(再開)
(ヨーコとアヤが東京から戻って数週間経った、12月)
「カラン〜カラン〜」
「あの…… のりか、お姉ちゃん」
(小学生位の、女の子が、赤ちゃんを抱いてレストラン窓頃に訪れた。女の子は男物の黒いジャケットをネクタイで腰を巻きワンピースの様にして、白いワイシャツでくるんだ赤ちゃんを抱いて居た)
「お母さん! 大変!! 小学生位の娘が、赤ちゃん抱いて来てる! 多分 めぐみさん……? 」
分かってるよ! 玉が、偉い反応してるんだ!
直ぐ行くよ!
(ヨーコは玉を持って階段を駆け上がった)
めぐみかい? 本当に、めぐみなのかい?
「 …… のりかお姉ちゃん」
良く、ここまで来れたね、赤ちゃん重かっただろ、
さあ、私に、お貸し。
「うわ〜ん、うわ〜ん うわ〜ん」
(めぐみは赤ちゃんにまで戻ってしまった岡田をヨーコに渡し、ヨーコの腰に手を回し泣きじゃくった。赤ちゃんをくるんだワイシャツにポタポタとヨーコの大粒の涙が落ちた)
めぐみちゃん、赤ちゃんの名前は?
「分からない 何だか毎日色々な事、忘れちゃって…… 」
めぐみちゃん、この玉に手を充ててごらん、
朝から玉の様子が、おかしかったんだよ。
(めぐみが玉に手をかざすと映像が浮かび上がって来た、しかし、玉の写し出す映像に、窓頃家の皆は、二人の悲劇を目の当たりとする)
(黒羽音が目覚め、めぐみの子供が拉致される、
二人は黒羽音の言いなりに、レシピ本を盗み
ファスト教団、化学班の解析にて作られた料理を食べさせられる、当初の約束より引き伸ばされたが、ようやく、薬の完成の知らせを受け、二人はホテルに向かう、
そして、ヨーコとアヤがたどり着いた、
東京ハイアットヒル ホテルでの三人のやり取り)
「薬が出来たなら、翔太を帰して! 」
ほう、 又一段と美しく成って、料理の効き目も問題ない様だ、復活の酒も、この分なら大丈夫だろう、それでは、これより撮影を開始する。
(黒羽音はめぐみと岡田にハンディカメラを向けた)
「役は演じきるから、今すぐ翔太を解放して! 」
めぐみ! いい表情だ、黒神の刻に台本は無い、
好きに演じるがいい。
ではヨーイ スタート!
翔太、翔太って、まだ気が付かぬか?
お前達は、翔太の姿も、声さえも聞いて居ないであろう、
あの こぞうは拉致した日に、既に、息絶えた。
悪魔の召還に必要な道具だったが、器が合わず失敗してしまった。
まあ、事は良い方向に収まったがな、
お前達が盗んだレシピ本は最恐の悪魔、黒神ルシファード様を甦らせる為に必要だった。
お前達のお陰で、私達が、この世界を手に入れる事が出来る!
「嘘よ、嘘… 絶対に嘘!
翔太が死んだなんて…… 」
(めぐみは泣き崩れた)
「うおおぉー! 」
(岡田は、内ポケットからナイフを出し、黒羽音の胸に突き刺した)
いいぞ!もっと刺せ! もっとえぐれ!
最高の表情だ!泣き叫ぶ、めぐみ。
怒り狂う、岡田。
そんなに感情を現わにしてしまうと若返りの進行が速くなるぞ!
シーン2だ。
血まみれに成った、お前達は夜の街を逃げ惑う、
やがて自分達の無力さに気付く、いや忘れてしまうかもな!早く、のりかの所にたどり着け!
そしてデモンドに伝えよ。
ラストシーンは25日、《西のクレーター》だ、私は、バジアル一族の最後をカメラ越しに見届ける。早く行け!忘れぬ前に。
お前達が食したのは終わりの無い若返りの料理、無限コラーゲンのフカヒレ煮だ、
時間が無いぞ、急げ! アーッハッハッハッハ!
