(初めてのお使い)
「おはよーアヤ! 早く起きて、これに着替えるのよ! 」
んー…もう少し寝させて……って! 何?お姉ちゃんその格好?
(ユウは黒の特効服に日の丸のハチマキ、特効服には東連合会総長と刺繍まで入って居た)
お姉ちゃんのコスプレ何処までが趣味で何処からが本物?
私は紫色の特効服を着せられ舐めネコのハチマキに《木のバットに釘が沢山刺さった奴》を持たされた!
お姉ちゃん、これいる?
「武器よ武器!夜露死苦!! 」
この間のマシンガンとか手榴弾とかは?
「あれはオモチャよ、《近所の公園》でサバイバルゲームやってた時の奴、夜露死苦!
じゃあ、そろそろ行くよ!」
「ブオォン ブオォン ブオォン」
私は、お姉ちゃんの真っ白なバイクの後ろに乗り地下室のガレージから出発した。
「やっぱりバイクは日本製だね!何てったって、この乗り心地と安定感、両手、手離し運転も楽々だよ!」
どっかで聞いた様な…って!お姉ちゃん危ないから止めて!
「アヤ!二人乗りで高速道路、乗れ無く成っちゃったから空から行くよー」
ひぇ〜 結局、空飛ぶんですか?私、電車が良かった……
(ユウの首筋の六芒星が緑色に光り、二人とバイクを包む、バイクは空高く舞い上がった)
(レストラン)
「おはよーあれ? ユウとアヤの姿が見えないね! 」
「朝早くから仕入れに出掛けたよ!
多分《初めてのお使い》だよ! 」
「そうかい!あの娘達も少しゃ大人に成ったのかな?でも危険な相手じゃ無きゃいいんだが……
お婆ちゃん、レッドアイ(ビール&トマトジュース)頂戴!!」
(峠の上空)
「さあ着いたよ! アヤ笛と、お土産出して」
私は背中のリュックから大きな弁当箱と
縦笛を出した。
お姉ちゃん!本当にこれで大丈夫なの?
(弁当箱のフタを開けると端にズレて型崩れしたオムライスが)
「大丈夫だよ!主役はこれ、萌え萌えケチャップ。
これで堕ちない奴は居ない! 」
お姉ちゃんの自信凄すぎる。
「ピーピーピー 」
(高く頭に突き刺さる様な音色)
「あれ? 上手く吹けない、もう一度! 」
「ピィーピィーピィー」
お姉ちゃんオロチ現れ無いねー
(アヤが鳥居の下で前方を覗き込むと、アヤの頭が少し鳥居を越えてしまって居た)
「ブォーブォー」
(鳥居の前方に黒い渦巻き出現して次第に大きく成る)
お姉ちゃんオロチ出てきそうだよ!
何か凄く風が……
キャー!! お姉ちゃん風に引っ張られる!
「アヤ! 鳥居に捕まって手を離すんじゃ無いよ! 」
(二人は鳥居にしがみ付くも黒い大きな渦巻きに飲み込まれてしまった)
ここ何処?
(二人は暗く灰色の空間で目を覚ます。前方に二つの光りが)
「眼光? 」
(巨大なオロチがトグロを巻き二人をじっと見て居た)
「何かと思えば魔女が二人、ここに何しに来た! 」
お姉ちゃんオロチ現れたよ!
あのー…オムライス持ってきたんですが、
交換にウロコを一枚頂けませんか?
「何をバカな事、言っている! お前らが現れたんだろう オムライスなど要らぬ。まあ、お前ら二人の命と交換なら、ウロコ一枚位くれてやるがな」
「交渉決裂ね! じゃあ力ずくで頂くとするわ!夜露死苦!! 」
(そう言って、ユウが魔法を使おうとするが六芒星は反応しなかった)
「魔力が封じられてる? 」
「当たり前だ、ここは幻影獸の異空間。お前らのテリトリーでは無い!魔法など使えぬ。昔に何度かお前らを食った事が有るが人間に比べて、少し味は落ちる、スパイスが効いているせいか?
しかし今思い出せば、
なかなかの珍味、さっそく頂くとするか! 」
「アヤ大変! 結構ヤバイかも!ケチャップは!?…… 武器は!? 」
オムライスもケチャップも外!
「じゃあバットは? 」
そもそも持って来て無い!
