■シーン10・はやく、嫌いになって(フルキャスト)ENDING!!男4女4
■シーン10・はやく、嫌いになって(フルキャスト)ENDING
地下神殿へとやって来たクロムとリンディアとダーク。その後をつけているディラ、ジョーカー、テトラ、ダナ、コーラ。
神殿入り口で足を止めるダーク。
ダーク「じゃあ。俺はここで待ってるね。行ってらっしゃい」
クロム「はい。行ってきますっ」
リンディア「……行ってきます」
クロムとリンディア、奥へと足を進める。
ダーク「……おい! お前ら何してる!」
コソコソと内緒話をしているナナシ&エドガー一行。
テトラ「はやっ。がーん」
コーラ「な、なんでバレとるん? 完全に気配消しとんのにっ!?」
ダナ「バカ。ダークはケテラス一の聖騎士だぞ。俺が育てたケテラス一の聖騎士だぞっ!!?」
ディラ「ダナ、うるさいっ。シーッ! シーッ!」
ジョーカー「鼻がよくきくんじゃねえか?」
ディラ「ジョーカー様さっきもお酒飲んでたでしょっ!」
テトラ「コーラがクサイんじゃない?」
コーラ「はあ!?」
ダナ「あ~。アイゼル温泉ゆっくりつかりてえなあ」
ジョーカー「月見酒、か」
ダナ「良いねぇ」
ダーク「とっとと出て来いっ!!」
ディラ&コーラ&テトラ「は、はぁ~い……」
ダナ「お前焼酎も飲むのか?」
ジョーカー「まあそこそこな。だがなぁ、ダナあれだろ、お前と言ったらハイネケン。だろ?」
ダナ「へっ。わかってんじゃねえか。小僧」
ダーク「コルァ!!」
ジョーカー「うるせえな。聞こえてるっつの。夜中に大声出してんじゃねえよ。変人プリンス様」
ダーク「どうしてここに居るんだ。ディラ! こんな趣味があるのか!?」
ディラ「うううっ……。す、すみませぇん……」
コーラ「くっ、クロム様を勝手に攫ってったんはダーク様やろ!?」
ディラ「そっ、そうですよっ! クロム様は、女王になんかなりたくないのにっ!」
ダーク「――クロムとリンの背中に、王家の証が現れた」
ディラ&コーラ&ダナ「えっ!?」
テトラ「ふぅーん」
ジョーカー「どういうことだ」
ダーク「ここは通さない。二人は王族として本物になるんだ」
ディラ「それは……。本当に、クロム様とリンディア様が望んでいることなんですか!?」
ダーク「それは――。……っ!? なんの真似だ」
テトラとジョーカー、銃を抜き。銃口をダークに突きつける。
テトラ「クロム・ロワーツに本名なんて要らない。そう、ただ求めているだけで良いのさ!」
ジョーカー「名も王族の証も、あいつの最終目標だった訳だ。こんな形で宝が簡単に手に入るなんて、そんなん」
テトラ&ジョーカー「無意味なんだよっ!!」
全員の足元が揺れる。地震。
コーラ&ディラ「きゃあっ!?」
ダナ「な、なんだ!? 地震!?」 テトラ「わぁっ!?」
ジョーカー「なんだ……?」
ダーク「はじまったんだ。儀式が」
石の螺旋階段を下へ下へと進む、クロムとリンディア。
クロム「――お姉様、手紙に書かれてあったことは本当ですか?」
リンディア「どの部分についてでしょう」
クロム「っ……『お久しぶりです。名無しの、直接話したい。あなたがアイゼルの女王になって下さるのなら』……」
リンディア「私は死んでも、構わない」
クロム「どうして、そんなことをおっしゃるんですか」
リンディア「あなたの為よ」
クロム「えっ?」
リンディア「着いたわ。さあ、儀式を始めましょう」
クロム「お姉様は知っているんですか? どうして証が突然現れたのか」
リンディア「さあ。必要になったからじゃないですか?」
クロム「でもお姉様には、」
リンディア「名無しの。真実とはなんでしょう」
クロム「え……」
リンディア「私は知りたくなかった。そんなことはどうでも良かった!」
