓雄もぼんやりと考え、そうなれば文化祭も少しは楽しめるのだろうと思っていた。


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