分話版 第三話 3-6
* * *
一分も経っていなかった。
「レフィリー!」
コウスケの叫びに、はっとなった少年(仮)はコウスケを観、うるちは紅白の手旗を、自身の頭上でクロスさせた。
「レフィリー、サレンダーを宣言……「ますたぁ、まってほしいのねん!」へっ?」
決意したコウスケが閉じていた目を開けてそう宣言しかけたのと、フェリがそれを遮ったのは同時であった。
“どうであろうが、やーっちゃるって! いけ、ファイヴグレーター!”
同時に、ファイヴグレーターが河原に到達したのもこの時であった。
続けざまにぬ゛っ、とそのファイブグレーターの首がフェリの居る藪へ割って入り、
……━━そこでファイヴグレーターは目撃し、困惑した。
「ふぬぬぬぬぬぬぬぬ……!」
よぉぉぉぉぉ……と<フェリ>がぬかるんだ段ボール箱から取り出した“モノ”、それは、
「「あっ?」」
武器指定コードの設定を、<maisan>としたのがコウスケのVRグラスの投影ウィンドウ上に映し出されたのはその時だった。
それに気付き、あっはっはっはっ…あちゃーー、とコウスケは頭を垂れ、
「えぇーい、」
ひび割れた陶器の皿を…ー
「はぁ!」
ぱりぃん!
…ー叩きつけた!
「あっ…あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
少年(仮)の絶叫も納得できよう。
━━棄てられていた瀬戸物などが入った段ボール箱を見つけたフェリは、その中の割れかけた白磁の皿を使って、ファイブグレーターの頭に一撃を見舞ったのだ!
「ありゃー、窮鼠猫をかむ、ってやつですね」
「お、オレのファイヴグレーターぁぁぁ!?」
最初からひびが入っていたので、強力な力で割れたのではなかった。
しかしそれをよくわからないので愕然となった少年(仮)に、ドンマイ、とうるちは追い打ちをかけたのであったが。
「大丈夫か、フェリ!」
「やったやったよーっ! ますたぁますたぁ、ぼくがんばったよーっ! たおせたよーっ!やったやったよーっ!」
衝撃感知機構によって、
一撃を喰らいノックアウト状態のファイヴグレーターを前に、
マスターであるコウスケへ、涙を流しながら飛び跳ねながらフェリは喜んだ。
━━が、コウスケは相手のHPを確認して、
「まだだ、相手のヒットポイントはまだ二割残ってる!」
「ふぇ?」
そうだ、そのとおりだ、と少年(仮)が気づいたのも同時であった。
「チックショー、まだだ!」
グレーター、チェインジング! っと少年が叫び、
ガシィン! ガシィン!!
…という効果音が内蔵されているスピーカーから発されながら、ファイヴグレーターは今、
おもちゃの各部品のブロックごとに組み込まれた疑似マグネッサー・システムによって、特撮番組劇中のCGそのものの形態変化を成し遂げようとしている最中となった。
そうして……━━
「できた、ファイブグレーター・ロボ!」
ブッ…ピガァン!
という効果音がなったかはどうかだが、とにかく、ファイヴグレーターの人間型形態がたった今姿を成した!
「ふぇぇぇ?!」
「まて、サレンダーだ。サレンダーするっていってるでしょうが!」
フェリもコウスケも愕然とするしかなく、
「閃け、大・斬・刀!」
ファイヴグレーターの脚部に折り畳まれて収納されていた巨大な剣を、ファイヴグレーターは目前のフェリに対して構え、
「いっけぇー! グレーター・すらっ……」
それを最後まで言い切ることはできなかった。
「ぐえっ」
「なっ」「はっ」「あぁー、」
ガッ、……とその少年(仮)の後ろ襟首が、お淑やかそうな見た目の高齢のご婦人によって力強くつかまれたのはこの瞬間のことだった。
「ばーちゃん!」
それに対する少年(仮)の断末魔はそのようなものであり、
「おれ! いま! ビーターゲームを!」
「ビィトだかビーファイターだかソレスタルビーイングだか知らないが! お帰り!」
てきぱきと取り巻きの子供たちによってファイヴグレーターが片づけられ、アカリという少女の手によってコウスケからひったくられたベッドとおやつとごはんのセットも返され、
そうして少年(仮)が祖母によって連れ帰らされていく光景は、少年(仮)の被っていた帽子が脱げ落ちて、その…ー
「女の子…だと、」
端正で愛らしい顔と、艶やかな焦げ茶色のセミロング・ヘアが、露わになった瞬間だった。




