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(うかつな放課後)


学校に向かう坂道を、私は走る。全力で走る。

乙女の欠片も無く走る! 間に合った。

正門近くで皆の姿が見え始めたので走るのを止め歩き出すと、


「おはよー」


と私の肩を叩く男子、直江君だ。

私は少しうつ向き、照れながら挨拶を返した。実は心臓はバクバクで顔は真っ赤。

そう、只今アヤは恋する乙女なんです。

実は先日の事なんだけど、グラスで浮きまくりの

お調子者の《山谷》が、私の至福のランチタイムを邪魔して来たの。


「でっけー弁当箱だな! お前んちレストランやってんだろ、中身見せろよ! 」


山谷は、そう言って、私のお弁当の唐揚げを一つ盗み食いしたの。


「ん?……激不味い! しかも激辛!! 」


てっ! 美味しい訳無いじゃん。

人間と魔女は味覚が違うの。レストランで出して居るのは、お婆ちゃんが人間用に作っていて、私達が食べるのはヘビーなスパイスを使った料理。

人間の口には合わないし、軽い副作用を起こす事も。

今、山谷が食べた唐揚げ、激辛デスパウダーが掛かってるし。

早速、山谷の後ろに怪しげなな悪霊が降りてきてる!

今日、山谷は人生最悪の日に成る事、間違い無い。

懲りない山谷は、私の、お昼寝用の、デザート。お婆ちゃんのアップルパイを偶然通り掛かった、直江くんの口に押し込んだ。

「ゴホッ ゴホッ 何すんだよ! 山谷! 」


「直江! こいつん家の料理、激マズだろ! 」


「そんな事無いよ、全然美味しいよ…… 」


涙目で直江くんはアップルパイを飲み込んだ。


「そんな筈は…… 」


山谷が、私のアップルパイをもう一切れ取ろうとした瞬間。


「ドタッ! 」


直江君が意識を無くして倒れてしまった。

そうなの、直江君が食べたアップルパイは、昔お婆ちゃんが黒雪姫に食べさせた毒リンゴで作ったアップルパイ。人間が食べると深い眠りに落ちる、量によっては一生目が覚めない事も。

直江君は放課後に成っても、保健室から戻って来なかった。

私は放課後、保健室に様子を見に行ったら、丁度

保健の先生が出て行った所で、こっそりカーテンの閉まったベッドを覗いたの。

そしたら直江君が寝ていて、私は大事に成る前にと、お姉ちゃんに電話した。


「それは、マズイわ 病院で検索とかされたら毒リンゴの成分とか出ちゃって色々バレちゃう。

いっそ、その子、連れ出して、何処かに埋めちゃえば! 」


お姉ちゃんに相談した私が馬鹿だった。

私は冷静に成って考えた。

アップルパイ 毒リンゴ お婆ちゃん 黒雪姫

王子様 眠り キス? キス!…… キス!!

そうよ! 眠りの魔法を解くにはキス! 一か八か、これしかないわ!

ちょっと、シチュエーション違うけど……

ゆっくりして居る暇は無い。何時先生が戻って来るかも解らない!

私は覚悟を決めてキスしたの。


「ガラガラ」


「あら!窓頃さん、どうしたの? あれ直江君、目が覚めたようね」


私が先生に驚いてる脇で直江君が目を覚ましていた。良かった、おまじないが効いたと思ったら、

先生が、


「睡眠時間減らして夜中までアルバイトしてるんだって? いくら、お母さんが大変でも、あなたが倒れちゃったら意味無いじゃない! 」


私のアップルパイが原因では……


「アップルパイ? 直江君は過労と寝不足で倒れたのよ」


先生は、そう言って不思議そうな顔をした。

後で聞いたんだけど直江君のお母さん、

《重い病気》で入院してて色々大変な様です。

アップルパイはって? なんだか昼寝用に持って行ってるのが、お婆ちゃんにバレてて普通のアップルパイに変えられて居たみたい。

私は、とんだ勘違いでファーストキスを人間に挙げてしまったのです。それから直江君の事が気に成って気に成って、これが初恋って奴ですか?

これが先日起きた、アヤの重大事件ベスト10

第一位《うかつな放課後》でした。


そして学校が終わり、家に帰って、夕食の時に今朝見た夢と種の事をお母さんに話した。


「自分が出て来て話し描けてきた? 何かの予兆だね! 吉兆か凶兆か…… 一角の角、紫色だったし吉兆って事は無いね!

しかし枕元に種って不思議だね。でもアヤは春の魔女だから体から種がボロボロ出て来ても、不思議じゃ無いかもね! 」


種がボロボロって……気持ち悪!

(アヤは向日葵の種を想像してた)


「とにかく、その種も生きて居るんだから鉢に植えておやり」


お婆ちゃんが植木鉢を持って来た。

私は植木鉢の土に人差し指で穴開け、種を植えた。お水を掛けて、これでよし。皆で鉢を覗いて居ると、


「どんな花が咲くんだろうね、楽しみだね

ー」


お婆ちゃんが言った。



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