二人、儀式の間の玉座に置かれてある赤い珠に触れる。
クロム&リンディア「っ――」
互いの背中が共鳴して光り――。地鳴りが聞こえる。
クロム「お姉様と私は、本当の姉妹なのですね?」
リンディア「私は半分だけ。父様としか血は繋がっていないようです」
クロム「そうですか……。でも私は嬉しいです。ずっと家族が欲しかったから」
リンディア、赤い珠から手を離してしまう。
クロム「お姉様?」
リンディア「中途半端なこの私が女王になるなんて。きっと国民は納得しないわ」
クロム「そんなことはっ!」
リンディア「この18年。私がアイゼルに尽くしたことなど何一つない! ずっとダークの後ろに隠れて……。怯えて縮こまっていただけ」
クロム「私の、せいですか?」
リンディア「違う……。全てが怖くて仕方なかったのよ。どんな行動も、自分の殻を破れずに。ただ……」
クロム「お姉様……」
リンディア「私は純粋な王家の血が流れていないことに絶望して、孤独を深く抱き(いだき)続けた」
クロム「……」
リンディア「満たされたかったの。だから、」
クロム「お姉様。この背中の陣は、やはり血なんて関係ないんじゃないでしょうか」
リンディア「そんな訳ないでしょう」
クロム「いえ。今このタイミングで現れた。それが何よりの証拠だと思うんです」
リンディア「私は社会的利害なんて考えず、ただ自分の為だけに」
クロム「エゴがなければ人は潰れてしまう! さぁ、お姉様。続きを」
リンディア「お前が自殺するよう仕向けたのはこの私よ!!」
クロム「っ!」
リンディア「18年前。メイドや下級騎士たちに、王族の悪い噂を流したのは私なの……」
クロム「……そうですか」
そっとリンディアに近付こうとするクロム。
リンディア「っ来ないで!!」
クロム「お姉様。あの時死のうとした私はただ弱かった、それだけです。お姉様のせいで、名無しの姫は消えた訳じゃない。それにね、」
リンディア「来ないで……」
クロム「あの噂がなければ、あの時私は城の皆と一緒に舞踏会を楽しんでいたでしょう。暗い気持ちになんてならず。一人部屋に居ようなんて思わなかった。それは困るんです」
リンディア「……?」
クロム「感謝させて下さい。あの日私は……。かけがえのない人に――」
リンディア「ッ! クレラスの声紋とキーコマンド! あれだって!」
クロム「お姉様が、クロム・ロワーツと設定させたんですね。ダークに」
リンディア「っ? ど、どうして」
クロム「あの時テトラがメールをくれていたんです。指紋とログがダークのものだったと。テトラが、観測能力に長けていること、お姉様だって知っているでしょう。……でも、ダークのことだから。テトラが私に知らせることを見越して“痕”を残して行ったのかも知れませんね」
リンディア「……っ」
クロム「ダークに、私を殺せとでも命令し……。それが出来ないのならクレラスのキーコードを弄れとでもおっしゃったんですか?」
リンディア「……」
クロム「お姉様、私を精神的に追い詰めたいのなら。もっと直接的な攻撃でないと効果はありません。私のまわりの人間を全て抹消するとか……その位のことをやらなければ私は傷付きませんよ!!」
クロム、腰から小さな銃を抜き。
リンディア「ひっ……!」
リンディアに投げ渡す。
リンディア「っ!?」
クロム「それで、私の腕と足を撃って下さい」
リンディア「……」
クロム「お姉様。私に怖いものは……そんなにないんです」
リンディア「どうして、」
クロム「私の強さはジョーカーの力。テトラの探究心が、私に知恵をくれる。ディラの真っ直ぐな心が、私の心を奮い立たせ。コーラとダナの存在が、いつだって私を守ってくれる。ダークが居なければ、私はもっと冷たい人間になっていたでしょう。他にも、沢山の人たちが、私の心に寄り添ってくれています」
