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恋愛学園  作者:
1/2

転入

 光恋(こうれん)学園。

 そこは、元々女子高だった。

 たとえ先生だろうと男は絶対に入れない。そんな学園だった。俺が転校してくるまでは。



 俺の家は誰もが知っている名家、帝緋(ていひ)だ。

 なので学校は超有名、西華(せいか)学院だった。あの日までは…

 俺がこの学院に通う理由、それは『婚約者探し』らしい。

 正直いってびっくりした。婚約者なんか昔から決まっていた。なのに何故婚約者なんか探すのか。

 その理由は分からないまま、光恋学園に連れてこられた。



 車を降りると遠巻きに女子からの視線を感じる。

 そんな奴らなど無視して運転席から出てきた執事に言う。

 「(じょう)、ありがとう。しばらく帰れないけど元気でな」

 讓は俺に向かい深々と頭を下げる。

 「(ある)様も体調を崩さないよう、気を付けてください」

 「分かってる」

 俺はうなずき門をくぐった。

 周りの女子たちがキャーキャー騒いでいる。

 うるさい。それがこの学園の第一印象。

 昇降口まで行くと、女の先生が立っていた。見た感じ22歳くらい。髪はストレートで腰まである。顔が幼いので少女という感想を抱く。

 「あなたが帝緋 或くんね」

 「はい」

 先生はにこっと笑う。

 「私は或くんの担任、幾田詩織(いくたしおり)です。よろしくね」

 「よろしくお願いします」

 「これからクラスまで案内するから靴、履き替えてね?」

 そう言い、昇降口に入っていく。

 俺は軽く嘆息する。

 ━これから先、やっていけるのか?



━yui━


 今日は転入生が来るという噂があり、わたしのクラスは騒々しかった。

 いつもならこんなに騒がしくないのだが、転入生が男子だというので余計に騒いでいる。

 でも、わたしは嬉しくない。

 ただでさえ男子が苦手なのに、だから女子高に来たのに、こんなんじゃ意味ない。それに男子って言ったってどうせ、アキバとかにいるオタクみたいな奴に決まっている。

 ふとそんな想像をし、鳥肌がたつ。

 ━男なんか皆、エロいことしか考えてなくていやらしい眼をしているに決まってる。

 そう簡単にまとめ、気を紛らわすように本を開いた。その時。

 教室の扉が開いた。詩織先生が入ってくる。

 「はい、皆さん。今日はうちに転入生が来ました」

 女子の黄色い声が響き渡る。

 わたしは眼を疑った。

 詩織先生の隣には身長は170以上ある男子が立っていた。

 髪は明るい茶色で、眼は空色、超名門校である西華学院の服、そしてなによりわたしの想像を裏付ける程のイケメン。

 ━かっ…かっこいい…!

 わたしは男子のことを隅から隅まで見た。

 完璧すぎる程欠点が見当たらない。

 「それじゃあ、自己紹介してくれる?」

 男子が口を開く。

 「帝緋 或です。よろしくお願いします」

 ━ていひ…ある…くん。

 「皆、仲良くね。…席は…松岡さんの隣が空いてるから、そこに」

 わたしは詩織先生の言葉に瞬時に立ちあがる。

 「待ってください!よりにもよってなんでわたしの隣なんですか!他にも席、空いてるじゃない!!」

 「でも、男の子と仲良くなるチャンスよ」

 詩織先生はわたしが男嫌いだと知っている。だからすごく腹が立った。

 「絶対嫌よ!」

 「でも…」

 「先生」

 詩織先生の声を制するように話し出す或くん。

 「嫌がってるんで止めてあげてください。俺はあの窓際の隅でいいので」

 そう言って微笑む。世間でいう王子スマイルとはこういうことなのかもしれない。

 でもわたしには最悪だった。

 その笑顔を見た瞬間、ひどい吐き気に襲われ、わたしはその場に吐いた。



━iroha━


 由維(ゆい)は吐き、その場に倒れる。

 先生が走っていき、声をかけていた。

 私は由維をかわいそうに思った。少しだけ。

 男子が嫌いで女子高に来たのに、転入生が男子なんてそりゃショックもでかいだろう。

 帝緋の方を向くと、眼を見開きその場に立っている。状況が読めないのだろう。

 ━驚いてるな、相当。

 私はゆっくりと立ち上がり黒板のある方に歩いていく。

 「帝緋くん」

 「あっ…」

 少し動揺したように周りをキョロキョロする。

 「私の名前は篠崎(しのさぎ)イロハ。あの子のことは心配しなくても平気、男子の笑顔を見るといつも吐いちゃうの」

 「そう…なんだ」

 「えぇ。まぁ、あなたは悪くはないわ」

 帝緋くんはそれでも心配そうな顔をしている。

 ━悪い子ではなさそう。

 私はそう判断した。イケメンでしかも優しい、これはモテるなと思った。



━aru━


 イロハちゃんが“あなたは悪くない”といってくれたけど、俺が悪い気がした。

 でも、由維ちゃんが男嫌いだと知らなかったので、悪くない気もする。

 「謝った方がいいのかな…?」

 「話しかけない方がいいわ。多分話しかけたらすぐに気分悪くするから」

 俺は苦笑いをする。

 「だよね」

 ━先が心配になってきた。

 小さくため息を()く。

 「ため息ついてるとこもかっこいい!」

 聞きなれない声に俺は振り向く。

 そこには背丈150あるかないかの女の子がいた。髪の毛がふわふわしていて、桜色の眼をしていた。

 ━かわいいな…

 そんなことを考えていると女の子は俺の腕にしがみついてきた。

 「えっ…!」

 突然のことに驚く。

 「こら、離れなさい!」

 イロハちゃんが追い払おうとするがそれをするたび女の子は俺にしがみつく。逆効果だった。

 「離れなさいって!美帆(みほ)!」

 「やだもん!みほ、アルくん好きになっちゃった」

 さらっとすごいことを言われた。

 ━聞き間違いじゃなければ今、“好き”って言わなかった?

 「えっと…あ」

 「或くん!」

 話そうとした時、詩織先生の声に遮られた。

 「なっ…なんですか!?」

 咄嗟に返事をしたので、変な声になった。

 「私、由維ちゃんのこと運べないから、保健室まで運んでもらってもいいかしら?」

 先生の言ってる意味が分からなかった。だって保健室(・・・)まで運んで(・・・)って…

 「お願い!」

 あまりに必死に頼むのでしょうがなく引き受けた。


 でもこの時から俺は、少女たちの闘いに巻き込まれるようになる。

恋の花をゆっくり咲かせていきたいと思います。

よかったら最後までお付き合いください。

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