第四話 任務完了?
第三章の最終話です。
私は、のんびり農業国家の平和な日常を眺めながら、観察日記を記録していたはずでした。
ある時期から、目まぐるしくポペラ星人の文明が変化し始めました。文明が発達していきます。ポペラ星人の世界は変化しているようです。
巨大な建物が増えました。どうやら、公共浴場の様です。温泉大ブーム!
あははっ、古代ローマっぽい。
温泉の娯楽に溢れた平和な文化が世界中に広がりはじめていました。お風呂文化で公衆衛生が向上しています。怪我や病気の治療法として、薬湯や温泉の効能の研究が進んできました。
まるで、お風呂改革で世界統一されていくようです。
ポペラ星が、豊かな水に恵まれた環境だからこそです。まあ、砂漠もあれば、不毛の地もありますが、多くの土地が自然のままです。
文明が発達すると、自然破壊も同時進行してしまうのが、ありがちなパターンですが、ポペラ星人は違いました。
木を倒して森を切り開いても、またそこで木を育てます。そして、育った木を再び切り倒して、利用してまた新たな木を植え育てます。
森の妖精さんのような暮らしぶりです。
観察と言っても、ポペラ星人の会話を聴き取れるわけではありません。理念や思考を知る事なんてもっと出来ません。
私は、観察日記をつける為に、神様から観察眼スキルの初級レベルをもらいました。
初級レベルですから、ポペラ星人の容姿も、細かな部分は見えません。髪の色はわかっても、瞳の色まではわかりません。手足があるのはわかっても、指の数までわかりません。細かな部分や、家の中での生活や習慣まで観察することは出来ません。
ポペラ星人は、争いを嫌い、平和に暮らし、自然を大切にして、お風呂文化で進化します。まさに、私にとって愛すべき理想の民です。
今日は、お祭りをしていて楽しそうだな。
今日は、新しい温泉地が開発された。
今日は、大型船団が隣の大陸に辿り着いた。現地の人と、仲良くしているようだ。
私が観察するかぎり、大規模な争いや戦争らしきものを一度も目にした事がなかったのです。小さなケンカを見た事がありますから、争いを知らないわけじゃないでしょう。なのに、不思議なくらい平和な世界です。
観察日記は、短い文章の日もあれば、長々と私の考察も入れた論文めいた文章になる日もありました。
『実は、困った事態が起きた』
私の書いている観察日記が、神様の世界でベストセラーになっていたそうです。『ポペラ星観察日記』シリーズを読んだ神様が、ミニチュア宇宙に星を創り観察するのが流行っているそうです。
嫌だな、また私が発信源で流行っているだなんて……。
ただ、色々と簡略化した世界は、長続きしないそうです。例えば、星そのものが脆いとか、生物が虚弱だとか、ちょとの刺激で変化して、大惨事を起こしてしまっているそうです。
それは、神様の禁忌にギリギリ触れてしまいそうな行為に当たるそうです。
神様の世界で会議が行われて、ミニチュア宇宙の観察は禁止される事になりました。ミニチュアでも使用される物質世界と魂は本物だからです。この『ポペラ星』も廃棄の対象になると聞いたのです。
「嫌です! どうして『ポペラ星観察日記』を公開したのですか?」
『『実験場』の観察日記は、公開するのが決まりだった。資格のある神なら閲覧は自由だ。その内容が、癒やされると評判になった。ミニチュア宇宙の観察が流行ってしまったのは…………偶然だ』
「私は、また異能を使ってしまったのですか?」
『いや、偶然だ。異能は封印した。もう大丈夫だ。だから、#翔音__かのん__#、もうこの世界はお終いにするから、他の異世界に転生してくれないか?』
「お終い? …………えっ?」
『うん。お終いだ』
「このポペラ星の人々はどうなるのですか?」
『一瞬にして一つに戻る。この世界は、最初からそうなる様に創られた。だから、逆にそうしなければならない。この世界は『実験場』なのだから』
「『実験場』だから? ……そんな!」
『翔音の為の実験場。だから、役割を終えれば消す。消さなければならない』
「…………!」
『翔音、泣くな。この『実験場』で起きた出来事は、いつか何処かの異世界で、再び起きる可能性の一つだ。ポペラの魂は、波紋の様に世界に拡がり響き渡り、いつか再び君と交わるだろう。世界の理は、そういう風に出来ている……』
「……嫌だ! 消さないで!」
『だから、翔音……君は君が消えるまで、君のままであって欲しい。……一緒にいられて、楽しかったよ』
そんな神様の一言で、他の異世界に次の転生をする事になりました。
これが、私が異世界転生させられた理由。
……………… 其の、三。
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