(黒雪姫と七人の巨兵)
(すれ違い)から そのまま続きます。
「トントン」
アヤ入っても いいかい ?
「その、ゆっくりとした口調はお婆ちゃんだった」
なんだい、泣いて居るのかい?
「私は、お婆ちゃんに抱き付き言った。
そもそも、お婆ちゃんのアップルパイが原因なんだから! 」
ほお 懐かしいね、黒雪姫に食べさせた毒リンゴの話しだね!あれは、まだ私が若かった頃の話しだよ、しかし人間側に都合の良い解釈に成って居てな!
何時までも泣いて居ないで、たまには私の話でも聞くかい? 気分転換になるぞ!
「うん」
私達一族が安住の地を探して世界を渡り歩いてた頃
北の国の、とある村に腰を降ろした。目的などは無かった、ただ平和に暮らしたかっただけじゃ。
ある日、私が湖の畔で水汲みをして居ると。
「パン パン パン 」
銃声がしてな、私は驚き汲んだ水を溢し地面にへたり込んで居ると、何匹もの猟犬が私の周りを取り囲んだ。犬達は私の人間では無い臭いに気付き今にも襲い掛かる勢いだった。
そこに馬に乗った男達が現れた。そして一人の男が私に手を差し出して言ったのじゃ。
「すまぬ事をした、お怪我は有りませんか。
ウサギ狩りをしていて、動物の気配を感じて、つい発砲してしまった」
大丈夫です。
私が答えると、その男は、私の溢した水を汲み直し村の近くまで送ってくれたのじゃ。
それから度々、男は現れ、私の水汲みの手伝いをしてくれる様に成った。
実は、その男は北の国でも地位の有る人物で北の国の王子だった。そして東の国の姫と結婚が決まって居たのだが、姫はそれはそれは、じゃじゃ馬娘で、国の戦略で決まった縁談に王子は納得して居なかった。
そして私との出逢いが王子の心を揺れ動かしてしまった。
私達は周りの目をごまかし幾度と無く密会する様に成って行った。
「えっ! お婆ちゃんも人間の男の人を好きに成っちゃったの? 」
昔の話しじゃ、長く生きていれば、そんな間違いの一つや二つは有るさ。続きを話すよ!
しかしウサギ狩りの仲間達の噂が国中に広がって姫の耳にも入ってしまった。
姫は激怒して猛者達を集めた、
そもそも、姫は女だけの村を怪しんで居て、魔女狩りを命じておったのじゃ。選び抜かれた、それはそれは残虐な大男達を兵にして、馬車に張り付け台と武器を積んで村に攻めて来たのじゃ、
見せしめにと、まず私の家にやって来た。
兵士達が部屋になだれ込むと、テーブルには温かいスープが用意して有って、私は言った。
長旅ご苦労様です。温かいスープはいかがですか?
一人の兵士がテーブルを 叩き潰すそうとしたが
凍える寒さの中飲まず食わずで来た兵士達は生唾を飲んだ。
「良い香りがするな、お前が毒味するなら飲んでやろう」
私はスープを一口、又、一口、又、スープを
「もういい! 」
一人の兵士がスープを飲むと他の兵士も席に座りスープを飲み出した。
「旨い! 旨いぞ! なんて旨いスープなんだ!
女! パンは無いのですか? 」
私がパンを出すと、兵士達はパンをスープに擦り付け完食した。
「美味しいスープとパンをありがとうございました。洗い物をしましょう」
七人の巨兵達は、みるみる内に小さく成り、顔もほがらかに成った。そお、私が出したスープは
小人のコンソメスープだった。
お前達は何しにここに来た?
「忘れました」
外に有る物騒な物を持って城に帰りなさい!
あと、これは姫様に、お土産だ。
私は真っ赤な毒リンゴを兵士に持たせた。
「美味しい料理と、お土産まで本当にありがとうございました」
兵士達は帰って行った。
小人に成って城に戻って来た、兵士を見て、姫は激怒した。
「お前達は何しに村に行った! 」
「忘れました。姫様そんなに怒りますと、
お顔にシワが…… これは、お土産に貰ったリンゴです、とても美容に良いそうです」
「ふざけるな! 魔女から貰ったリンゴなど食えるか!!……ん? でも良い香りがするな…… 」
姫はリンゴの香りに誘われ、リンゴをかじった。
そして姫は眠りに着いた。
その事を知った王様が王子に魔女討伐を言い渡した。
私は王子が村に来る事を知っておった。皆を先に逃がし、私は一人村に残った。
「ジョセフィーヌ! 」(王子が叫ぶ)
「ジョセフィーヌって? 」(アヤが聞く)
私の名じゃよ!
