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君が好きなのは姉御肌のセクハラ女教師?おっとり美人のだだ甘女教師?それともクールなストーカー女教師?  作者: beru


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第三十七話 先生達は女教師と生徒の二人きりのデートを許しません

「この単語の訳し方は……」

 四人での旅行から帰って一週間後、また夏期講習が再開され、拓雄も午前中からユリアの英語の授業を受けていた。

 夏休みとは言え、半分近くは夏期講習で消えてしまい、休みと言う感じはあまりしなかったが、ユリアやすみれ、彩子達と過ごすのは悪い気分ではなく、学校に行くのも楽しみになっている程であった。

 が、それでも彼の悩みは深まっていく一方なのであった。


 講習が終わり、図書室で本を借りに行った後、図書室と同じ校舎の二階にある美術室の前を通ったので、拓雄も少し覗いてみると、

「あ、ここはもうちょっと色を塗りこんだ方が良いかも」

「あ、はい。こうですか?」

 美術部の顧問をしている彩子が、女子部員に油絵の指導をしており、部員も真剣な眼差しでキャンバスに向かって筆を走らせていく。

 普段の授業中もそうであったが、彩子は生徒に対して、とても親身になって教えており、美人と評判でもある彼女自身は生徒たちから慕われている教師であったので、もし自分と恋仲になろうとしている事が学園にバレて解雇になれば、悲しむ生徒も大勢いるであろうことは容易に想像出来た。

 これは彩子だけではなく、すみれやユリアも同じであり、彼女らの好意にどう向き合えば良いのか。まだ高校一年の彼にはとても難しい問題なのであった。


 その日の夜――

「電話が……また彩子先生か……はい」

『えへへ、こんばんはー、拓雄君♪』

 この所、毎日の様に彩子は拓雄に電話をかけてきており、執拗にアプローチをしかけて、彼を悩ませていた。

 相手は教師で、しかも自分に好意を抱いている為、着信拒否する訳にもいかず、彼自身も彩子の事は気になっていたので、

『ねえ、この前の返事、考えてくれた?』

「へ、返事とは……?」

『もう、先生と付き合うって話。早く返事欲しいなあ』

「う……」

 誤解の余地などないよう、ストレートに彩子も迫り、拓雄もどう返事しようか考える。

 ユリアの言葉を思い出し断るべきなのであろうが、そうなると彼女との関係が拗れてしまう恐れもあった為、断る勇気もなく、言葉を濁らせる

『くす、まだ考え中? でも、考えているって事は、先生と付き合いたい気持ちはあるって事よね? だったら期待して待っているからね』

 と、あまり急かしては印象を悪くしてしまうと判断した彩子がいったん、返事を保留させてこの話題を打ち切る。

 しかし、これで彼女が引く訳ではなく、むしろ拓雄を強引に押し倒してしまう位の勢いでいけば必ず自分の物に出来ると彩子も確信しており、引くつもりは毛頭なかったのであった。

