世界の基盤。そして真実。
(誤字脱字があった場合修正します。御了承ください。)
アドバイス等あれば宜しくお願いします。
人生ソロプレイヤー。
これが俺、大上悠二のスローガンだ。
ソロプレイヤーといっても引きニートということではない。ちゃんと大学を出て念願であった東京の大手ゲーム会社に入社し、一人暮らしの28歳で童貞も貫いている。
勘違いするなよ?断じて俺は聖剣を使いたかったのに使えなかったという訳ではない。全体偏差値、上の下のこの俺に限ってそれはありえない。ちゃんと告白おわりをつげるうただってされたことある。聖剣を使う機会だって沢山ではないがあった。だけどお断りした。それはお察しの通り、俺の聖剣がこの世界の人間のシークレットホールを受け付けないからだ(決してこの世界の人間をを悪く言っているのではない)。
とまあこんな感じで俺には彼女はいない。正体不明な妹はいるけど。
「おにい……た……ん?」
妹と名乗るそれは、俺の存在をちゃんと認識して、俺のことをお兄ちゃんと呼んでいる。
しかし、目は半開きどころかほとんど閉ざされていて、今にも寝てしまいそうな、ウトウトとした表情をしている。
「おにぃ……ん……おか……えり」
パタン
赤い絨毯の上にそのまま倒れ込み、先程まで必死に開けられていた目は閉じられ、案の定完全に寝てしまった。
「うむ。真っ昼間から昼寝とは、俺の妹も名乗るだけのことはあるな。というか、今昼なのか?」
そう。俺は異世界に来ているのだ。
適当に発した言葉だったが、それを再認識させるのには十分だった。
「まぁ、とりあえず、状況整理だな」
そう言うと、俺は辺りを見渡す。
見たところ、ここは何処かの城の王室。妹(仮)の後ろに豪華な椅子(王座)があるのがその証拠だ。
ここには窓一つなく、蝋燭の光だけが部屋を照らしている。その光は、LEDに馴れてしまっている俺にはだいぶ薄暗く感じてしまう。
「まあ、無いよりはましかっ」
俺は息を短く吐くと、更に情報を得ようと、今度は妹(仮)の方向へ足を進める。
妹(仮)との距離はさほど離れておらず、十メートル程の距離しかないが、こんな希望と不安が入り乱れる状況では、やたらと長く感じてしまう。
コツン
やっと半分まで来たところで足に何か引っ掛かり、意識していなかったせいか、そのまま体勢を崩して絨毯の上に倒れ込んでしまう。
「いってて……なんだよ急に……ってなんじゃこりゃ!!?」
薄暗く、足元の確認をおろそかにしていて気付かないかったが、床の至るところに切り傷のような痕がある。
「なんだよ……これ……」
それだけではない。
赤い絨毯には点々と濃い赤、いや、固まってしまっているが血のような痕跡がみられる。
気付けば、周りを大量の血や切り傷などに囲まれている。
一体誰がこんなこと……
しかし、俺の目に映るのは一人の少女のみ。
「まさか……お前が?」
再度、辺りを確認するがやはり少女以外の人影はない。
ありえない。
逃げたい気持ちが込み上げて来る。しかし、もしもあの子が、この状況をつくりだした加害者ではなく被害者だったとしたら?その可能性を考えれば置いて行く気にはなれない。
「とりあえず、武器らしいものがあったら没収ということで……」
そう判断すると、俺は妹(仮)の体をまさぐるべく、残りの五メートルをゆっくりと這い寄って、やっとの思いで到着する。
「うわぁ……やっぱり俺、異世界来たんだな」
妹(仮)の髪は、もとの世界では見たことのない青色。勿論染めた感じ無しで、俺の想像していた異世界人そのものって感じだ。
これが妹で、殺人犯じゃなかったら最高なのだが……
そんな念頭を置きつつ、そして、武器らしいものが無いことを祈りつつ、俺は妹(仮)に手を伸ばす。
ピロンッ♪
手を上から下へ、数十センチ程動かした時だった。
まるでスマホの着信のような音が辺りに鳴り響き、光る板のようなものが目の前に現れる。
明るくて、どこか懐かしい光。
いや、懐かしいのではなく、つい数十分前まで見ていたパソコンの光そのものだ。
ここの薄暗い光に慣れてしまったせいか、やけに眩しく感じてしまうが、目を細くしてなんとか光の板に目を向ける。
徐々にではあるが目は慣れていき、光の板が可視のものへとなって文字が浮かび上がる。
「status window…………ステータスウィンドウ!!?」
