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君が好きなのは姉御肌のセクハラ女教師?おっとり美人のだだ甘女教師?それともクールなストーカー女教師?  作者: beru


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第十三話 彩子先生の抜け駆け

 彩子が深呼吸をした後、意を決して、美術室に入る。

「はーい、今日はこの前の木彫りの続きをしますね」

 美術室に入り、いつもの様に穏やかな笑顔で教壇に立って美術の授業を開始する。

 今日は拓雄のクラスの授業をしていたが、いつも以上に平静さを装いながらも、そわそわしながら、彼の周りを回っていたのであった。


「あの、拓雄君」

「はい?」

 休み時間になり、拓雄がトイレから帰ってきた美術室に帰ろうとした所、彩子が彼に声をかけ、

「ちょっとだけ話があるんだけど、良いかな?」

「あ、はい」

 と言って、拓雄を準備室へと手招きし、彩子と共に入っていく。


「えっと、その……た、拓雄君。今度の日曜日、暇?」

「日曜日ですか? えっと、特に予定はないですけど……」

「そ、そう! それなら、その……ちょっと、先生に付き合って欲しいの!」

「えっ!? つ、付き合うって……」

 顔を赤くしながら、彩子が拓雄にそう告げると、拓雄もビックリして胸をドキッとさせる。

「いえ、付き合うってのは、その……とにかく、今度の日曜日、一緒に美術館に行かない? だ、駄目?」

「先生とですか?」

「うん!」

 思いも寄らぬ誘いを受けて、動揺する拓雄であったが、普段、鈍感な彼でもこれがデートの誘いである事は明らかであり、不安げな目で自分を見つめる彩子の顔を見て、心臓が爆発しそうになるほど、胸が高鳴っていき、気がおかしくなりそうになっていた。

(彩子先生が僕を……)

 普段、穏和でいつも気さくに接してくれた彩子が、まさか自分の事を……と、嫌でも意識してしまったが、彼女は真剣であり、どう返事しようか迷っていたが、

「い、良いですよ……」

「本当!? よかったあ……あ、じゃあ、先生と連絡先交換しようか」

 断る事も出来ず、思わず行くと返事してしまうと、彩子も安堵の笑みを見せ、ポケットからスマートフォンを取り出す。

「本当はいけないんだけど、連絡が取れるようにしておきたいから。あ、これ絶対に内緒だからね」

「は、はい」

 彩子に言われて、電話番号やラインのIDの交換をしていき、彩子も喜びを噛み締めながら、学園からは禁じられている、教え子とプライベート用のアカウントの交換をし、遂に彩子も一線を越えてしまったと言う高揚感で舞い上がっていた。

「じゃ、じゃあ、詳細は後で連絡するから。ごめんね、付き合わせちゃって」

「いえ。あの、失礼します」

 拓雄も嬉しい様な恥ずかしいような、今まで感じた事のない舞い上がった気分になりながら、準備室を後にし、授業に戻る。

 いつも、自分に対して、特に優しく接してくれていた彩子が、本当に自分の事を……と、拓雄も信じられない気持ちになっていたが、彼女にデートに誘われてしまったのは紛れもない事実であり、日曜日までの間、ずっと彩子のことが頭から離れず、落ち着かないまま過ごしていったのであった。


「ああ、いよいよ明日……」

 土曜日の夜、彩子はいよいよ、男子生徒との禁を犯そうとしている自分に酔い痴れ、眠れない夜を過ごしていく。

 朝の十時に、駅前のロータリーで待ち合わせをする事になっていたが、

「お父さん、お母さん、ごめんなさい。彩子は遂に間違いを犯そうとしています」

 と、スマホを抱き締めながら、彩子はそんな事を呟き、教師として、絶対に犯してはならない一線を越えようとする自分に自ら十字架を背負わせ、高揚した気分になっていく。

 最初見た時から、可愛いと思っていた男子生徒の拓雄に対する想いを抑え切れなくなってしまい、遂にブレーキを踏む事を放棄してしまった彩子は、むしろ今の自分に酔ってしまい、明日の拓雄とのデートを想像しながら、明日、何を着ていこうか、クローゼットの中を見て考えていたのであった。


