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分話版 第一話 1-5













「ふぅ、」




自宅の、自分の部屋。



八畳ほどのまずまずの広さがあって、模型を作るための要塞と化している、コウスケの巣。


己の聖域へのこの小包の輸送作戦は極秘裏に成功を収めた。サイクロプス隊だって出し抜けた筈…ー少なからずとも、悠里に気づかれた、ということはないはずだ。





「………」




茶黄ばんだ薄手の再生ボール紙で、小包の全周は覆われている。



包装を押してみると、どうも玩具とかのブリスター・パッケージのそれらしき感触が、確かにあった。




「…………、」




決めた、開けてみよう。




いつまで待っても埒があかない、と判断したからだ。それに、中身が気になった。もしやもしやして、父と母の研究の、何者かに謀殺されるに至ったその重大な秘密がこの中に…ーだとかと思えればまだ良かった。




確かに両親は研究者だったが、事故死の理由は四連勤の夜勤明けの運転によるものだった。




それでも保険は降りて、遺族年金に、エースの研究員だったから研究所からの弔問金もけっこうな額が出て、…とまあ、保護者がいなくなった浩介が今後一人で生きていくのに、不自由しない金はある。




祖母祖父は、両親ともに既に他界。親戚の家に引き取られる、というのも選択肢だろうが、弁護士さんの“審査”で軒並み弾かれた。いうにからんや、という奴だ。あいにくとも“やったね、たえちゃん!”にはなりたくはない。





「…ーーーーー、」




机の上に常時スタンバイしてある工具箱の中から取り出したデザイン・ナイフのキャップを転がして、その刃先で小包のガムテープを切っていく。




中にあるのは極薄のプラスチック・フィルムの梱包ケーシングだ。うっかりでも刃の通りを深くすれば、その内包装の中身の何かを傷つけてしまう…冷静に、慎重に、





「ふうっ」





そうして分割が終わったならば、後はそれを開くだけ。ラップの中の女神様(薄い本)。このラッピングの中は女神様がいるのかどうか、はたして…ー






「!」






浩介は、開いた。包装を開けて、その中にあった物を目撃した。







「…あ、」







…ーそして、時が止まったように、それから目を離せなくなった。








“Happy Birthday !”







ブリスターパッケージの上面に乗せられていた、ツリーと雪だるま…父は絵を描くのが上手だった…がポスカで描かれたクリスマス・カードには、若干ナイフの通りによって切り傷の入ってしまったそのカードには、見慣れていたはずの母の筆跡で、たしかにそう記されていた。





そうだ、これは、おそらくそうだ。あの年の誕生日プレゼントの、あの時の約束の…ー






「っ!」






だとしたら、この中の中身というのは、あれに違いない!





放り投げるように、しかし大切に、机の上の分かる場所にカードを移動させると、もう浩介のする事は一つだった。










例を挙げるなら、武装神姫のパッケージの、箱の中身のブリスターパックを知るものはどれほどいるだろうか。










雛壇のように、折り詰めのように、重箱のように重ねられたそれを展開していき…ー











そして、そのような三段の包装ケースの中に、そのフェアリーメイデン本体・組み立てキットの全パーツは納められていたのである。









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