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シェアハウスシリーズ

カオスな桃太郎

作者: 駿河留守

 僕の名前はひよこ。これは本名ではない。背が低くて芯の細い体格をしているのと仕事先でいつまでもひよっこだからということでみんなからひよこくんと呼ばれている。それは僕が住んでいるシェアハウスでも同じでみんなひよこくんと呼んでくる。その結果、誰も僕の本名を知らない。

「ひよこくん!」

 こんな感じいつも呼ばれる。

「何?三根くん?」

 この金髪でツンツンの髪型をしたいかにもイメージの悪そうな髪型をしているけど、顔はとても優顔の同じシェアハウスの住民の三根くんだ。ちなみに無職のニートだ。

「突然呼び出して何?君と違って僕は明日も仕事なんだけど」

 ちなみにシェアハウスには僕と三根くん以外に人が住んでいる。女子高生と女性大生とOLと刑事と引っ越し業者の人たちが暮らしている。ちなみに僕は風呂工事の仕事をしている。どう頑張っても三根くんはニート。

「いや、さすがにこれだけ仕事を探しても一向仕事が決まらないのはきっと俺は普通の仕事が向いていないせいなんだ」

「あっそ」

「きっと、俺には何か才能が隠れているのかもしれない。そう!例えば小説家とか!」

 そう言うと三根くんは一冊のノートをとりだした。

「何これ?」

「小説を書いてみた」

 いい加減目を覚まして仕事探せばいいのに。

「さすがにいきなりオリジナルをかくのは難易度が高いから元々ある作品を俺なりにアレンジしてみた」

 そんな練習している場合じゃないと思うんだけど。いい加減に仕事探せばいいのに。

「それで読者第一号として俺の書いた物語を読んでくれるか?」

 でも、そんな三根くんを見ているとかわいそうになってきてしまう。だから、今回ばかりは付き合ってあげるとしよう。

「分かった。読んであげるよ。貸して」

「ありがとう!ひよこくん!」

 本当に定着してるよな~。その呼び方。

 受け取ったノートを開くと汚い手書きで文字が書かれていた。読む前に読めない気がする。

「なんで手書き?パソコンあったよね?」

「喜海嶋さんに破壊されました」

「あ~、そうなんだ」

 喜海嶋さんというのはシェアハウスンの住民のひとりでOLさんだ。

 実は僕ら二人は前にある事件を起こしたせいでシェアハウスの女性陣からかなり敵視されてしまっている。その制裁を三根くんは食らったようだ。三根くんは重度のロリコンでそのパソコンの中には幼女の裸の画像がいっぱい保存されていることを僕は知っている。

「それで手書きにしたんだ」

「そう!」

「読めないから読んで」

「・・・・・ろ、朗読するのか?」

 何恥ずかしがってるの!気持ち悪いよ!

「こんな程度で恥ずかしがってたら小説家にはなれないよ!もっと堂々と!」

「そ、そうだな。よし!では読みます!」

 僕はその場に座って拍手をする。三根くんは立ち上がり書いた小説を読む。

「桃太郎改」

 地雷臭しかしないんだけど気にしない、気にしない。

「桃太郎改。昔々、ある所におじいさんとおばあさんがいました」

 ここまで普通だ。

「おじいさんは山をしばきに」

・・・・・・・・きっと、誤字だよね?そのまま読むんだったら誤字くらいその場で訂正しようよ。

「おばあさんは川を洗濯しに行きました」

 その半笑いの三根くんの顔を見て確信した。確実にワザとだ!

 いやいや、おじいさんもおばあさんもハッスルすぎるよ!

 おじいさんは山をしばいてどうするの!

 おばあさんは川を洗濯してどうする!の

「おばあさんが川を洗濯していると」

 おばあさんは清掃ボランティアの方なのか?そうだ。きっとそうだ、洗剤とかを川に流して泡だらけにした川をジャバジャバ洗っているわけがないよね。

「桃太郎が流れてきました」

 桃太郎すでに誕生してる!!!

