(レストラン窓頃)
もう少し詳しく説明すると。
お婆ちゃんは夏の魔女で炎を操るのが得意。
お母さんは冬の魔女で氷を操るのが得意。
お姉ちゃんは秋の魔女で風と癒しが得意。
私は春の魔女…得意はまだ何も無い!
まだ修行中です。
皆、身体の何処かに六芒星の痣が有って、魔女の印なんだって。
お母さんは胸の谷間に有って、
お姉ちゃんは首筋に、
私は手のひらに、
お婆ちゃんは背中に大きいのが有る。
今の時代はファッションだって、特に隠して居ない。
で、炎とか氷とか剣とかで誰かと戦ったりするのかって?
無い無い!!
私自身、魔法見た事無いし。
放棄はって?
放棄は有るよ! 私は見た事無いけど……実は飛ぶらしい。
お母さんが昔乗ってたみたいだけど、
お尻が痛いって言って、もう乗って居ない。
今は愛車の真っ赤なオープンカーのポルシェ。
とブランド品、毎日《生ビール》飲んでお金儲けの事しか考えて居ない感じ
皆得意な分野の力を料理に生かし、店を切り盛りしてるんです。
「カラン〜カラン〜」
お客さんが来た、長話ばっかりしてるとお母さんに怒られるので仕事しなきゃ、
常連の岡田さんだ!
「おはよー、ヨーコ、ビールと枝豆ね! 」
岡田さんのいつもの注文。
「家は居酒屋じゃ無いよ。あと年下なんだから呼び捨ては無いだろ! 」
お母さんは、そう言って、注文した品と自分の生ビールを持って岡田さんの席に着いた。
「おい! 俺の枝豆にタバスコかけんなよ! 」
私ゃ刺激が無いと駄目なんだよ! あの時みたいにね!! アノトキと言えばアントニオ猪木にタバスコ売り込んだのは私だからね! 」
「何度も聞いた、その話」
「でね! 岡田くん! わ た し チョリソーが
食べたいの、注文してもいい? 」
「ここはキャバクラか!! まあいいか! アヤちゃんヨーコにチョリソー持って来て! 」
お母さんは暑いのが苦手でも辛い物は大好き。
お母さんと岡田さんは古くからの付き合いで、岡田さんはお母さんの恩人らしい。もしかしてお母さんの事狙ってるのかも?
で、こっちは……
「萌え萌えドッキュン!! 」
お姉ちゃんがメイド服着て、お宅系の、お客さんのオムライスにハートケチャップしてる。
あの、お客さん完全にお姉ちゃんに狙われてる……
「おい、ユウ! 家はメイド喫茶じゃ無いんだからね!! 」
お母さんが怒鳴った。
どっちもどっちも と思います私は。
ところでお姉ちゃん! いつまでごまかせる?そのお腹!
実はお姉ちゃんは妊娠して居るの。これがバレたら店の売り上げガタ落ち、でも大丈夫。家の本業は裏メニューのテイクアウト。
ほら、調理場の横のテイクアウト用の小窓。
今丁度お客さん来てるでしょ!
サングラスとマスクで顔を隠して居るけど、
闇料理の常連の田之上さんだ。
札束出して何か買ってる。
「お大事に〜」
下げ物しに来た、お姉ちゃんが言った。
闇料理のお客さんには何時もこう言うの。
「アヤ 明日、国会が面白い事に成るよ!田之上も大した努力家だよ、家に通い詰めて、やっと副総理まで這い上がったんだから。
逆に誉めてあげたいよ。
野望の範囲を越えて、もう趣味に成ってるね。
お金が有れば何んでも出来るって! 癖に成っちゃうんだよね〜」
でも あんなのが総理に成っちゃっていいの?
「人間なんて黒い方が面白いじゃないかい魔界の連中は真っ黒が好きだからね〜
総理の弱みを握ってるなんて! もう、この国は、私達の物と一緒さ!!