リンディア「そう……。わかっているのよ。あなたばかり愛されて」
クロム「羨ましいなら輪の中に入ってくれば良いのに! お姉様自身を否定しているのは、お姉様だけです!!」
リンディア「ッできない!! 私はあなたみたいに強くなれないのよ!」
クロム「卑怯な真似は出来るのに、どうして一歩が踏み出せないの!? 臆病なお姉様なんて、私は見たくありません! 小さい頃の、気高くて気丈なリンディア・ロワーツはどこへ行ってしまったんですか!!」
リンディア「ふっ。あなたと一緒よ……。あの時、泉の底に落ちて死んだわ。騎士たちや国の為に死んだあなたに、私は笑って顔向け出来ない!!」
クロム「でも、私は許したい!!」
リンディア「……名無しの……」
クロム「お姉様。私は、私だって汚い。守るべき国があるのに、それをダークやお姉様、アイゼルの皆に押し付けて逃げてしまった。お姉様は、そんなに女王になるのが嫌だったのに……。私は何も気付かずに」
リンディア「違うの……」
クロム「?」
リンディア「私はあの人が、あなたにいつまでも一途なのがどうしても耐えられなくてっ……!! だからっ……!」
クロム「えっ」
溶岩を纏ったキャギラが現れ。クロム目掛けて降って来る。
クロム「キャギラ!? あっ、あの時と同じ……!」
リンディア「名無しのっ……!!」
クロム「えっ――」
クロムを熔岩から庇い、全身大火傷を負うリンディア。
リンディア「くっ、あああああああああああっ!!」
クロム「っ!! お姉様ぁ……っ!!」
倒れたリンディアに駆け寄るクロム。
クロム「っ!」
リンディア「っ……これで……。よかった……。……名無し、の……」
クロム「もう喋らないで! すぐ治療をっ! 上まで連れて行きますっ!!」
リンディア「……(クロムの頭を強く抱き締める)……ごめんなさい。あなたに、酷いこと、ばかりして……。こんな可愛い妹に……私はなんてことを」
クロム「おねぇさま……」
リンディア「アイゼルを、頼みます……。クロム……」
クロム「っ……!! いけない、お姉様! 私に女王なんて出来ませんっ! 私なんかに任せてはだめっ!」
リンディア「あなたのほんとうの名は……っ、ぃ、っき、に……」
クロム「えっ!?」
リンディア「わ、たしは……」
クロム「?」
リンディア「ダークのことが、ほんとうに……すき、だった……。…………………………」
クロム「お姉様? お姉様……! 目を開けてくださいっ!! お姉様ぁ!!」
リンディアの王家の証が消滅する。
クロム「っ……わたしに言ったって……仕方ないじゃない……っ!」
ダーク&ジョーカー「クロム!!」
やっとそこへ駆け付けるダークとジョーカー。クロム、身体がビクつき。
クロム「ダーク……ジョーカー……」
ダーク「リン……!?」
クロム「(振り向かずに)来ないで下さい!」
ジョーカー「何言ってんだ。はやく逃げんぞ!!」
クロム「(ダークを睨み付け)どうして私の名を先に呼んだの……?」
ダーク「え?」
クロム「どうしてもっとはやく来てくれなかったの……」
炎を纏ったキャギラが、リンディア目掛けて襲いかかってくる。
ダーク「クロム! 危ないっ!!」 ジョーカー「クロム!!」
クロム「っ! お姉様ッ……!!」
ジョーカー&ダーク「クロム!!」
リンディアを庇い、背中に大火傷を負うクロム。焼け爛れ、王家の証が消えてしまう。
クロム「お……ねぇ、さまっ」
キャギラに襲われるダークとジョーカー。剣と銃で戦う。
ダーク「クロムッ! くっ……!?」
ジョーカー「こっちを片付けんのが先だ! ッるあっ!!」
クロム「……お姉様、っ、これでもう……私に女王の資格はありませんっ。元より私は反逆者。こんな、お姉様が居ないアイゼルなんて……」
