第9話【彼女】
大水くんがいなくなった。
「コーラを買ってきて欲しい」と頼まれた私は、彼を1人部屋に残し、コンビニへ走った。
外は雨が降っていたが。この雨でさえ気にならないほど、気分がよかった。なのに…。
部屋に戻ると彼の姿は無く、机の上に一枚置き手紙が残されていた。文面はシンプルだった。
ちょっと外出るね。愛してるよ。サオリ。
それだけだった。
もう少し周りを見ると、道具箱があった引き出しが少し空いているのに気づいた。まさかと思って私は引き出しを調べた。
「金槌がない…」
私は外に飛び出した。雨を気にすることなく傘も持たないで走った。電話をかけるが、彼は出ない。何回も何回もかけ直した。メールも返答がない。
思いつく場所を探し回った。近所の公園、古本屋、ファストフード店。全く見つからない。
そして噴水広場へと辿り着いた。彼らしき人は見当たらない。自殺…、自殺とかしてないよね……。大水くん…、大水くん……。
時刻は19時半を過ぎていた。
「どこに行っちゃったの……」
その時一つの場所が浮かぶ。
学校…。
すぐに彼の通っていた高校の場所を調べる。ここからなら、40分くらい…。
とにかく駅に向かった。電車が来るのは10分後。なんでこんな時に限って遅いんだ。勘弁して欲しい。
私の鼓動が早まる。早く。早く。
その間も電話をかけ続けた。出ない。出ない。どうして、どこにいるの…。私は電車が到着しドアが開いた瞬間飛び乗った。
座席に座り、頭を抱える。「私、ビショビショじゃん…」ふと外を見る。街はすっかり暗くなり、街頭の光が流れていく。大水くん、エリコちゃんの所に行ったのかな。頭の中で彼との思い出を回想する。ああ。お願い。無事でいて。
電車に揺られること30分。駅に着いた。20時07分。
雨の中校門前まで走る。息を切らしながら私は学校前に着いた。「大水くん!大水くん!!いないの!?」私の声だけが響き、返事はない。ここも違うの…?どうしよう。もうどこに行けばいいかなんて…。
決死の思いで電話をかける。お願い、出て。お願い。
「サオリ…」
大水くんだ!良かった…、生きてた……。
「もしもし!?大水くん!!今どこにいるの!?」
「サオリ。俺、今……」
それは今にも泣きそうな声だった。
待ってて。大水くん。




