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異世界転生の理由。  作者: 七瀬美織
第一章 流行りますか?
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第一話 …… 偶然?



 小学生の頃、髪を自分で切ったことがあった。子どもの浅知恵で、散髪代を浮かせてお小遣いの足しにしようとして失敗したのだ。


 当然、前髪はガタガタ、片側だけ短く切りすぎて悲鳴をあげた。自分の髪を鏡を見ながら、利き手と反対の手でハサミを握って切るのが、こんなに大変だなんて思ってもみなかった。

 母親が、半泣きになっている私を見て、あまりにユニークな髪型に大爆笑した。


 子どもの頃に、母親も同じ失敗をした覚えがあるらしく『今度からちゃんと美容院に行きなさい』と、器用に髪型を整えてくれた。

 出来上がったのは、片側だけ長いショートカット。なんだか海外のパンクロッカーみたいな感じに仕上がった。でも、なかなか個性的で悪くなかった。


 翌朝、親友は私のユニークな髪型を見て、はじめ面食らった顔をしたが、クールでカッコいいとベタぼめしてくれた。私は、この髪型が大好きになった。


 それから一週間後、何気なくテレビを見ていると、国民的美少女アイドルが、私と全く同じ髪型をしていた。清楚な雰囲気からのイメージチェンジに、驚きはあったが、世間では好評で、アイドルの人気も上がり、同じ髪型をする人が増えた。


 『あなたも、真似してるの?』と、よく聞かれた。『私の方が先なのよ』と、本当の事を言ったら変な顔をされてしまう。

 親友は、私の髪型がアイドルより先だと知っているので、隣りで面白がっていた。


 小学生最後の夏休み、誰も見向きもしないマイナーな地元製造のアイスにどハマりして、毎日のように食べていた。


 ある日、急に品切れ完売してしまった。


 不思議に思ってネットで調べたら、某有名音楽プロデューサーが、ブログで取り上げて大人気になったらしい。


 メーカーの生産が追いつかなくなり、売切れの貼り紙にガッカリしていると『あら、あなたも話題のアイスを試しに食べてみたかったの?』と、店員のおばちゃんに苦笑された。違う! 私は毎日のように買って食べてたのに……頭にくる!


 私は、その頃の日記にこう書き留めていた。


『私の好きな物は流行はやる。私の好きな物はみんなも好き☆』


 いま読み返すと、完全に自意識過剰の黒歴史だ。うわあ、病んでる。


『私のまわりで、偶然が重なり続けているのかしら? それとも、私が流行の最先端部にいるのかもしれない!』


 あの頃の私は、本気でそう考えていた。親友と試しに、同じ地元製造のお菓子を食べ続けてみた。あまり好きな味じゃないが、実験、実験、実験だからガマンして食べ続けた。


 でも、今度は流行らなかった。解せぬ!


 夏休み明けから、親友と毎日靴下を色違いや互い違いに履く実験をした。一人だと恥ずかしいが、二人なら平気で出来たし、靴でも試してみた。馬鹿だよね。


 しかし、学校の同じ教室ですら流行らなかった。実験は失敗したかに思われた。


 一ヶ月後、海外で靴下や靴を互い違いに履くのが流行っていると報道番組で言っていた。私は、たいへん微妙な気持ちになった。


 いくらなんでも、『世界規模の流行の発信地はここからだ!』と、主張するほど馬鹿じゃなかった事だけが、小学生時代の救いだった。




お読みいただき、ありがとうございます。

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