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若さが作り出した 【明日、君がいない】 いつ観るべき?

登場 

シリーズ「みんな欠けている」

【アダプティッドチャイルドは荒野を目指す】

第14話  幸せの絆

第22話  友だちのいる孤独 

14話で映画を観る約束をして、22話で鑑賞

挿絵(By みてみん)


 星野秀明が月見里百合子を初めて映画に誘った作品として登場。

 二人っきりという状況が恥ずかしく友人の鈴木薫を誘う事になり、三人の不思議な友情が始まる切っ掛けになるイベントともなっています。この映画をあえてこの三人に見せることにしたのは、この映画現役高校生が見たら、何を感じ想うんだろうか? と思ったからです。


 物語の中においては、三人はショックをうけ動揺し、この映画の話題はその後三人で話すことも避けてしまいます。

 何故三人がそこまで、この映画に過剰に反応してしまったのか?  


 この映画、脚本も映像もよく、また若い役者達の演技もリアルで素晴らしいのですが、私は映画そのものだけでなく作られた背景にも注目すべき作品だと思っています。

 この作品を作ったのは、当時十九歳のムラーリ・K・タル監督。自分の体験を元に、ガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』を参考に作ったという作品です。

 そのこともあり、『明日、君がいない』と『エレファント』はよく比べて論じられます。

 この二つの物語の共通点は、高校生の日常風景を、ある事件が起こる一日を限定的に描いた物語。そしてドチラもありきたりの日常風景が、その事件が起こる時間向かって進行する様子を淡々としたタッチで描かれているという事。

 よく似ていると言われる二つの映画は、観てみると面白いほど印象が違います。

 『エレファント』で起こる事件が、高校生による校内の銃乱射事件で、『明日、君がいない』はある一生徒の自殺、ということで事件そのものが持つインパクト違うというからというのではなく、その印象の違いは映画を製作した監督の年齢の違いが、映画そのものの印象を大きく変えています。

 同じ高校生を描くにしても、ガス・ヴァン・サント監督は大人の一歩引いた視線で冷静に子供を描いていて、ガス・ヴァン・サント監督は若い視点でそこに近しい存在として意識して描いています。


 ドチラが素晴らしく、ドチラが劣っているというのではなく、それぞれの年齢だからこそ描けるそれぞれの感覚の世界というのを表現しています。そういった事情もあり是非二つの映画を一緒に観て、その違いを感じてもらいたいです。その方がそれぞれのテーマをより感じることができます。


 話を戻して、私の描いた物語の中で何故、過剰に反応してしまったのか?この映画を観た三人は言葉をなくし、一人は動揺し、一人は黙り込み、一人は声殺して泣くといった反応をします。 

 『明日、君がいない』の映画の怖いところは、何も特別な事を描いていないという所にあるからです。

 出てくる登場人物は、個性はあるものの特別な子供達ではなく、恐らくはどの高校にもいそうな子供。誰もが悩みを抱え苦しんで、登場人物の誰が自殺してもオカシクないと思われる所があります。

 無邪気に生きているようで、自分の事で精一杯で周りを見ずに一人で悩み苦しんでいる子供達を観ながら、映画の冒頭で自殺した生徒は誰なんだろうか? というのを観客は意識しながら映画を観ていくことになります。 最後、登場人物の一人が、泣きながら自殺してしまうのですが、観た人は、『ああ、やはりこの子だったのね』とは思わず、『この子が偶々この心の飽和量を超えてしまっただけ』と思うはずです。

 つまり誰もが、そして自分自身も、ふとしたキッカケで自殺という選択をしてしまう事が有り得るいう事実に気が付かされてしまいます。


 多分、映画の登場人物に近い年齢の子供ほど、この物語感情移入も出来て世界に入れるのでしょう。それだけに私はこの作品、高校という年齢の時には観なくて良かったと考えてしまいました。

 多分、悩みを抱えている子供ほど、心に響きすぎて見るのはキツイ内容かもしれません。でも、悩んでいるのは自分だけでなく皆もこうやって頑張って生きているんだよというのも教えてくれる内容でもあるので、観てもらいたい気もしますし、悩ましい所です。


 若いからこそ青く瑞々しく作られたこの映画、そして若いからこそより深く感じる事ができる世界。年齢と作品との関係ってなかなか興味深い所ありますよね。でも何か深く抱えてしまっている人は見ないで下さい。

明日、君がいない(2:37)

 2006年 オーストラリア映画

監督:ムラーリ・K・タルリ

キャスト:テリーサ・パーマー

ジョエル・マッケンジー

クレメンティーヌ・メラー

チャールズ・ベアード

サム・ハリス

フランク・スウィート

マルニ・スパイレイン

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