「マジ、ヤバイよ! アヤ出口を探して!! 」
(鳥居の前)
「バタン」
(赤いポルシェからヨーコが、降り立った、右手には鈍く紫色に光る杖を、一角の角で作った物だ。足元には弁当箱や笛が散乱しバイクも倒れて居て、二人の姿は無かった。)
「虫の知らせか、気になって来てみれば。
まさか向こう側に行っちまうとは…… 念の為に持って来て良かったよ! しょうがない行くか! 」
(ヨーコは杖を持ったまま鳥居の下を通過した
ブォーブォーと又、渦巻きが現れヨーコは、その中に飛び込んだ)
「渦巻きが現れた。アヤ出口かもしれない!
いや…… 誰か来る! お母さん?」
おがーさん〜!
(アヤは泣いていた…… )
「まったく世話がやけるね、まさか仕入れにオロチって事は、悪魔殺しのポタージュでも作る気で居たのかい? 無知って言うのは恐ろしいよ!
そもそも、こいつ相手に取り引きなど成立しないんだよ!
こいつは、ここで獲物が入って来るのを待って居る、人喰いオロチだからね!! 」
「ほお 久し振りだな! 俺から一枚のウロコを剥がした女!
前回はもう一歩の所で取り逃がしたが今日は三人まとめて喰らうとするか!」
「今回は、お前のウロコ全部剥がして帰るから、風邪ひかない様、気を付けるんだな!! 」
「なんだ、その自信は? ほう!一角の角か、不気味な色だな。
最近、見ないと思ったら、そう言う事か!」
「そうだよ、私があげた翼で今頃バカンスを楽しんでいるよ! さあ覚悟しな!! 」
(激闘が始まった)
「ユウ!アヤ! 私の後ろに隠れていな!
しかし、初めてのお使いがオロチのウロコって、お前達、悪魔殺しのポタージュがそんなに簡単に作れるとでも思ったのかい? 」
「ごめんなさい! お母さん! 」
ごべんなさい〜おがぁさ〜ん
(アヤはまだ泣いている)
「奴のウロコは何物も通さない鉄壁、でも勝算は有る。前回私が一枚剥がした場所、そこを攻撃すれば、確か首の後ろ」………「ない? 」
「バカめ前回から何年経ってると思う、ウロコは生え変わっているし前回より硬く大きく成って居るわ! 」
「いよいよ正念場だね! お前達覚悟を決めな! 」
(一角の角の杖ですら、オロチの頑丈なウロコには歯が立たず、激しい攻防が続いた)
「腹の白い部分しか無いね、しかし、奴にダメージを与えない限り腹は見せない……
そうだ! 奴が食い付いて来た時に見せる喉元の白い部分、そこしかない! 」
「ガァー!!! 」
(オロチが大きな口を開けて向かって来た! ヨーコは口元に飛び込んだ! )
「しまった! 下顎が邪魔で喉元が見えない! 」
「パクリ! 」(ヨーコはオロチに飲み込まれてしまった)
「残念だ飲み込んでしまって味が解らん、お前達は良く噛んで味わって頂くとするか!!
「お母さん! 」
おがぁ〜さ〜ん〜!!!
(二人は絶望で腰を落としてしまった)
もう駄目!直江君ゴメンネ……
(アヤは目を閉じた。オロチが二人めがけて飛び掛かろうした瞬間「グオーグオー」とオロチが苦しみ始めた!オロチは白い腹を見せ倒れた。
白い腹の内側から六芒星の印が浮き上がりその後、破裂、中からヨーコが出て来た! )
「お母さん! 」
(ユウがヨーコに駆け寄る)
「臭い! 」 (ユウが言った)
おがぁさん〜!
(アヤがヨーコに駆け寄る)
うん、臭い!
(アヤも言った。ヨーコはオロチの胃液でドロドロに成りながら言った)
「オロチの喉元を狙って飛び込んだんだけど、
オロチが大きな口を開けてんの見て、見えたんだよ!
奴の本当の急症がね! 体内の皮膚だって。
私は奴の牙を掻い潜り体内に侵入したのさ、
案の定、内側は柔らかく倒す事が出来た。
鉄壁の牙城は内側から攻めろって、昔、教わったんだよ、えーっと、誰だったかな…… ?
