第6話 【投棄】
噴水広場に着いた。噴水近くのベンチに彼女が座っているのが見えた。彼女はすぐに僕に気付き小走りでやって来る。
「おっす。大丈夫?」
僕は少し間をあけて「うん、まあ…」と応えた。
「ん〜。ちょっと顔色悪いね。とりあえず近くのファミレス行こっか」
彼女は僕の手を取り、強く握ってくれた。
「ありがとう。」
「いいよいいよ、何かあったみたいだし…、大丈夫。大丈夫だからね!」
この明るい笑顔に僕は確実に救われている。この子と付き合って本当に良かったと感じた。僕達はファミレスに向かった。
店に着く。中に入るとまたもや人が多かった。休日というのはどこも混むな。
10分ほど待ったあと、喫煙席に案内された。
席に座り、ドリンクバーとフライドポテトを頼んだ。「なんか食べとかないと、元気でないよ?」と彼女にハンバーグステーキとライスを勝手に注文されてしまった。
「ドリンクバー行こっ?」早く話を切り出したい僕をよそに彼女はマイペースな感じだ。ドリンクバーに向かう。彼女はカフェオレ。僕はコーラを取ってきた。
「まあまあ、まずはちょっと落ち着こ?大水くんなんか凄い焦ってるみたい」そう言うと彼女は僕の横に座った。僕の頭を撫で、そしてそっと抱きしめる。「よ〜しよし。大丈夫だからね〜。」彼女の胸の中は暖かく柔らかく、そして心地よかった。
そうしてる間にフライドポテト、ハンバーグステーキとライスが運ばれて来た。
さっきのクッキーがフラッシュバックする。
「俺やっぱあんま食欲ないや…」
ポケットから煙草を出し、ライターで火をつける。
「えぇ〜。食べないと頭回らないよ」
僕は困った顔を見せた。すると彼女は肩をすくめて言った。
「じゃあ半分は食べてあげるから、もう半分は食べるんだよ」
「うん…、わかった。」
ナイフとフォークを手にし、彼女はハンバーグステーキを食べ始めた。
「それで?何があったの?」
「あぁ…。これが今朝うちに届いたんだ」
僕は今朝届いた紙袋をリュックから取り出し彼女に見せた。彼女はふ〜んと言って中身をバサバサとひっくり返した。
1つずつ目視する。そして最初に手紙を手に取り内容を読んだ。
「はわぁ。なぁにこれ。私殺されんのかな?」
「そんな訳、ないと思うけど…」
彼女は少し考えて言った。「エリコちゃんだと思う?」
「わかんないけど、あいつお菓子とかたまに作ってたし、財布壊れたことも知ってるし。それに、その手紙の内容だって、明らかに前の俺を知ってる感じだし…。」
「ん〜。そうなのかなぁ…」
彼女は次にクッキーの袋を手に取った。女子力高いね。と感心したようなことを言いながら袋を開ける。
「クッキー割れて…、うお!?え、なに、髪?」
「他のは爪とか入ってた…。割っても見える大きさで入ってないのもあったから、もしかしたら液体系も入ってるかも。」
「汁とか…?」
「それは言わない約束でしょうが…」
「うっわ、キモッ。メンヘラだね〜」クッキーの袋の端を親指の中指でつまみポイッと紙袋に捨てる彼女。
そして最後に取り出したのは例の財布。
「あら、裂けてる。ん?なんだこれ」
財布の裂け目から鉄の塊をつまみ出した。
「え、これって…」
「盗聴器……かな。」
僕が家で見たのは盗聴器だった。1人で家で見た時とは違い、誰か一緒にいる状態で見ると大して怖さというものはないんだな。やはり気持ちは悪いが。
「いや、でもこんなのどこで買うの?」
「わかんないよそんなの。ただ財布の中に入ってたんだよ」
彼女のハンバーグを食べる手が止まった。じっとこっちを見つめてくる。急に動きを止めるなよ…。この瞬間にも無駄なことを考えてしまう。
ガヤガヤとした周りの声が大きくなっていくような錯覚に陥る。怖い。もしかしたらこの瞬間もどこかで見られてるような気がしてならない。気持ち悪い…。そして彼女が一言。
「やばいね。」
「やばいよ。」
それからはロクな考えも浮かばず、灰皿に煙草の吸殻が溜まっていくだけだった。とにかくこの紙袋に入っていた3点セットはどっかゴミ箱に捨てようということになった。
2時間ほど滞在してファミレスを出た。
「今日はどうする?大水くんは実家帰る?」
「明日学校だし、今日は君んち行こうかな」
「了解っ。じゃあ行こっか」
噴水広場前で、彼女がゴミ箱を発見した。
あそこでいいんじゃない?僕もそれに賛成し、噴水広場前のゴミ箱に紙袋を投げ込んだ。少し佇む。すると彼女が口を開いた。
「もう、何も無いといいね…」
「うん…」




