華子は咲かない
画一的。同じメイクに同じ髪型、話題も同じであんな女どもどこがいいのかしら。ああ、わかってますよ、私に浮いた話がないから妬んでるだけですよ。でも不公平だと思いませんか、見た目はそう、お世辞にも美人とも可愛いとも言えないわよ。でもね、ちょっとくらい中身を見てくれてもいいんじゃないの、といっても性格そんなよくないけど。ええ、そうよ、腹立ててるわよ、こんな世の中大嫌い。
こういうの名前負けっていうんだっけ、違ってたらごめんなさい。華子、華のある子よ。どこが、名前に完敗じゃないの。私だって色々と試したんだから口紅塗って美容院に行ってブランドの洋服買って、でもしっくりこない。というか面白くなっちゃう。
綺麗になりたい。
「そんなあなたにぴったりですよ、こうもこの商品のコンセプトに合致したお客様も珍しいですよ。あなたは選ばれた方だ。我々と一緒にこの商品を広めていきましょう」
休日、何の用もなしに街を歩いているとスーツ姿の男女二人組にアンケートに答えてほしいとカフェに連れていかれた。声が小さくてろくに拒否もできずについて行ったら話があらぬ方に進んでいった。
「い、いえ、私は」
私の小さな声にかぶさるように抑揚のついた大声が響く。
「わからない、あなたがこの商品を使わない理由がわからない。断る理由がありますか。あなたもこの商品を売れば綺麗になってさらに儲けることもできる。こんないい話聞いたことないけどなあ」
前半はふわっとした悪口じゃないか。私だってそんなに……。
買ってしまった。美顔器とサプリメント10セット。気づいていた、私騙されてるって気づいてた。でも綺麗になりたいんだもん。売ればいいんでしょ、他の誰かに。ちょっと待って、私友達いないじゃん。
堕ちてしまった、堕ちるとこまで堕ちてしまった。私にさっきのセールスマンのように路上で勧誘なんてできるわけない。もういっそ10セット全部使って綺麗になろう。ん?サプリメントは良いとして美顔器なんて一個で十分だよう……。
私何か悪いことしたっけ。何もしてないよね。みんなよりちょっと顔と性格に難ありだけじゃない。でもどうしてこんなにうまくいかないのだろう。みんなどうしてあんなに楽しそうなんだろう。幸せって平等に分配されているんじゃなかったの。そんなの迷信?心の在り方?いっぱい本読んで実践してみたけど何も変わらないじゃない。
仕事帰り、私はひどく疲れていた。残業していて遅くなってしまった。今日も仕事内容以外の会話を誰ともしなかった。ホームで電車を待っていると憂鬱になってくる。自分ひとり取り残されているようで。電車がやってきて私のドアだけ開かなかったらどうしよう。でも私は何も言えず何の行動もせずその場に突っ立っているだけだろう。視線に気づく。遅い時間のホームには酔っ払いが多い。ちらとみると睨まれた。いや、睨まれたような気がした、「こっち見るなよ、ブス」と言われているような気がした。
私は何のために生きているのか、このままずっと咲かずに一生を終えるのか。だったらいっそ自らの手で。