焼けたクロムの背中とリンディアの身体が突然光り出し。二人の身体が全身燃え上がりながら融合してしまう。
クロム&リンディア「消えてしまえば良いんだわ……!!」
ダーク&ジョーカー「なっ……!?」
燃え光るその炎の眩しい灯りが、儀式の間の壁画を明るく照らす。
ダーク「赤い……女性? あれと同じ姿?」
ジョーカー「文字が何か書いてあるな」
ダーク「怒り神……現れし、時……破壊、され……」
ジョーカー「読めるのか」
ダーク「いや、ほとんど崩れてて、駄目だ」
クロム&リンディア「……ふ、う、う、……っ!」
ジョーカー「あー、すげぇ殺気。目を合わせんなよ」
ダーク「元に戻す方法は……。書いてないかな」
ジョーカー「ふっ。随分と冷静じゃねぇか」
ダーク「いや、内心かなり焦ってる。自分を保つのに必死だ」
ジョーカー「俺は嬉しいな」
ダーク「は?」
ジョーカー「あいつにはあんな面もあるのかと……。ククッ。――ったく。知り合って二十年近く経つのに。まだまだ知らんことがあるようだ。ほんと、飽きないな。流石は俺のクロム・ロワーツ」
ダーク「……来るぞ。構えろ」
ジョーカー「俺に命令するな」
クロム&リンディア「う、かっ、アッ……」
ジョーカー「ふっ。良いぜ。クロム、俺を楽しませてみせろ」
ダーク「おい。傷を付けたら容赦しないからな」
ジョーカー「無傷で捕らえろってか。良いだろう」
怒り神となってしまったクロム。ジョーカーとダーク目掛けて、槍の炎を振りかざしながら突っ込んでくる!
ダーク&ジョーカー「(なんとか避ける)っ!!」
ダーク「クロムっ! 目を覚ましてくれ!」
クロムに向かって何度も銃を撃つジョーカー! しかし、いとも容易く弾かれてしまう。
クロム&リンディア「ううううう、あ、あああ」
ジョーカー「わお」
ダーク「っおい!!」
ジョーカー「傷は付けてねーだろ」
ダーク「言い訳するな! 国の宝だぞ!!」
ジョーカー「国の宝ねぇ。一体いくらの価値があるんだか」
出口に向かって逃げるダークとジョーカー。
ジョーカー「とりあえず戻るぞ!! ここじゃ戦いにくくってしょうがねえ」
ダークの通信機に、ナナシから通信が入る。
ディラ『CQDXCQDX! ジョーカー様っ! ダーク様っ! ナナシ、発進準備、出来ましたっ! 応答して下さいっ!』
ダーク「ディラ! すぐそっちに戻る!」
ディラ『えっ!? は、はいっ! 了解ですっ!』
ジョーカー「ナイスタイミングだ!! ディラ、乗り込んだらすぐに逃げるぞ!! ここはもう崩れる!!」
ディラ『はいっ!』
コーラとテトラが、二人の元に駆けつける。
テトラ「まったくもう。人使い荒いんだからっ! ジョーカー! お待たせっ! 言われた通り、エンジンかけて。出口にエドガー待機させてるよっ」
コーラ「ダーク様っ!」
ダーク「コーラ! 引き返すんだ!」
コーラ「っ!? なっ!? あの敵生体はどうすんねん!? っ? あ、あれ、キャギラやないみたいやけど……なんなん!?」
テトラ「……クロム? じゃ、ない?」
コーラ「あんな化け物、見たことな……」
ダーク「振り返らないで! 脱出が最優先だ!! 行くよ、コーラ!!」
コーラ「わっ!? は、はいなっ!」
テトラ「クロムとリンディアは?」
ジョーカー「良いから離脱しろ!!」
テトラ「ええっ?」
コーラ「待ちぃ! 説明しぃな!」
ダーク「あれは――……」
コーラはナナシに。テトラとジョーカーとダークは、エドガーに乗り込む。
ディラ「ダナ! コーラの回収、確認っ!」
ダナ「ダークは!?」
ディラ「エドガーに乗ったみたい!」
ダナ「クロムとリンディアは!?」
ディラ「っ? どこにも居ない……。っ!!?」
クロム&リンディア「う、ううう、あああっ!! (ナナシを攻撃する)」
