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英雄願望とキセキの種  作者: 土谷兼
オープニング
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オープニング

花柳シリーズの三作目になります。

といっても前後作とは話の繋がりは一切ありませんが、登場人物を一部共有していることもありますので、気が向いたら前作も読んで頂ければ幸いです。


それではよろしくお願いします。

毎日更新予定。

 友達が死んだ。



 名前は海堂浩介(かいどうこうすけ)、俺の小学校以来の友達で二十歳になってもその関係は続いていた。

 だが、その海堂はもういない。


 事故死だった。

 ビルの建設現場から鉄骨が落下し、走行中のトラックに激突、そして荷台に積まれた缶詰が散乱、それに躓いて転倒した際に落ちてきた鉄骨に強く頭を打ち、クモ膜下出血で数時間後に死亡した。

 奇跡的にも他に死者は出ず、トラックの運転手も含め軽傷で済んだ。つまり死んだのは缶詰に躓いた海堂ただ一人。


 最初に聞いたときは何かの冗談かと思ったが、俺の目の前には海堂の死という現実だけが無慈悲に突きつけられている。

 俺にはあいつの死を不運という言葉で片付けることが出来ない。何もかもが不自然で、どうしようもなくやるせない。

 だが……その怒りも悲しみも、ぶつける矛先がわからずに虚空を彷徨っている。


 鉄骨の落下も予期しようがない程、偶然に起きた事故だという。

 そんなことを信じることは出来ないが、偶然通りかかったトラックの上に落ち、そのトラックが偶然缶詰を積んでいて、偶然近くにいた海堂がそれを踏んでしまった。周囲にいた人の話では、海堂はトラックの運転手を助けようとして慌てて駆け寄っていったらしい。

 

 

 いくつもの偶然が重なって、結果として海堂は死んだ。

 あるべきはずの未来はいとも簡単に消え去ってしまったのだ。


 なにより、数週間前に彼女が出来て喜んでいた矢先のことだった。

 とても綺麗な人で、俺や海堂なんかには一生縁がないだろうと思っていたのに、俺は奇跡を起こすと言って告白した海堂は本当に付き合ってしまったのだ。

 その人は海堂の葬儀以来見ていない。

 ショックが強くて海堂の家や墓に来れないのかと思っていたが、人伝に特に変わりなく暮らしていると聞いて、怖くて会えずにいる。


 彼女にとって海堂はなんだったのだろうか。

 俺の目から見ても、彼女が海堂に対してなにかしらの他意があって付き合っていたようには思えなかった。だが海堂が死んでからの彼女は、まるで魔法が解けたみたいに何もなかったようだという。

 

 



 何もかもが謎に包まれた海堂の死。

 いや、もしかすると本当に偶然が重なっただけなのかもしれない。俺が無理矢理にでも納得出来る理由を求めているだけなのかもしれない。

 そう思って今まで灰色に感じる世界を惰性で過ごしてきた。考えることを止めれば、少しはあいつの死を受け入れることが出来る気がした。



 だが、俺は出会ってしまったのだ。

 あの悪魔のような女と。


 そして俺は知ってしまったのだ。

 海堂の起こした出来事を……。


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