第五話 最終話?
ある日、私が読んでいる小説のタイトルを見て親友が顔をしかめた。
どうかしたのだろうか?
すると、彼女もこの小説を読んでいて、最終巻で世界が崩壊していくのだという。
もしも、私がこの小説の世界観を好きになったら、世界の崩壊が流行ったりしないかと、心配しているのだという。
まさか、そんなはずないよ~! だなんて言って、笑えない……。
私が好きになっ人のその後は、かなり悲劇的だった。別れの理由から、私が彼らに好意を持ったままでいられるはずはない。むしろ、大っ嫌いになってしまった。
『私の嫌いなモノは、みんなも嫌い』
逆説的だが、その現象は確かに起きていた。私と別れた彼らは、すぐにモテなくなった。そして、人間関係を拗らせて残らず不幸になってしまった。
光のお風呂に入ってる。そう表現するのが一番ぴったりとくる。
あたたかくてサラサラしている。ゆったりとしていて、ダラダラしていない。
『こちらへ、おいでなさい』
「誰?」
地球の管理を司る神様の言うことには、魔法の無い世界で、私のような異能者が、時々生まれるそうだ。
私が時々見る夢を思い出していた。足元に広がる白い光の靄が、ゆったりと渦を巻いている。光の一粒一粒が、恒星のように光り輝いていた。
アカシックレコード、世界記録と呼ばれるモノ。あるいは、潜在意識の集合体。あるいは、個たる意識が心の奥深い層で繋がりあい、一つになっているという『集合的無意識』等々、呼び名は変われど、確かに存在する人類の精神世界。
そこに、私は影響を与えてしまうらしい。そんな特殊能力なんか欲しくなかった。
最初は、偶然。それとも必然?
私の異能は、『集合的無意識』にアクセスして、何となく読み取り、全体の流れに合わせて、無意識に行動していく。そんな、ささやかな能力だった。
私が、初めて心から強く異能の力の発現を願ったのは、中学生時代の親友のためだった。
それが、きっかけだったと神様は伝えてきた。それから、私の異能はどんどん開花した。
しかも、私の成長と共に『集合的無意識』へ、影響を与える程に強くなってしまったそうだ。
無意識の世界に、明確な私の意思は、小さな小石を投げた様なものだ。それは、小さな波紋がどんどん広がるように『集合的無意識』を揺るがして、大きく響き渡るのだ。つまり、私という個が、世界中に影響して侵食していくという事になるのだった。
例えば、私の着物が好きは、ファッション業界はもちろん、世界中に影響して、自分たちの文化を見直そうという思考に向いていき、独自の文化を守ろうとしていく。
それが、多彩な文化の発展に繋がれば問題ない。しかし、自分たちの文化を守ろうと争いに発展していけば、他の文化の排除運動や最終的に戦争へと繋がりかねない。あり得ないとは、言い切れない。
確かに、危険な能力だ。たとえ、世界平和を願ったとしても、どんな影響で表層世界に顕れるのか予測不可能なのだから……。
それにしても、理不尽じゃない? この世界に必要とされない異能だから、この世界から存在を消して、異世界に転生しないといけないだなんて!
だから、神様にいくつか望みを叶えてもらうように交渉した。
まず、失踪した叔母さんの行方を聞いた。
なんと! 叔母さんは、異世界に召喚されたのだった。驚いていたら、私の異能も叔母さんの存在が影響しているかもしれないそうだ。
どういう事か、神様でも答えられない案件なんだという。
私の存在を消した跡の家族と親友、会社はどうなるのか心配だった。
すると、抜けた穴を埋めるように、自然に辻褄が合っていくから大丈夫だそうだ。
せめて、家族と親友に幸せが訪れるように配慮してもらうことは可能なので、くれぐれもよろしくお願いした。
だけど、転生先は選べないし、転生後のチート能力も、あまり期待出来ないと言われた。異能の力は私の魂の能力なので消えないそうだ。
なんてこった! これじゃ、本当にただの厄介払いなの?! 絶望的な気持ちでいると、神様は、私の異能を必要としている異世界に転生して、それなりに幸福に生きられる様に助力すると約束してくれた。
助力って、どの程度なのか? 私の幸せと神様の考える幸せに違いはないのか?!
神様は、時間だからと話を切り上げて、私を異世界転生させてしまった。
世の中に、あれこれ異世界転生の理由はあれど、これが、わたしの異世界転生させられた理由。
………… 其の一。
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