ディラ「きゃあああああっ!?」 ダナ「ぐああっ!?」
コーラ「(走ってきて)ディラ! ダナっ! 発進してええで!」
ディラ「えっ? く、クロム様とリンディア様は!?」
コーラ「っ……。今のがそうや……! ダナ、はようっ!!」
ダナ「あ、ああっ!」
ディラ「クロム様……」
テトラ「発進するよ!!」
ジョーカー「ああ!」
ダーク「……どうしたら良いんだ」
テトラ「(胸が突然痛んで)くっ!? だ、ダーク。メルヴィンが……!」
美しかった森も、水晶宮も、全て。炎に包まれていく。
ジョーカー「嘘だろ。アイゼルも、中央大陸も全部……燃やし尽くす気か」
ダーク「もう終わりだ……。こんなことになるなんて……。俺が軽はずみなことを言って、儀式なんかさせなければ、こんなことにはっ」
テトラ「仲間たちの声が、音が……。どんどん、消えていく……。ライラ……シンラ……」
ジョーカー「っ……」
ダーク「インドランスなら替えがきく」
ジョーカー「は。おい、今のは聞き捨てならねえな」
ダーク「お前だってそう思ってるだろ!」
テトラ「ちょ、待ってよ。こんな時に」
ジョーカー「確かに、同じようなもんならいくらでも作れる。――だがな!」
テトラ「ジョーカー! やめてよ! やめて……。クロムが悪いみたいな言い方はやめてよ!!」
ジョーカー「ッ……くそ」
テトラ「っ……クロム……どうして」
ダーク「アイゼルは、俺が生まれて。骨を埋めるはずの場所だった」
大陸ごと燃え――。城も、何もかも、海に沈んでいく。
ディラ「アイゼル、みんな……! (泣き始めて)……っ。……、いやだ、っ……ボク、何の為にアイゼルの王女になったんだろう」
コーラ、ディラを抱き締めて。
コーラ「ディラ、うちはずっと一緒や。ずっとディラの側におる」
ディラ「っ――。うん……っ」
ダナ「メルヴィン……。他の艦隊も、全部、信号が消えちまった……。騎士団の奴らも、城下の人たちもみんな……。これじゃ助からねえ。クソオっ!!」
クロム『ディラ……たす、けて』
ディラ「……っ!?」
コーラ「ディラ?」
ディラ「クロム様……!」
コーラから離れ。ナナシから出ようとするディラ。
コーラ「っディラ!? どこ行くん!?」
ディラ「行かなきゃ。ダナ! クロム様の所へ!!」
ダナ「っ!? わ、わかった」
コーラ「!? 危険過ぎるわ! ディラ! 何考えとるん!? あれは、」
ディラ「ボクは、何度だってクロム様に助けて貰ってきた! たまにはお役に立たなくちゃ。ボク、アイゼルの王女なんだもん!!」
クロム『コーラ……』
コーラ「ッ――! クロム様?」
クロム『ダナ……』
ダナ「クロム!! 今行く!!」
クロム『ジョーカー……』
ジョーカー「クロム……? ……っ!」
エドガーから出ようとするジョーカー。
テトラ「ちょっ、ちょっと、どこ行く気!?」
ジョーカー「直接黙らす! もう手段を選んでる場合じゃねえ!」
ダーク「もう無駄だ! もう……」
ジョーカー「諦めんのか」
ダーク「もう何も残ってはいない。終わりだ」
ジョーカー「勝手に終わってろ! おいテトラ! 船長命令だ。あの化けモンに近付けろ」
テトラ「い、いやだよ。船体が溶けちゃうよ!」
ジョーカー「すぐに終わらす! 旋回しろ!!」
テトラ「っ……もう。ダークが船長だったら良かったのに」
ジョーカー「思ってもねえこと言ってんじゃねーよ!! さっさと動かせ!」
テトラ「はいはい。まったくもう。しょうがないなあ。ふっ。ふふっ」
ダーク「どうして、笑っていられるんだ……」
テトラ「さあ、どうしてかな。昔ね。希望だけは最後の最後まで持っていろって、姫さんが言っていたから。かな」
クロム『テトラ……』
テトラ「うん……。今行くよ。我が姫君」