「おばあさんは流れてきた桃太郎を家に持って帰りました」

 それは誘拐って言うんじゃないかな?

「おじいさんが『立派な桃太郎だ』と言いました」

 え?何言ってるのおじいさん?

「おじいさんは包丁で桃太郎を2つに切りました」

 桃太郎ーーー!!!

「すると中から立派な桃太郎が出てきました」

 何でだ!それだとただのマトリョーシカじゃん!

「おじいさんとおばあさんはその子供を桃太郎から生まれた子で桃太郎太郎と名付けました」

 ダブってるよ!

「桃太郎太郎はすくすくと育ち鬼を退治しに行くことになりました」

 そこはしょるの。

「桃太郎太郎はおばあさんからきびだんごをもらい鬼退治に出発しました」

 本来の桃太郎なら最初に犬だけどどうなんだろう?何かひねってくる気がする

「桃太郎太郎はジャーマン・シェパード・ドッグに出会いました」

「・・・・・・なにそれ?」

「警察犬によく見られる犬の品種」

 と三根くんが解説してくれた。

 って警察権の犬ってあのごつくデカい犬のこと!せめて柴犬にしてよ!すでに桃太郎太郎よりも活躍しそうじゃん!鬼捕まえるのとか得意そうじゃん!

「犬が吠えていたので桃太郎太郎は仲間にしました」

 確かに犬がしゃべったおかしいけど、そこくらいファンタジーっぽくしてもいいじゃん。

「次に桃太郎太郎はマウンテンゴリラに出会いました」

 宣言します。ツッコミを辞めます。

「仲間になりました」

 展開早いよ!ってもうツッコんじゃった!

「次に桃太郎太郎は」

 次は何だ?

 キジだから鷹?ハヤブサ?それとも鷲?

「不死鳥に出会いました」

 せめて現実に存在する鳥にして!

「桃太郎太郎はジャーマン・シェパード・ドッグとマウンテンゴリラと不死鳥を仲間にして鬼ヶ島に向かいました」

 桃太郎太郎何もしなくても鬼に勝てそうだよ。

「桃太郎太郎は鬼ヶ島に到着しました」

 き、きっと桃太郎太郎の部下のスペックが高いから鬼もそれだけ戦闘力が高めになっているはずだ。きっとそうに違いない。

「桃太郎太郎は寝入っている鬼を襲い、鬼を立ち直れないように痛め付けて金品を略奪しました」

 もうどっちだが鬼か分からないよ!

「こうして桃太郎太郎によって鬼に虐殺されました」

 俺は鬼に同情したくなるよ。

「桃太郎太郎は鬼から略奪した金品を村中にばらまき幸せに暮らしました。めでたしめでたし」

 めでたい?

「ひよこくん!どうだった!これだけのハイクオリティーの話を掛けるんだから絶対に小説家に慣れると思うだろ?」

「そんなわけないじゃん」

「へ?」

 僕はあきらめて就職活動をするべきだと思う。

「だ、だったら点数付けてくれよ!その点数次第では諦める!」

 点数か・・・・・真面目につけてあげよう。

 最初の誤字らしきところがワザとというところは完全にマイナスだね。でも、桃太郎太郎の仲間のバラエティーには感心するところもあったかな。最後に鬼を倒しに行ったはずなのに自分が鬼になるというところも斬新と言えば斬新なのかもしれない。

 よって、僕のあげた点数はこうだ。

「7点かな」

「結構いい方じゃん!」

 あ。勘違いしてる。

「もちろん、100点満点中7点だよ」

 その瞬間、喜んでいた三根くんが一気に真っ白になった。

 次の日、三根くんは日課通りハローワークに仕事を探しに出かけて行ったとさ。

 めでたしめでたし。

こちらのお話はこのサイトで活動する前に活動していたサイトで掲載していたものを改造したものです。

個人的にも好きな話だったんでシェアハウスシリーズ風に手直してみました。

本家はFC2小説の『とある俺の日常』の混沌物語です。

こちらのお話も読んでみてください。

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