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分話版 第一話 1-3








「んでタコ殴りにされてほうほうの体で学校まで逃げてきたと、」


「そぶそぶ(そうそう)」


「災難だねぇ。」



都立・ひじりヶ丘高校…ー

キリング・ゾーンと化した自宅から浩介が自分の通う学校になんとか脱出して避難してきた時、その自分の居場所の後ろ隣の席には、今日も悪友の姿があった。




「それはともかく、どうだ!? 今日のエリシアちゃんのコレ!」



「そうだなぁ…ー」




城島、という苗字である。

誰が呼んだかジョージ・マッケンジーの渾名。




ぱっと見はどこからどうみようと正真正銘のマジの不良というかぼんくらヤンキーなのだが、その左肩にはバカガラス…ならぬ、1/12相当のサイズの、美少女フィギュアが乗っかっている。



いや、フィギュアですらもない。



       ・・・・・・・・・・

たった今、そのカノジョは瞬きをして、手を振って挨拶をしたこちらに、器用にマッケンジーの肩につかまりながら、手を振りかえして満面の微笑みをかえしてくれた!


それから、鈴の鳴るような声で、



「おはようございますっコウスケさん!」



と、彼女の機構として内蔵された指向性スピーク機能の効用により明瞭な物として聞こえるような、その溌剌と返事を返してもくれる。


 


ーーこんな喪男にこう接してくれるリアル女がいるか?



さぁ、リメンバー、だ。思い返してみよう。なにがいた? 暴力幼馴染に、重篤重度・末期患篤のオタク小娘クォーター、だいいち生物なまものであるし、あいにくとも俺の属性はどちらでもない!


そしてそれ以前に、あんまりにも可愛らしい、エリシア嬢のその仕草一挙動の一々に、たまらず浩介は感動のため息を飽きることなく今日も吐いたほどであった。今ならチャムの作画に参加しまくったブッチャンの気持ちがよくわかる。そして…ーあと少しで自分もお迎えできたのに、ともー…


 コウスケはふたたび滝のように感涙していた。

 本日二度目の今度のこれは、ゆうきまさみや椎名高志の漫画のテイストである。


そうなのだ、マッケンジーのこれは、よく動く、綺麗…ここまでならfigmaだろうが、その上、しゃべる。駆動する。しかも勝手に。何も指示命令操作をしなければ…ー



ーー萌えるポ~ジング、だって、例えばあなたがしょんぼりしている時、ちょっと落ち込んでいる時、勇気が欲しいとき、今晩のオカズがど~しても欲しいエアパスタな日の時、なんか軽く甘い一粒をprpr したいとき、それから…etc。。。あなたがこの“妖精”を持っていたなら、はげまそうとして、してくれるかもしれない。



そのように、

自立して駆動し、自分で思考し、自主的に行動と会話が可能な、アレックスシステム:オートマトン 、 短縮して、アレックスロイド。

の…ーフェアリーメイデンだ。




その“妖精”は、今日はティエリア・アーデのコスプレだった。




「フン、」




浩介は、彼…というかオタクという生き物の性をよく熟知していないと侮蔑の一瞥とも受け止められかねない最上の賛辞を鼻を鳴らすことで表明し、




「昨日はチャム・ファウだったのに、なんでだ」



「俺、男装っ娘、好きなんだよ。知ってるだろ?」



「あいにくだが、俺もすきだ。…」





「「同士よ!」」  「きゃあきゃあ~!//////」





所でティエリアは無性だろJK、と腐のおねーたま方からクレームが来そうだが、そんなもん、男のリピドーの前には無力なのだよ!(声:池田秀一)


まぁ、とにかく、

がっし、と、白い歯を輝かして腕を酌み交わした高校生二人は、クラスメイトの友情というか、アッー! というか、薔薇かどうかは兎も角として花畑が咲く…というか、とりあえず、青春してんな…だった。

ブロマンス?うん。純情ロマンシス…

そしてその始終を妖精・エリシアは興奮した面持ちでバッチリ目撃していた。

もちろん、家電製品・フェアリーメイデンの高機能スマート端末としての.REC も忘れずに。これは彼女の個人的なライブラリに収蔵される…ー








通称・アレックスシステム。ないしはアレックスロイド。

人間と同等の思考とコミュニケーションは可能な、当時の新世代型・準、高次完全軽量小型自立人工知能の利用物の規格化されたなどの総称の事で、今の世間では、それをおもちゃのロボットだったりラジコンだったり、プラモデルだとかに仕込むのが流行っている。それが入っていればどんなものもALEX。



そしてフェアリーメイデンというのは、そのALEXの中でも、少女型だったり女性型だったりの外見をしたマイクロミニチュア・オートマトンのジャンルの事である。




ALEXの公表から30余年…ー2066の現代。


この日本ではホビーとしての利用が定着し、ガンプラバトルも、プラモシュミレーターも、ロボトルだってエンジェリックレイヤーだって、セッションゴー!だったりも、我が家の神姫との日常だって現実のものとなった。




群雄割拠の模型誌では、如何に付録のALEX対応パーツの企画を出すかに、年度ボーナスの増減配が掛かっている。…それが今のリアル。




そんな中、アマチュア・モデラーのはしくれと自認する浩介はというと、まだ今はアレックスシステムだけで、フェアリーメイデンをさわったことは、実はない。




興味はある。死ぬほどある。何度だって夢に見た。なのだけれど…ー




「ところで、なに買うか、決めたか!?」



「えーと、なにの」



「トボケンナっての! …ーフェアリーメイデンを、妖精をよぉ??」



「…はぁ、」



ため息つくなぁ! と激発したマッケンジーであるが、少しはこちらの気持ちというのをご理解頂きたい。



こないだなんか、すごかった。三ヶ月前のことだった。

いつの間にか悠里の奴は、不正規ネット上の脱獄生成AIの吐いたコードのコピペではあったそうなのではあるが、それでも一端のハッカー並に実力をつけていて(汗くさい脳筋のくせに!)、“自分のパソコンが壊れたから貸して?(はぁと)”などという口実で、なんと浩介のPCにバックドアを仕掛けてくれやがっていた。