クロム『ダーク……』
ダーク「っ!? クロム?」
クロム&リンディア『私はなんてことを……』
ジョーカー「うるせえ。馬鹿。黙って目ぇ伏せてろ」
ディラ「クロム様ぁっ!!」
クロム、ナナシの甲板に出たディラに襲い掛かってくる。
クロム&リンディア『ウ、アアアッ』
ディラ「っ!!」
ディラの身体が白く淡く輝き。ふわっとクロムを包み込む。抱き締め。その光はどこまでも広がり――。炎を鎮めていく。
コーラ「な、なんやっ!?」
ダナ「ディラ!」
ダーク「やっぱりディラには特別な力が……」
クロム「……でぃ、ら」
クロムを優しく抱き止めるディラ。
ディラ「クロム様。悲しみに負けないで」
クロム&リンディア「ごめん、なさ……」
ディラ「(目を閉じ。首を横に振り)……リンディア様。誰も、あなたを責めたりはしません。……ずっと、こんな気持ちを、一人で抱えていたんですね」
リンディア「ディラ……」
ナナシの甲板に降りてくるジョーカーとダーク。ディラに駆け寄り。
ジョーカー「(クロムの頭を抱えて)……ばか」
ダーク「(ディラもクロムも抱き締めて)……リン、ごめんね」
ディラ「下を、見て下さい。……みんな無事です!」
クロムとリンディア、融合が解け、二人に戻る。
騎士たちの判断やインドランスたちの力で。ほとんどの人たちが救助され、助かっている。
ダーク「ライラ! シンラ……!」
テトラ「再起動……。ふふっ。洒落たことしてくれるじゃないか。僕の計測機がイカれてたのかな?」
ダナ「みんな……!」
ディラ「リンディア様。また一から。新しい国を作っていきませんか。ボクも、頑張りますからっ」
リンディア「わ、私は……」
クロム「お姉様。大丈夫ですよ。もう独りではありません」
リンディア「な、名無しのも、一緒がいいっ! です」
クロム「えっ? ふふっ。……はいっ! お姉様、これからは一緒に」
皆微笑み。暖かい気持ちが集まっていることを感じていた。
リンディアを強く抱き締めるクロム。
テトラ「たくさん暴れてスッキリした?」
コーラ「こ、こらっ、テトラ!」
テトラ「何。本当のことでしょ? ね。リンディア。これからは。もっとこっちにおいでよ。僕もね、ずっと君と話したかったんだ」
リンディア「……私も。いつも……。話し、たかった」
皆笑う。
クロム「お姉様。もう遠慮することなんて――」
クロムの腕の中から、リンディアが消えてしまう。
全員「っ!? リンディア(様)!?」(※ジョーカーとダークとダナは「リン」 クロムは「お姉様」)
ディラ「き、消えた……?」
ダーク「リン……!?」
クロム「っ!? な、何か、紙が――(リンディアが居た場所に、茶色い一枚の紙が出現する。それを掴む)?」
クロム「“リンディア女王は預かった。我が冥王星の為、アイゼルを再復興させる訳にはいかない”――!!?」
全員「なっ……!?」
ディラ「リンディア様っ、ど、どっ、どっ、どういうことっ!?」
ジョーカー「ちょっと貸せ! っ!! こ、この刻印!!」
ダナ&ジョーカー「アラジン海賊!!?」
ディラ「あ、あらじん……?」
クロム「ジョーカーと同じ、宇宙海賊です……。ただし、」
テトラ「殺しも犯罪も余裕でやっちゃう。極悪非道な奴らさ」
コーラ「な、なんでっ、なんでアラジン!?」
ジョーカー「“女王を返して欲しければ、ジョーカーとダルダディアの首を差し出せ”……だと」
ダーク「え、お、俺? ……ああ、」
テトラ「何回もドンパチやってるからねえ。いっつもボッコボコにしてやってるから。逆恨みかなぁ」
ダーク&ジョーカー「苛め足りなかったか……」
ダナ「何この双子、怖っ」
コーラ「かっ! (紙を奪う)貸しぃっ! ほ、ほんまや。んんっ!? “P.S ついでに名無しの姫と新しい王女も連れて来い”ぃ!? “俺っちの性奴隷にしてやるエヘヘヘ”……だとぉ!?!」