忘れた! 」
大変!! お母さん! オロチの胃液でお母さん溶け出してる!
「ありゃま! 本当だ! 早くここから脱出しないとね! 」
(ヨーコは上空に一角の角の杖で魔方陣を書き
三人は、その中に飛び込んだ。魔方陣は鳥居の手前に繋がり、三人は無事脱出した)
「ありゃエルメスのアロハが台無しだよ! 」
(ヨーコが、そう言った瞬間「パシッ パシッ」
ヨーコは二人の頬に平手打ちをした)
「お前ら勝手に、こんな危ない事、するんじゃ無いよ! お前達に何か有ったら、どおするんだい!
私達ゃこの世界で残り少ない家族なんだよ、言いたい事はちゃんと言って相談するんだよ!! 」
(ヨーコは目に大きな涙を溜めて二人を抱きしめた)
「臭い! 」
「誰が言ったーー !!! 」
(ヨーコは近くの滝で胃液を洗い流し、帰り支度をしていると)
「で、オロチのウロコは? 」
(ユウが言った)
「取って無い? 」
(アヤがヨーコを見ながら言った)
「諦めな! 悪魔殺しのポタージュは封印するつもりだったし、第一オロチのウロコは、オロチが死んでから時間が経っちまってる、今さら剥がしても使い物に成らないんだよ! 」
(三人は東の山を後にし家路に着いた)
「カラン〜カラン〜」
「いや〜お婆ちゃん!偉い目に会っちまったよ!
ほら!エルメスのアロハもボロボロだよ! 」
「そりゃ、大変だったね ユウとアヤも、これでも食べて元気をお出し」
(お婆ちゃんは沢山の料理と生ビールを持って来た)
「お前達!今日の事、ちゃんと説明しな! 」
お母さんは真剣な顔で言った。私は直江君のお母さんの病気の事を話た。
「そおゆう事だったのかい…… 人間には、お世話に成ってるから、ちっとは協力してもいいんだが……
あんた、まだ何か隠してるね! 」
私は直江君の事が好きに成ってしまった事も正直に話た。
「そうかい、分かったよ!
その代わり私の言う事を聞くんだよ! 」
(ヨーコはそう言ってアロハシャツの内側から
オロチのウロコを出した)
えっ! 採ってたの?
「当たり前だろ、こんなレア物、見過ごす訳無いだろう! 私にしか扱えないんだよ、この食材と悪魔殺しのポタージュは。
今日は店、休業にして久し振りに料理を作るよ!
お前達は絶対に入って来ては駄目だよ! ニンニクに遣られちまうからね」
そう言って、お母さんはコックコートに着替えて厨房へ入って行った。食事を終え、私とお姉ちゃんは部屋に戻った。変な植物は又、少し大きく成って居て、お水を少しあげた。昼間の疲れから、うたた寝して居ると、
「アヤ!出来たよ! 」
下からお母さん大きな声がした。
一階に行くと厨房から、黄色くドロッとした液体の入った牛乳瓶程大きさの瓶を持って、お母さんが出て来た。
「お前は絶対に開けては駄目だよ! それと約束は必ず守るんだよ! 」
そう言って、お母さんは私にポタージュを渡した。私は部屋に戻り、直江君に電話して薬が出来た事を知らせた。病院で待ち合わせする事に成り、わたしは魔女の正装に着替えて放棄を持って部屋を出た。
「頑張って来な! 辛いかも知れないがアヤの気持ちチャンと伝えて来な! 」
お姉ちゃんが廊下で見送ってくれた。私は公園で放棄に乗った。落ち着いて!集中するの!
(手の六芒星の光は安定していた)
私を病院まで連れていって!
(アヤが、そう願うと放棄は上昇し安定した高さで飛行した。病院に着き五階の電気の点いた部屋の窓で放棄が停止した)
ここだ!
(アヤは確信し外側から病室の窓を開けた)
「えっ! アヤちゃん…どうやってここに? 」
見ての通りよ、前に私達は普通じゃ無いって言ったよね、そうなの私達家族は魔女!今日はお別れを言いに来たの。
それで、これが約束の薬。少しずつ飲ませてね、
お母さんが作ったから大丈夫!
でね 最後に、私の、お願い聞いて……
ちゃんとキスしよ!
(アヤは薬を直江に渡し、泣きながら直江の胸に飛び込んだ)