 翌朝――

「…………」

「いやー、今日は良い天気ね。絶好の行楽日和じゃない」

「本当ですね」

 拓雄が彩子との待ち合わせ場所に向かうと、そこには彩子だけじゃなく、私服姿のすみれとユリアまでおり、帽子を被って、げんなりしていた彩子と一緒に待っていた。

「あのー、先生達は何でここに……」

「何でも何も、ウチの不良女性教職員が、男子生徒と密会をしようとしているって情報を聞きつけて、後を付けて来たの。そしたら、あらビックリ♪ ウチのクラスの男子と真中先生だったのね」

「これは大問題ですね。女性教師が、男子生徒とデートなんて、学園に知れたら、解雇どころじゃ済みないわ。拓雄君は停学で、彩子先生も解雇に、教員免許も剥奪で、二度と教壇にも立てなくなるわよ」

 と、すみれは半袖のTシャツとジーンズ、ユリアはブラウスにスカート、彩子はワンピースに顔を隠すための帽子を被っており、二人に見つかった彩子は恨めしそうに、すみれたちを睨みながら、

「もう、何で二人とも邪魔するんですか!」

「そりゃ、抜け駆けしようとするから……じゃなくて、ウチのクラスの子が女性教師と密会しようとしてるのを見て、担任として黙ってみている訳にはいかないじゃない」

「私も生徒会の顧問として黙って見過ごせない。今回は彩子先生と拓雄が悪いわ」

「うう……まさか、二人に見つかるなんて……」

 今回のデートは、すみれにもユリアに黙っており、誰にも知られないように気を遣っていたが、彩子が明らかにそわそわしていて様子が変だったので、二人も即座に察知してしまい、あっさりと拓雄との密会の現場を抑えられてしまったのであった。


「彩子先生、見つかったのが私達で、むしろラッキーだったと思って下さい。他の先生たちや生徒に見つかっていたら、どう言い訳するつもりだったんですか?」

「そ、それは……いざと言う時は私が責任取りますし、彼とはたまたま一緒に……」

「そんな言い訳通用するかしらねえ。明らかに帽子被って顔を隠しているし、生徒とデートしようとしているのがバレバレじゃない。あーあ、彩子先生も大胆な行動取るわね」

 と、ユリアに指摘されて、彩子も苦し紛れの言い訳をするが、誰にも見つからない様に隠れながら、彼とデートする事に胸を膨らませていたので、二人に完全に冷や水をぶっかけられてしまい、泣きそうになっていた。

「拓雄君も拓雄君ね。あなたは未成年とは言え、高校生なんだから、教師と生徒がデートなんかしたらいけない事くらい、理解してるでしょう? もし何かあったら、彩子先生はクビになるのよ。わかっている?」

「そ、それは……」

 ユリアが突き刺すような視線で、拓雄を睨みながら、そう忠告すると、拓雄も迂闊だったと黙り込む。

 教師が生徒と二人でデートなどしたのがバレれば、当然、彩子がクビになるし、拓雄だってもう学校には行き辛くなってしまうので、彩子の誘いを受けてしまった自分の軽率さを恥じていた。

「ま、折角、来たんだし、このまま三人で遊びに行きましょうか。温水プールが近くに出来たんだけど、行ってみる?」

「良いですね、行きましょう。ついでに、彩子先生が拓雄君と行こうとした場所にも行きたいです。多分、美術館でしょう? 近くにあるし」

「うう……」

 と、折角集まったのだから、三人で遊びに行く事にし、拓雄も溜息を付きながら、帰ろうとすると、


「私とすみれ先生と彩子先生は三人で遊びに行く約束でここに集まった。そして、偶然、拓雄君と会った」

「え?」

「そういう事にしておきましょう。良いわね?」

「はい……」

 ユリアがすみれと彩子の手を握りながら、拓雄にそう告げると、彼も力なく頷き、彩子もシュンとした表情で頷く。

「私達、これから美術館に行くけど、付いていきたければ付いてきて。ただし、あなたは十分、ここで待ってから来なさい。一緒に歩いてる所を見られるとまずいから、あくまで偶然、私達に現場で会ったと言う形にしておいて。じゃ、行きましょうか」

「そういう事。んじゃー、レッツゴー♪」

「ふええ……ま、またね、拓雄君……」

 二人に手を引かれながら、彩子は拓雄と二人で行こうとした美術館に連行され、拓雄も一人残される。

 折角の彩子とのデートを邪魔されてしまったが、同時に頭も冷えて、ホッとした気分にもなり、ユリアに言われた通り、十分、ここで待ってから三人に後を付いていったのであった。



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