ダナ&ダーク&ジョーカー「は? 殺す」
コーラ「“一週間以内にこちらに来なければ、リンディア女王を地獄に売ってやる!”やとぉ!? なっ、なっ、なななぁっ……!?」
ディラ「セイドレイってなに?」
ダナ「いけないことだ!!」
ディラ「はっ。そ、そうなんだ! いけないことっ」
クロム「すぐに向かいましょう!」
ジョーカー「待て待て! アラジンの拠点、冥王星までかなり距離がある。お前一度地球に戻れ。長旅になる! どんなにジャンプして時間短縮したって、行って帰ってくるだけでも10日はかかるぞ」
クロム「そっ、そう……ですね」
ジョーカー「心配するな。アラジンは、女子供だけは絶対に殺さねぇ。まだ時間はある。焦るな」
クロム「……ありがとう。……うん。大丈夫です」
ディラ「クロム様、ナナシとエドガー、どちらに乗るんですか?」
クロム「あっ」
ジョーカー「っ……」
テトラ「おいでよ。姫さん」
コーラ「ダーク様はこっちやろ?」
ダーク「そうだね。勿論。お世話になりまっす」
コーラ「ハーイッ」
ダナ「行くのか? クロム。……こっちに来たっていいんだぜ?」
クロム「……ど、どうしよう」
テトラ「ほら。さっさと誘いなよ。ジョーカー」
ジョーカー「っ……い、いや」
テトラ「面倒クサッ! 何今更怖じ気づいてんの」
ジョーカー「違っ。違う」
クロム「あっ!(手を叩いて)」
クロム以外全員「んっ?」
クロム「私、ディラに色々と教えたいことがあるので。ナナシに乗ります!」
ディラ「えっ! わぁーいっ!」
ジョーカー「……」
テトラ「ほらぁ~……。何してんの? 弱っ!」
ジョーカー「ちょっ、き、決めんのはあいつだろ……」
ダーク「宜しくね。クロム。そう言えば、クロムと航海するのって、はじめてだよね。嬉しいな」
クロム「ダーク。ダークは、エドガーに乗って下さい!」
ダーク「えっ?」 ジョーカー&ダナ「ん?」 テトラ「あれ?」 ディラ「ふぇ?」 コーラ「はあ?」
クロム以外全員「何言ってんの(ですか)!?」
クロム「だって。やっと会えた家族なんですよ? 家族は、同じ屋根の下に居るのが、一番です!」
ジョーカー「……待て」
テトラ「なんか心に隙間風が……。なんでだろう。昔みたいに良い感じのパーティになるなーって思った瞬間。急にむさ苦しくなったなー」
ジョーカー「ふざけんなよ。返すっ!!」
ディラ「返品不可でーすっ!」
ジョーカー「ディラ!?」
ディラ「ボクは、クロム様の言うことを聞きますっ! (超笑顔で)ボクは、ダーク様と一緒に10日以上も同じ空間に居るなんてきっと耐えられませんっ!」
ダーク「なんか超笑顔でディラに嫌いです宣告された!?」
ディラ「(超笑顔で)嫌いではありませんっ! ちょっと苦手なだけですっ!」
ダーク「すっげーショック……。だ、ダナ! 俺とお前の仲だろ! なあ、戦友っ! クロムを説得してくれよっ!」
ダナ「悪ィな。お前の席ねぇーから!」
ダーク「ガーン!!」
ダナ「嬉しいねぇ。おかえり、クロム船長」
クロム「えっ!」
ディラ「わぁーいっ! クロム船長っ! また、たくさん勉強させて下さぁいっ!」
コーラ「ふふっ。クロム船長っ! よろしゅうなっ!」
クロム「せ、船長はディラが……」
ディラ「ボクはまだまだっ! 見習いでーすっ!」
クロム「ふふっ。もう……。仕方ないですね。みんな、よろしくっ」
ディラ&ダナ&コーラ「(敬礼して)愛してるっ!! クロム・ロワーツっ!!」
ディラ、コーラ、ダナ、笑いながらナナシの船内へと入っていく。
ダーク「はぁ……。テトラ、報告とか色々したいから。一度下に降ろして貰える?」
ジョーカー「勝手に降りろよ。んで戻ってくんな」