「嘘! 始めて知った! 」
あくまでも、その国で使ってた名前だよ!
「お婆ちゃんは全国指名手配犯ですか? 」
似た様な物じゃ、アメリカに居た頃は
アンジェリーナだった。
「マジですか…… 」
この国に来た時は見知らぬ人に、お婆ちゃんと声を掛けられたので、名前を、お婆ちゃんにした。
「 ・・・ 」(アヤ無言)
話しを戻すよ。
私が家を出ると王子が居た。
「兵が小人に成って戻って来た、姫が意識を無くした、全ては。お前の仕業か?お前達は魔女なのか? 」
私は、うなずいた
「私は王様の命令で、お前達を討伐しなければ成らない、何故この様な事に成ってしまった? 」
私達は人間との戦いで仲間を減らし、ここに来た、ただ平和に暮らしたかっただけ。
私が貴方と出逢ってしまった事で皆を危険な目に合わせてしまった。皆は、もうこの地には居ない。
殺すなら、どうか私だけを…
「そうか…… 」
王子は腰の銃を抜き、私に突き付けた。手は震えて居て、目には涙を浮かべて居た。
「撃てぬ私には貴女を撃つなんて出来る訳無かろう! 何故なら私は貴女を愛している…… 兵士達は村の外れに待機させている、二人で何処かに逃げぬか! 」
王子は、そう言ってくれたが、私は断ってしまった。そして王子は私を強く抱き締め言った。
「私はこれから銃を撃つ、貴女はそこの井戸に落ちて死んだ事にする、最後にジョセフィーヌ、別れのキスを」
私は首を背け王子に言った。
そのキスは城に戻って姫様に、すれば魔法は解けます。小人達も元の姿に、皆、以前の様な邪気も抜け、穏やかな人格に成って居る事でしょう。
そして姫様と幸せに成って平和な国を築いて下さい。
「そうか、分かった」
「パンパンパンパン」
王子は空に向かって銃を撃ち尽くした。
「悲しいお話、お婆ちゃん、悲し過ぎる! 全然ハッピーエンドじゃ無い! これって私も直江君を諦めろって事? 」
(アヤは泣きながらお婆ちゃんに聞いた)
違うんだよ、あの時、私が王子と別れを選んだのには理由が有ってな、
サタンとの婚礼の義が決まってしまったからじゃ。
魔女が人間と交わってしまうと魔界のバランスが崩れてしまう。
生まれて来る次の世代は血が薄れ寿命も短く成り魔法の力も弱く成る、
それを繰り返す事によって魔界事態の消滅の危機も。
それを恐れ魔界の連中が東の国も北の国も滅ぼして居ただろう。
だが今思うと私の代で血を薄くして置けば良かったと後悔していたのじゃ。
そもそも、この星は人間が支配する物、長い歴史で人間は賢く成り、この星や他の生物にも優しく成った。
私達は長生きし過ぎる、怪しまれ度々いざこざを起こす、転々と住む場所を変えても人間は賢く強い、いずれ私達は人間に滅ぼされるだろう。
悪魔殺しのポタージュで分かっただろ?
私達は人間の癌みたいな物!ならば、人間と共存する道を選ぶべきだと。
アヤは春の魔女、始まりの選ばれし物! 魔界と魔女界と人間界を繋ぐ架け橋に成れる。
あとは自分で決めるのじゃ!!
「直江君に会いたい! 会ってちゃんと気持ちを伝えたい! お婆ちゃんありがとう!! 」
(アヤは放棄を持って家を飛び出した)
「あの夢って、もしかして……お婆ちゃん? 」
(アヤは以前に見た夢を思い出していた)
「私は放棄に乗って直江君に電話した。
会いたい! とにかく会って、ちゃんと話しがしたい、待っててね直江君! 今から行くから!!! 」