そうとは知らずに、浩介はようやく念願のフェアリーメイデン、HJ誌の特集で見て一目惚れした、“機動少女黙示録・ヴォークトチャイカ”のチャイカ・ジュラーブリクたその予約購入をした。そして念願の発送日の、その日…ー




「発動した志津菜ちゃんのトラップカード!じゃなかった、遠隔操作によって解約されてキャンセルに、高額受注生産品ゆえキャンセル料発生によって入れた筈の代金の四分の二は帰ってこず、人気商品につき再注文は不可。数少ないキャンセル分の追加受注も、その日の午前零時から三十分後に予約殺到につき締め切り、すべてを知ったのはその日の夕方…だったっけか?」



「もう! 女の子は! 信用しない! うぅ…っ」



「それがいい。なんかしんねーけど志津菜ちゃん“妖精”を目の敵にしてるもんな。エリシアちゃん以外の特にリアルの女子なんざ、クソクソの排便物、うんこちゃーぁんだぜぇっての!…ーあっ、そこのキミ、今日予定あるぅ?」



まだそう古くない古傷を大きく抉られたことによる、そんな浩介の惨状をよそに…あるいは満足した、という体で…マッケンジーのあんちくしょうはとおりかかりのクラスの女子、…ーにではなく、そのツレのフェアリーメイデンにコナをかけている最中であった。

まったく、こいつはポジティブだ。…と浩介は何回目かの嘆息をした。



このマッケンジー、“妖精”の事となれば見境がない。


中にはそういう目的でファッションとしての所持もしているという女子相手ならばともかく、平気で他人の所有物…というか所有妖精にまで…コナをかける…のだ。



理由はただひとつ、“妖精の魅力が自分の原動力だから”、



なんというか噂で聞くかぎりだが、それによって得たパワーの発露の結果が、どうこうとなって暴走族(という呼び方は浩介はせず珍走団という表現を使いたがる)や浮浪児界隈のトライブ同士で抗争が開始したのを、その対立を解決した…皆、妖精好きにしてやった、とマッケンジーは笑っていた…という話も、同じクラスというだけで耳に入ってくる程だった。



こちらの目的はこうだ。“妖精のすばらしさを世に広めるため”。



ただ、そんなアブナい橋をどうも実際に渡っているらしきこの目前のこいつも、自称が“フェアリーだいすきクラブ会長”というくらいなのだから、やってることもその通りであるし。

オラ、“ねこにこばん”つかえよコラ、っつー感じであるが。

ポケスペのポケモンだいすきクラブ会長よろしく、ニャースとペルシアンが現実に居たらお金持ちになれるよね。


…カネがそんな簡単に、手に入ればなぁ…



「つまりは、だ、」




ヤロウはそうかぶりを振ってから、




「早く買って、俺とちゅっちゅさせろ!」



「それが本音かァ!!」




好きな同人作家にけそ氏の名前を挙げるこのマッケンジーのことだから油断ならない…

まぁ本気で怒鳴っておいたがこちらもマジという訳ではない。大概しっぱいしてるしナ。



はぁ、全く。



…ーしかし、こいつ、学内では一番にフェアリーメイデンを知るだろう、無二の人物でもあった。そうしてフェアリーメイデンに関するお困り相談なんてのも、コウスケはALEXオートマトン技術担当として時々手伝ったりもしているので浩介も承知のことだった。




密かに、偉大な友人、だとも思っている。





     * * *








鶴来浩介の所属とは…ー


首都圏内の地方都市、七未崎市。

そこに立地する、都立・聖ヶ丘高校ひじりがおかこうこう…ーのI年I組。出席番号26番。男。




平均的な中肉中背で、彼女はナシ、このまま三十路に達せれば魔法使いになれる…ーとだけ記しておく。





肩書きは、以下の通り。




第二模型部部員、兼、生徒会書記(幽霊)




説明をしよう。


第二模型部…アレックスシステム搭載模型等の遊競を目的とした聖ヶ丘学校の部活。



浩介は、自慢ではないが、そこのエースだ。数多くのコンテストやグランプリで勝ち残り、中学生の頃、東日本大会で総合三位に入賞したこともある。その戦果によって、出席日数ギリギリであっても、なんとか中等部から高等部へのエスカレーターに必要な必須単位を取れている。




しかし、それより以前は、なんと驚くことに武道少年であった。メガネなんかつけておらず、(幼馴染曰く)イケメン・フェイスを輝かして、今では毛嫌いしている悠里とその両親と共に道場で汗をかき、…ーそのせいで相手方たちからは、何やら執心されてしまっている様だが、申し訳ないが、それは今の自分には関係のないこと、だとも浩介は思っている。




幼稚園のころ、最初は戦隊モノのミニプラ、次に500円ゾイドのゴドスとステルスバイパー、そしてとどめがビルドファイターズのガンプラの、ジムスナイパーK9とパワードジムカーディガン…というステップで、順調にプラモデル模型の洗礼を果たした、鶴来浩介という少年。






彼が一度は離れかけていたプラモデルの世界にカムバックしたのは、両親の事故死が要因であった。






     * * *



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