ダーク「はっ!?」
テトラ「ま、まあまあ。ほら。入って入って」
テトラ、ダークの背中を押しながらエドガーの中へ入っていく。
クロム「ジョーカー」
ジョーカー「あ?」
クロム「……ううん。また、向こうで!」
ジョーカー「? ……ああ」
エドガーの中に入っていくジョーカー。
クロム「お姉様……。待っていて下さい。必ず助け出し、アイゼルを……」
ディラ&コーラ『クロム様ーっ!』
クロム「は、はぁーいっ!」
ディラ『一緒にお風呂入りましょーっ!』
クロム「あ、ふふっ。いいですよ」
テトラ『……そ、そんな特権があるんだぁ……』
コーラ『テトラ!? アホっ! いつまで通信かけてきとんねんっ! 切るでっ!』
テトラ『あははっ。はーい。じゃあ、向こうでね』
コーラ『おうっ!』
一陣の風が吹く――。クロムの黒髪が靡く。
はるか彼方、星空を睨みつけるクロム。
クロム「……」
真夜中。ジョーカーの寝床近くに置いてある通信機が光る。ベッドの上であぐらをかき、何枚もの地図を広げながら、酒を飲んでいたジョーカー。その通信を受ける。
クロム「ジョーカー?」
ジョーカー「なんだ、珍しいな。お前からかけてくるなんて」
クロム「たまには。あ、今忙しかったですか?」
ジョーカー「ん、いや。いいよ」
クロム「あのね、」
ジョーカー「何?」
クロム「あ……。う。や、やっぱり、いい。いいです。おやすみなさい」
ジョーカー「んだよ。用があったんだろ?」
クロム「い、いえ。特に用事があったわけじゃ、ないんです」
ジョーカー「そうか?」
クロム「……あの」
ジョーカー「?」
クロム「アイゼルに、戻ったとき。ね」
ジョーカー「うん」
クロム「もう二度と、ジョーカーと話せないかもって、思ったの」
ジョーカー「……」
クロム「だから凄く、……」
ジョーカー「“辛かった”か?」
クロム「……ふふっ」
ジョーカー「なんて、な?」
クロム「――うん。ものすごく辛かった」
ジョーカー「え?」
クロム「私……。ジョーカー。私の強さは、あなたのせい」
ジョーカー「……」
クロム「私の知恵は、テトラが居てくれるから。私の元気は、ディラが笑っていてくれるから。私の、……心をいつも、」
コーラ、ダナと続くのだろう。と思った。
クロム「っ……ごめんなさい。こんな話、つまらないですよね」
ジョーカー「いや。続けろ」
クロム「でも」
ジョーカー「いいから」
クロム「ジョーカー」
ジョーカー「ん」
クロム「いつも、ありがとう……。私の隣に居てくれて。たまに気恥ずかしくなることも、むかつくことも、あるのだけど……」
ジョーカーの寝息が聞こえる。
クロム「ジョーカー? 眠ってしまったんですか?」
返事はない。
クロム「私の心が揺れるのは、いつもあなたのせい」
ジョーカー「……」
クロム「っ……気になるの」
ジョーカー「……」
クロム「変ですね。ダークのことが、すきなのに。……おやすみなさい」
通信を切ろうとするクロム。
ジョーカー「クロム」
クロム「っ――。は、い」
ジョーカー「また明日」
クロム「ふふ。あなたがまた明日って言うと、いつも。その“また明日”は来ないんですよっ?」
ジョーカー「……そうだな」
クロム「そうでしょ? 宇宙を航海していれば、いつだって。予測出来ないことが起こる」
ジョーカー「いや。クロム・ロワーツは、」
クロム「?」
ジョーカー「いつか俺のものになると予測できる」
クロム「確立は?」
ジョーカー「8、いや。9.9999999999999999999999999……」
クロム「ばか」
ジョーカー「……はやく寝ろ」
クロム「ジョーカーが寝たら寝ます」
ジョーカー「クロム」
クロム「はい?」
ジョーカー「俺も、……お前のこと気になってる。ずっと前から」
おわり