キ〜キッキッキッキー!!!」
てっ……お母さん? なんでここに?
お婆ちゃんじゃ無いとは思ったけど……
「ジョッキを下げに来ただけ!ちと飲みすぎたかね〜」
お母さんはそう言って調理場を出て、岡田さんの席に戻った。翌日の国会では総理が、記憶に御座いません、しか言えなかった。お悔やみ申し上げます。
田之上副総理が総理大臣に任命されました。
「チ〜ン」
(裏メニューのお客さんの呼び鈴が成る)
又、お客さんが来た。
スーパーモデルの花子さんだ。
大体買う物、解っちゃうんだけど…
お母さんのレシピ本の闇料理は人を陥れる料理。幾つか紹介するね!
田之上さんが買っていったのが、子羊のソティ陰謀ソース、《忘れな草》添えで、
忘れな草の量にもよるけど一時的に記憶が無くなるの。
スーパーモデルの花子さんが買っていったのが、
マイナスコラーゲンたっぷりの《フカヒレ煮》、百年珍げん菜添え。これを食べるとフカヒレの繊維の様にお顔は、しわしわ、肌も鮫肌。
もー最悪! ライバルを蹴落とすには最適。
アスリートに人気なのが小鹿の脛肉赤ワイン煮、毒紅茸入り。これは食べると生まれたての小鹿の様に脚はガクガク少しするとお腹もギュルギュル、スタートラインなんかには立てません。
これに似た料理でチキンのポワレ内気なソース掛けは比較的に安くニーズナブルな商品で、
只々、臆病に成るだけ。
ヘイ チッキンボーイと呼ばれること間違い無し!
お婆ちゃんの《アップルパイ》は、昔お婆ちゃんが、黒雪姫に食べさせた毒リンゴで作ってるの、
リンゴの配分で眠る時間が変わるの、
私は学校のお昼のデザートに良く持っていく。
午後の授業をサボるのに最適!
ネガティブな料理の他にもポジティブな料理も少しは有るの。
例えば、お姉ちゃんの萌え萌え《ケチャップ》。
人間を虜にする力が有る。
レストランで使ってた奴?
あれは普通のケチャップ。
表の料理は普通の物しか出さないの、
お客さんが萌え萌えするのは素にお姉ちゃんの力。
お母さんの闇料理は過激すぎて裏メニューでも販売出来ない品ばかり。
レシピ本には、そんな料理や、お酒など沢山載ってるの。お姉ちゃんも私もまだ見る事が出来ません。
「アヤ! 又、誰と喋って居るんだい! 洗い物いっぱい溜まってるよ! 」
って…お母さんのビールジョッキばっかりじゃん。
「チ〜ン」
「何だい今日はやけに忙しいね! 」
(お婆ちゃんが小窓を覗くと)
「あの、メニューを見せて頂けますか? 」
(女はそう言って店内を伺いながらメニューを開いた)
「ごめんなさい、今日は結構です」
(女はそう言って帰って行った)
「ゴーン ゴーン」
(二十二時レストランの振り子時計が鳴り店は閉店した)
「今日は忙しかったね〜賄いが出来たから皆食べるよ〜」
お母さんはジョッキ片手に言った。まだ飲んでる……
今日の賄いは激辛チョリソーとパエリア、サラダにスープとご馳走です。
お母さんが《チョリソーにタバスコ》を掛けていると、
「ヨーコ、テイクアウトの最後の客、ありゃ松野めぐみ、だったよ! 」
《めぐみ》?!
(ヨーコに若き日の記憶が甦る)
「懐かしいね! でも、あいつも、こんな所に来る様に成っちまったのか…で何を買って行ったんだい? 」
「何も買って行かなかったよ、でも中の様子を少し気にしていた様な……」
「最近テレビにちっとも出て来ないから気にして居たんだけど元気なら何よりだよ! 」