俺は今日何回目かの大きな声を上げてしまった。
それも無理はない……ステータスウィンドウといえば仮想だけの概念のはず。
それは大手ゲーム会社に勤める俺がよく知っている。なのに今、ここにステータスウィンドウは存在している。
この世界にステータスという概念があるのか、俺だけが可視なのかは知らないが、異世界という現実にこんなものがあるとは思えない。
しかし、そんな疑問より探求心が勝ってしまい、俺はステータスウィンドウをまさぐり始める。
ステータスウィンドウは縦、五十センチ。横、メートル程で以外にも大きい。
左側には大きく人のシルエットのようなものが表示がされており、シルエットの表示の上には《No buffer,Helth Status》と書かれている。
直訳するとバフなし、健康状態だ。どうやらこの世界にはバフという概念も存在するらしい。
「本当にゲームそのまんまじゃねぇか」
俺は口許に多少の笑みを浮かべながら、ステータス確認を続けた。
その作業には大体10分程の時間を有したが、なんとかすべての表示を確認する事ができた。
ステータスはこんなもだ。
Lv.135
職業:魔導剣士《男》
体力:28000《HP》
魔力:1000《MP》
攻撃:15000
防御:12000
魔功:15000
魔防:18000
そして、プレイヤーネームは『アウルフ』
このステータス群を見た時、俺は目を疑った。
そう、プレイヤーネーム、ステータスさえも見覚えが……いや、昔プレイしていたゲームそのままなのだ。
いや、そうではない。
この世界がそのゲームの世界そのものなのだ。証拠にマップの土地の名前が全て一致している。
信じ難い事だが、異世界に来た今、それを疑う余地はどこにもない。
言い忘れていたが、ここは魔王城だ。
俺もこれにはかなり驚いた。
驚いた理由はここが魔王城だからではない。確かにそれにも少しほど驚いたが、このゲームを遊び尽くした俺は何回も、自分のキャラを動かしてここに来ている。だからそれ程のことでもない。
実際に来ると迫力が違うのだが……
問題はこいつが魔王ということ。そして……こいつが俺のことをお兄ちゃんと思っている事だ。
このゲームの設定上……既にチュートリアルの時点でこいつの兄は死んでいる。
そう、殺したのは俺たちプレイヤーだ。
こいつの兄の死は確定時功で、そこからストーリーは進み、最後に兄の代わりに魔王になったこいつを殺してハッピーエンド。
もしも本当に、この世界で俺がこいつのお兄ちゃん的存在だったとしたら、俺はいつか殺される。
しかし、もう既にこいつの兄は死んでいる。床に血やら傷やらがたくさんあるのがその証拠だ。
「こいつの兄は、こいつをかばって死んだんだな……」
見たところ、妹(仮)には傷一つない。シナリオ通り進んでいるのだから、当然といえば当然なのだが……
しかし心の傷は深いようだ。眠たかったというのもあるだろうが、俺を兄に当てはめていた。
おそらく、兄の死を受け入れられずにいるのだろう……。
その時。
「お兄ちゃん……ん……」
妹(仮)が亡き兄を呼ぶ。
その顔はどこか満ち足りていて、幸せそうだ。
「クッ……!」
これほど悲しいことがあるだろうか。
このままストーリー通り進んでしまえば、こいつも死んでしまうのだ。
しかし、それがゲームのシナリオであり、絶対不変のルール。
起こり得る未来は変えることが出来ない……いや、一つだけ未来を変える可能性がある。
この世界には、ウィンドウなどのシステムが少なからず存在している。
もしもこの世界がシステムで動かされているのだとしたらこの世界の基盤となる、コンソールが存在するはずだ。
それを見つけ出し、不確定要素である俺がシナリオを書き替える事ができれば……こいつ、そしてこいつの兄は助かる……。
「やるしかねぇな」
決して簡単なことではない、こいつ以外の全種族が敵のようなものだ。
それでもやるしかない。いや、やりたいのだ。人生ソロプレイヤーとして、ゲーマーとして。
俺は小さくため息をついて、笑みをつくる。
「それまでは、俺がお前のお兄ちゃんだ。よろしくな……カレン」
そう言うと、握り締めた拳をほどいて、妹の頭を優しく撫でる。
そして……
「誰だか知らないが、この世界を造った奴……ぶっ飛ばしてやる」
俺は天井に向かって睨んだ。