(仕込み)
「カラン〜カラン〜」
ただいまー 帰ったよ!二階建ての古びた洋館
ここが私達のホーム。
家族四人でレストランやってるんだ!
「アヤ仕入れはどうだった? 」
玉ねぎヘアーで銀縁丸メガネ、鼻が少し高くて
ガリガリの猫背、おっとりとした口調だが、
たまに脅威のスピードで動く。この人は私のお婆ちゃん。
レストラン《窓頃》のメインシェフで煮込み料理が得意なんだ!
「どれどれ見せてごらん」
お婆ちゃんは、私の、しょい籠の中から採れたての食材を取り出した。
「トリカブトと毒紅茸か」
お婆ちゃんは使い込まれた寸胴(大きな鍋)に食材を放り込んだ。
「それと太った蛇が三匹っ」
「どっぷん!」って それツチノコ! 煮ちゃうんだ……
「立派なイッカクの角だね、アヤ、後で綺麗に掃除するんだよ! 」
そう言って、お婆ちゃんはドロドロの寸胴をゆっくりとかき混ぜた。
「カラン〜カラン〜」
「ここは暑くて敵わないねー ほぉ いい具合に煮えてるね」
(ガレージに車を入れて来た、ヨーコが遅れて帰って来た)
「アヤ、よーくお聞き、料理の最後の隠し味は愛情たっぷり!
なんて言う奴が居るだろう?
この寸胴の中身は憎悪、嫉妬、妬み、怨み、
数十種類のスパイスと憎しみが混ざり合って最高の味を醸し出すんだよ!
まあ これが家の料理の売りなんだけどね!
私はギンギンに冷えた地下室でレシピ作ってるから絶対に入って来ては駄目だよ! 」
この人は私のお母さん、豪快で雑で涙もろい、
一家の大黒柱。お母さんはそう言って地下室
《ヨーコの部屋》に降りて行った。
「アヤお帰り! 」
(ホールからユウの声がした)
お姉ちゃんだ、さらさらのロングヘアーで、
清楚、とにかく清楚 と店のお客さんに大評判。
ファンクラブができる程の看板娘。
レストランが繁盛しているのは
ただただ、お姉ちゃんの力、裏の顔は家族にしか見せません。
少し《お腹が膨らんで》来たから危ないぞユウ姉ちゃん。
これで家族全員紹介したね!……えっ私?
窓頃アヤ! 私は、この家の末っ子、下っぱの皿洗い、毎日、怖いお母さんやお姉ちゃんに濃き使われるシンデレラ見たいな高校一年生です。
「アヤ! さっきから、いったい誰と話して居るんだい! さっさとイッカクの角の掃除始めな! 」
(地下室からヨーコが戻って来た)
私は店のテーブルでイッカクの角にサンドペーパーをかけた、最初は粗めで一時間程、
削った粉は貴重品で色々な料理のスパイスに成るらしい。角はと言うと、取手を着けて杖にするらしい、お母さんの秘密のアイテム!
「もっともっと削るんだよ、細く成って色が出て来るまでね! 」
お婆ちゃんが言った。
色? どんな?
「銀だったり金だったり、パールの様な輝きが
一番いいね。さあ お昼だから これでも お食べ! 」
お婆ちゃんは大盛のナポリタンを作って来てくれた。私は結構な大食いで、こんなに小さいのに、お母さんの倍は食べるの。まあ、お母さんは飲む方、専門だけどね!
私はナポリタンにタバスコをタップリかけてペロリとたいらげ、仕上げのサンドペーパーをかけ始めると。
「私ゃ金がいいね! お金がガッポリ入って来るよ」
お母さんが部屋から戻って来て言った。
「私はパールがいいわ! 幸せが訪れる」
お姉ちゃんもやって来た。
「私は銀でいいよ、もう歳だから何も欲張りはしないよ」
お婆ちゃんまで!? 何? 何これ!
おみくじ煎餅?
イッカクの角の収穫は10年に一度きりの物、
因みに前回は金色に輝いたそうです。
確かにお母さんが放棄からポルシェに乗り換えたのも、その頃、ご利益有るのかな?
(そしてイッカク角が徐々にうっすらと色着き始めた)
藤色?
「なんてこった! アヤ、もっと削ってごらん」
お母さんに言われて、再び削り出すと、 藤色から黒く淀んだ紫色に変わった。
「つきがないね! お前に削らせなきゃ良かったよ。
これは悪魔色って言って、この先に、波乱や困難が待ち受けて居る証だよ。さあ 皆、そろそろオープンだよ! 支度しな」
えっ! 私のせい? そんな理不尽な……
皆はユニフォームに着替えに部屋へ行ってしまった。
んっ? 何か変って? ちょっと違うよね!
そう、ここは魔女が経営する店
魔女のレストランなのです。
第三話(レストラン窓頃)に
そのまま続きます。