第12話【告白】
私は気づいていた。大水くんがたまに見せるあの表情に。多分、私といると飽きちゃうんだろうな。って。このままだとその内私に飽きて他のところに行っちゃう。
だから私は彼の元カノを使って、私の元に居たいと強く思ってくれるようにしようとした。
SNSのアカウントを作って、エリコちゃんが私の投稿を見ているという嘘をつき、大水くんの家に紙袋を置いていったのも私。
クッキーも作ったよ。髪とか入れたりして。あ、大水くんの予想通り唾とかも入れてみた。何となく。財布の中に盗聴器を入れるのはなかなか大変だった。裁縫って私昔から嫌いなんだ。
無言電話は友達のうちに行く前に、その近くにある公衆電話からかけた。大水くんてば、「いい加減にしろよ!」なんて怒鳴るんだもん。彼のあんな声聞いたことないから私ちょっと笑っちゃった。
その後友達のうちに入った所で、大水くんから電話がかかってきた。
わざと「友達と話してたけど電話に出たフリ」をした、そして大水くんを心配してみせた。その後すぐ友達に適当に理由をつけてうちを出た。うちに戻ってドアを強くノックした。出てきたらどうしようとかは思わなかった。彼、結構怖がりだから。
あらかじめ用意しておいた手紙をドアの隙間に忍ばせて、私はそこから離れた。
ちなみに、友達ってのは私の住んでるマンションの一階に住んでる子なんだけどね。大水くん、うちのマンションの裏に公衆電話あったの知らなかったみたい。
帰って私は大水くんに恥ずかしいセリフも吐いた。でもあれは本音。本当に大水くんを愛してたから。これで大水くんは私のそばにいてくれると思った。元カノへの恐怖を、私が打ち消していく。そうして私たちの愛は深まると思った。
次の日大水くんが、勝手に消えた。
置き手紙と、金槌か無いのを確認して私は焦った。
彼に元カノを殺すほどの度胸なんてないって分かってたけど、もしもエリコちゃんを殺してたとしても別にいいや。そんな風にあの時は思ってた。
彼が出所したら迎えに行こう。きっと誰も犯罪者なんて庇わない。私が守る、ずっと。って。
それで必死に探した結果、大水くんを見つけた。
エリコちゃんといた。あの子、写真で見た時も可愛くはないなとは思ってたけど、実際見ると酷い顔してるんだね。顔は何か長いし、目もなんかちっちゃいし。茄子って感じ。大水くん、何でこんなの選んだろって思った。
それから一連の流れがあって、私は大水くんを引っ張った。長くいてもいいことなんてないからね。
それからは抱きついて、キスをして…。
私この人とずっと一緒にいられるんだって思った。うちに帰ってセックスをした。終わったあと、彼の腕の中で寝顔を眺めていた。可愛い寝顔。
だけど…。
何か、変な感じ。
なんだろうこの、終わった感。
別に大水くんのことを嫌いになったわけじゃないんだけど。達成感に似た感覚。
それからも相変わらず大水くんにベタベタしていたけど、奥底では惰性のような気持ちがある気がしていた。
そして夏休みが終わる頃。私は切り出した。
「別れたい」
片想いの時が一番楽しいって言うのは、やっぱり間違ってないのかな。私は熱が冷めていくのを日々感じていた。彼が私を愛していると実感した時、熱が冷める合図だったんだ。
理由を聞かれた時のことも考えていたが、彼はそれをしなかった。喧嘩別れでもできたら都合がよかったんだけど…。
彼が荷物を取りに来た最後の日「またご飯にでも行こう」と言葉をかけてきた。
そこで初めて、勿体ないことをしてしまったかな。
私はそう思った。
笑ってそれに応えて、彼を見送った。
部屋に戻ると隙間が結構出来て、彼はいなくなったんだな。というのを凄く実感した。
ベランダに出て煙草に火をつける。
8月の晴れ渡る青空。強い陽射し。セミの声もほぼ無くなってきている。
「あっつ…」
彼が歩いていくのが見えた。その背中はちょっと悲しそうで。それを見て私もちょっとだけ悲しくなった。
バイバイ。
煙草の煙はゆったりと青空へ消えていった。




