第11話【思い出】
あれから2ヶ月が経った。
8月。夏休みが終わる頃、僕はサオリに別れを告げられた。
唐突だった。
僕はあの時、サオリのうちでバラエティ番組を見ながらひとり笑っていた。サオリは後ろで携帯を触っている。
「別れたい」
僕は聞き間違いかと思って、「え?」と顔に笑みを残しながら訊いた。
「別れたいの」
聞き間違いじゃない。ホントに言ってる。
「あ、あぁ…、これからは、友達ってこと?」
飲み込めない。なんだ、急に。
「うん。そう…」サオリは僕を見ていなかった。
僕はまたテレビに顔を向けた。ダーツの旅、面白いなぁ。
「そっか…」
テレビの声だけがこの部屋に流れ、僕達は黙ったままだった。
何がサオリをそうさせたのか。見当もつかない。あまりにも突然の出来事だった。さっきまで普通に話してたし、ベッドで一緒に寝てたのに。
「でも、何で?どうしたの急に?」
サオリは困った顔をするばかりで応えなかった。
「言いたくなかったら、別にいいけど…」
どうすればいいのだろう。
ここに置いてある荷物はどうしよう。1回で持ち帰れないな…。
とりあえずこの部屋を出た方がいいのだろうか。
「私シャワー浴びてくるね」
「あ、うん。」
その間に部屋を出てくれ。という合図なのか。
サオリが浴室に入り、シャワーの音がした。
僕はリュックにとりあえず入る分の荷物を詰め、このワンルームを後にした。
23時。外は暗く、虫の音が響き、夏の終わりを感じさせるそんな空気だった。
今日は、友達の家に泊めてもらおう。
僕は近くに住む友人に連絡をし、一泊させてもらった。
「また荷物取りに行く。よろしくね」
そうメールをして、眠りについた。
次の日、学校でサオリを見かけた。1人で歩いている。声をかけようか迷ったが、やめた。
女って、よく分からないな。
その後何日かかけて、サオリの家から荷物をすべて回収し終わった。
最後に荷物を取りにいった別れ際「また、ご飯でも行こう」と何ともぎこちない笑顔で、僕は言った。
「うん、学校とかでも話そうね」
僕は笑って頷いて、サオリも笑みをこぼした。
最後までサオリが別れた理由を言うことは無かった。僕もそんなことは別に聞かなくてよかった。
ただ僕はサオリに振られた。それだけのことだ。
理由を聞いてどうという話でもない。
でも。惜しい人をなくしてしまったな。
その日帰る途中、噴水広場に立ち寄った。
ベンチに座りタバコに火をつける。
前に紙袋を捨てたゴミ箱を、ホームレスが漁っていた。あの盗聴器もあの人が拾ったのだろうか。もしかしたらクッキーも食べたかな。
しかし何だったんだろうか。あの出来事は。
エリコは何も知らない風だった。新しく彼氏も作って、僕のことなんて忘れていたのに。
僕だけが1人で慌ててあんな馬鹿みたいな行為に走ってたんだと思うと、恥ずかしくて笑いがこみ上げてきた。だっさ…。ださすぎる…。
まあこれも後になって、こんなこともあったな。なんて笑って話せる日が来るはず。
若気の至り。
いい思い出をありがとう。サオリ。




