(すれ違い)
(アヤが去った後、病室で直江は母親に薬を少しずつ飲ませて、そのまま寝てしまった)
僕が目を覚ますと母さんの顔色が良く成って居て、意識もしっかりしていた。まだ喋れない様だったが僕を見ていた。僕は慌てて先生を呼んだ。
先生は母さんを治療室に運んで行った。少しして先生は一枚のレントゲン写真を持って来て、僕に言った。
「直江君、落ち着いて聞いて下さい。
お母さんの癌が……悪性腫瘍が全て消えている!
こんな事が…奇跡だよ! 奇跡が起きたんだよ!
もう一度検査しないと解らないが、多分もう大丈夫だよ」
先生は、そう言って忙しそうに病室から出て行った。
薬が効いたんだ!
僕は昨日の事など忘れて、舞い上がり少し遅れて学校に向かった。
教室に着いたが、アヤちゃんの姿は無かった。
僕はクラスの先生にアヤちゃんの事を聞いた。
「そうだったな直江はホームルームの時間居なかったんだな。
窓頃は退学する事に成った。何でもお店が移転するそうだ」
「キンコン カンコン」
お昼休みに成り 今は居ないアヤちゃんの席で大きな弁当箱を嬉しそうに開けるアヤちゃんの姿が浮かんだ。
僕は学校が終わってからアヤちゃんの家の前に居た。
「カラン〜カラン〜」
あのーすみません!
「なんだい、お前かい! 正面から来たって事は、もう大丈夫なんだね! 」
お陰様で母さんの癌が全て消えたんです。
「それは良かった!…… でも皮肉なもんだね、
悪魔殺しのポタージュで癌が消えるって事は、
私達種族は人間にとって悪性腫瘍って事だろ。
礼はいいから、ととっと帰んな! 」
でも、アヤちゃんに会わせて下さい。
「あの薬を作るのが、どれだけ大変だったと思ってんだい! 二人は材料の仕入れで死に掛けたんだよ! お前は私達の秘密を知って居るんだろ?
今度来たらカエルに変えちまうぞ!! 」
(ヨーコは直江を追い返した。その様子をアヤは近くで見ていた)
「アヤ、明日の午後、学校に行って荷物の整理してきな! あとこれ退学届け! 」
(強く言っては居るがヨーコの後ろ姿は少し寂しげだった)
(次の日)
学校に着いたが、やはりアヤちゃんの姿は無く
放課後に成った。僕はアヤちゃんの席に座り、思い出を振り替えって居た。ふと気付くとアヤちゃんの机の中が整理されて居ない事に気付き、アヤちゃんの席で手紙を書いた。手紙と《余った薬》を机の中に入れて教室を出て右に曲がり南の階段を降りて家に帰った。
「私は学校に着いた。職員室で先生に退学届けを出し東の階段を上がり教室に着いた。誰も居ない教室で私は直江君の席を眺めて居た。
懐かしい、何日も経って居ないのに思い出が甦る
私は自分の席に座ると涙が溢れ出した。
暖かい…… ? 温もり…… ?
私は机に頬を着け泣いた。
机の中を整理していると直江君からの手紙と余った薬が出て来た。全てをリュックにしまい私は家に帰った 」
「カラン〜カラン」
「ただいま」
「帰ったかい! これからは忙しいよ!
社会人だからね! 次の場所では料理を教えないとね! 新しいコックコートと……包丁も買わないとね! 」
(ヨーコは精一杯明るく振る舞って居たが)
「うん」
(アヤは部屋に行ってしまった)
「私はベッドに横たわりリュックから直江君からの手紙を出した た」
拝見アヤちゃん、まず、お礼が言いたくて、この手紙を書きます。母さんの病気が治りました。
アヤちゃんと皆さんのお陰で奇跡が起きました。
本当に、ありがとうございました。
薬は、半分位残ったので返します。
この薬を作るのが大変だった事を、お母さんから聞きました。(カエルに変えるって)怒られちゃいました。でも、きっとアヤちゃんのお母さんは、とっても心の優しい人だと僕は思います。
先日の出来事は正直、驚く事ばかりで、僕の気持ちの整理も付きませんでした。
今、この手紙はアヤちゃんの机で書いています。
ここに居て分かったんだ! アヤちゃんは普通の娘と何も変わらない事が、皆と勉強して、走って、笑って、お昼に成ったらお腹がすいて、午後には眠く成って!
僕はそんなアヤちゃんが好きです。
又、逢える日を祈って。
さようならは言いません、ありがとう。
「私が手紙を読み終えベッドで泣いて居ると」
「トントン」