『あ、そうだ。今日、拓雄君、美術室、覗いていたでしょう?』

「あ……はい……」

 補講が終わった後、彼が美術室を少し覗いていたのを、彩子もすぐに気付き、拓雄もうんと頷く。

『どうしたの? もしかして、入部希望とか?』

「いえ、ちょっと先生の事が気になったというか……すみません、覗いちゃったりして」

『いいのよ、全然! むしろ、先生、嬉しいわ。私の事、気になってくれてたのよね。見学ならいつでも来て』

 自分の事が気になって覗きに来たという言葉を聞いて、彩子はむしろ舞い上がってしまい、これは脈が大いにあると彼女に思わせるには十分な行動であった。

『ねえ、今度、先生と二人で遊びに行こう。この前は邪魔をされたけど、今度こそ、拓雄君とデートしたいな』

「あ、あの……」

『何?』

「その、僕と二人きりで遊びに行くのはまずいのでは……」

 と、恐る恐る拓雄が言うと、彩子もくすっと笑い、

『平気よ。先生も帽子を被ったりして、わからないように気をつけるから。ねー、行こうよ。良いでしょう? 今度の日曜日とかどう?』

「うう……」

 自分に気を遣って、断ろうとした拓雄に更に強引に誘っていき、拓雄もここまで情熱的にアプローチをしてくる彩子に押されて、悩んでしまう。

そして、断りきれずに、

「わ、わかりました」

『本当? やったーー! じゃあ、先生と日曜日、遊びに行こうね。待ち合わせ場所は……』

 遂にオッケーを貰い、大喜びしていた彩子は彼に待ち合わせ場所を告げる。

 結局、大人の女性の、しかも教師の誘いを断る事も出来なかった拓雄は自責の念に駆られながら、彼女とデートする事になってしまった。


「はあ……ん? また……はい」

『ヤッホー、拓雄。あんたの大好きなすみれ先生よー』

「す、すみれ先生? どうしたんですか?」

 彩子との通話が終了してわずか一分も経たない内に、今度はすみれが電話をかけてきたので、どうしたのかとビックリしていると、

『どうしたも何も先生が電話しちゃ悪いの?』

「いえ……あの、何か用ですか?」

『ふふん、今度の日曜、暇?』

「えっ!? ど、どうしてですか?」

『デートしようか』

 何事かと訊ねると、即座にすみれも彩子と同じ事を言ってきたので、拓雄も言葉を失う。

 立て続けにデートに誘われてしまい、夢でも見ているのかと

『へへ、映画のチケット貰ったから、あんたと見に行ってやるわ。どうなの?』

「あの、日曜日は先約が……」

『先約? まさか、真中先生とデートとか?』

「な、何でそれをっ!? はっ!」

 図星を突かれてしまい、思わず拓雄が答えてしまうと、

『え? マジで? あちゃー、先を越されたかあ……でも、真中先生も懲りないわねえ。くす、ねえ、待ち合わせ場所は何時にどこ? 教えなさいよ』

「あの、今のは……」

『教えないと、明日、学校でお仕置きするわよ』

「はうう」

 明日も夏期講習で数学の授業があり、その時に確実にすみれと顔を合わせる事になるので、正直に教えてしまい、この時点で彩子とのデートは潰れてしまったのであった。


 そして日曜日の朝――

「ううう~~……」

「そんなに睨まないの。教師と生徒が二人で遊びに行ってるのバレたら困るの事実でしょう」

「そうよ。彩子先生が悪いんです、これは」

 駅前に行くと、この前と同じ様に、すみれだけではまくユリアまで彩子との待ち合わせ場所に来ており、白いワンピースと帽子に身を包んでいた彩子は心底恨めしそうに、二人を睨みつける。

「す、すみません、彩子先生……」

「拓雄くんは悪くないよ。悪いのは邪魔する二人」

「邪魔しなかったら、彩子先生がクビになってたかもしれないんですけど。と言うか、懲りないわね、彩子先生も。男子生徒と二人きりになるのがまずいってのがまだわからないんですか?」

「わかってますよお。わかった上で誘っているんですから。と言うか、今からでも帰ってください。自分たちだって彼氏とのデート邪魔されたら、嫌でしょう?」

「あら、付き合ってるの二人って?」

「これから付き合うかもしれないんです!」

「なら、まだ付き合ってないって事じゃない。だったら、一緒に遊びに行っても問題ないわね。じゃあ、出発ー。まずは映画観に行きましょう」

 夏休みも終盤に来た日曜日、彩子とのデートのつもりが、結局、ユリアとすみれも付いていく事になってしまい、彩子も肩を落としながら、すみれとユリアの後を付いて行き、拓雄も彩子の隣に並んで歩いていく。

 拓雄を独占させはしないと言う強い意思が働いているおかげで、三人とは離れなくなっており、まだまだ三人の内、一人を選ばせる事は出来そうになかったのであった。


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