(部屋中に血の雨が降り注いだ、
黒羽音の背中が割れ、哺乳類の黒い翼が生えた。
絶望と恐怖で、めぐみと岡田は又、一段と小さく成った、着ている服を引きずる程、履いている靴はブカブカで脱げてしまう位に。
泣きじゃくりながら部屋を逃げ出し、皮肉な事に、ヨーコとアヤが乗ったエレベーターの、隣のエレベーターに乗ってしまい、ホテルを脱出した。二人は夜の街に消えて行った)
私のせいだ、昔、お婆ちゃんに言われた約束を守らなくて、めぐみと岡田に、関わっちまった、
芸能界なんかに入って、好き勝手した、報いだ。
バチを与えるなら私にしておくれよ、
岡田とめぐみは家族に成れたんだろ?
なんで子供まで……
(玉の映像を見たヨーコ達は、深い悲しみに落ち、只ひたすら止まらぬ涙を拭って居た)
(いや、お前のせいでは無い! 黒羽音の背中から生えた翼、あれは魔族の物、そして黒羽音は西のクレーターが決戦の地と言った。
翼が生える時に見せた奴の表情……
黒羽音の中にフェイレスが居る!
フェイレスは私に復讐するつもりだ! 」
(何の因果関係か黒羽音とフェイレスに同時に狙われる事に成る、ヨーコとデモンドだった)
めぐみちゃん、ここに来るまでの間、何か食べたかい?
(ヨーコは、小さく成り、痩せ細った、めぐみに
聞いた)
「何も食べて無い…… 」
そうかい、今美味しい物を作ってあげるからね!
(ヨーコはお婆ちゃんと厨房に入り、めぐみに、温かいオジヤと赤ちゃんに成った岡田に、すり潰した枝豆のディッシュを作った)
めぐみ、何故、食べてくれないんだい?
岡田! お前の好きな枝豆だよ、口を開けて
おくれよ……
(しかし二人は口を開ける事は無かった。二人の体は栄養を必要としておらず、只ひたすらゼロに向かって居た)
お婆ちゃん、二人の若返りが止まらない、黒羽音の奴、プラスコラーゲンのフカヒレ煮に何か細工をしたに違い無い、このままだと、二人共、消滅しちまう、何か方法が無いのかい?
「レシピ本が有れば、何かヒントが見つけられるかも知れないのじゃが…… 」
「あっ!? 有るよレシピ本! 私のスマホの中」
(アヤは直江の母親の病気の一件でレシピ本を写メした事を思い出した)
「アヤの悪さが、ここで役にたつとはね」
(お婆ちゃんは、レシピ本に目を通すが無限コラーゲンのフカヒレ煮の記載は無く、黒羽音のオリジナルだった。しかし、毒草の記されたページで
お婆ちゃんの目が止まった)
「マンドレイクの根か…… 」
「何? お婆ちゃん、マンドレイクって? 」
小人のコンソメスープに使う材料なんじゃが
この地ではマンドラゴラと言って、普通に生えてる毒草だよ、しかしマンドレイクはオリジナル(原種) で、昔、魔界の連中がマンドレイクの種に悪魔や魔女や人間の《魂》を乗せ、魔界から地上に降り落としたのじゃ、マンドレイクの種は地上で育ち魔獸として育つはずだった、しかし、地球の大地の豊かさに、魂達は大地から離れようとしなかった、悪魔達の企みは失敗した。
マンドラゴラを抜いた時に悲鳴が聞こえれば、それはオリジナルのマンドレイクと言う事だよ」
「へぇー 今度やってみよ」
「アヤに頼みが有る、ユウと一緒に仕入れして来て欲しい物が有る、《北の祠》に行ってマンドレイクの花の花粉を採って来て欲しい、原種じゃなければ駄目だよ、あと無闇に引き抜いては駄目だ、マンドレイクは大地から放れると死んでしまう、少し引っ張って反応が有ればオリジナルのマンドレイクだよ、花粉を瓶に詰めて1日で帰って来るんだよ、私の見た感じだと岡田くんは、後二、三日しか持ちそうに無い…… 」
「お土産は? 」
「ヨーコに頼んでおく! 時間が無い急いで支度するよ」
(アヤはヨーコが用意したお土産と縦笛をリュックに入れ支度を済ませた。ユウはヨーコからポルシェに乗る事を許されガレージでタイヤをスタッドレスに履き替えた)
さあ 出発だよアヤ! 夜路死苦!




