~曲者監督の企みについていけるか?~ 【隠された記憶】
登場
シリーズ「短距離恋愛」
【伸ばした手のチョット先にある、お月様】 第4部 オーバー・ザ・ムーン
黒沢明彦が、月見里百合子のブログを訪れたときに読んだ記事がこの映画についてでした。
曲者監督ミヒャエル・ハネケの作品らしく、かなり特異な映画となっています。
カンヌ国際映画祭で監督賞、国際批評家賞、人道賞の3部門を受賞した映画に関わらず、配給会社が二の足を踏み、日本でも渋谷の一劇場でのみ公開された作品です。
ミヒャエル・ハネケ監督という方は、元々強烈な映画を作る監督さんで、いつも色んな意味で試験的な試みを映画においてやってしまう方なのです。
この映画においては、HDビデオを使って撮影したとか、映画音楽をまったく使用していない事そういう情報がググったら出てきますが、それ以上にこの作品の映画としてあり得ない試みは、『物語を態と破綻させている』という所にあります。(態と破綻させるというのは。ハケネ監督の得意とする所ですが)
そして観客に対してかなり説明が足りない不親切な映画で、それに耐えて観るという事を強要してきます。また、ミステリーであるのに答えを明確に示していません。
人によっては、最初の五分くらいある『ある民家をただ固定したカメラで延々と撮し続けているだけで何も起こらないというシーン』で、観るのを止めてしまうかもしれません。現実のシーン、ビデオで盗撮された映像、主人公の夢とか過去のシーンといった要素の映像をごっちゃに同じトーンで映像をみせていくので、観ていて混乱していきます。
配給会社は『ラストカットに全世界が驚愕 真実の瞬間を見逃してはいけない』と、スタッフスクロールの後に出てくるシーンに、重要な要素が隠されている事を教えてくれましたが、それも『ウォーリーを探せ』の絵本並に集中力をもって画面を見ないと、重要ポイントに気付けない状況です。
ブログなどの感想を読んでまわっても、『ラストシーンに何があったの?』 と観たのに関わらず気付けなかった人もいるくらいです。私の映画ブログにも検索で来る人の多かった作品です。
何故、こんな映画が傑作も言われているのかというと、やはり映画全体に何ともいえないパワーあるのですよね。この無茶苦茶混乱させる映画そのものが、主人公の精神状態を見事に表現していて、観た人は生々しくその主人公陥る疚しい気持ちを体感することが出来ます。
観るのにかなりの集中力を必要とし観てかなり疲れるのですが、なんか惹き付けられるそんな魅力のある映画です。
この作品を、駄作とか観る価値ないとか言う人も多いのは事実。万人にはお勧めできませんが、興味ある方はどうぞ。
簡単に物語を紹介しますと「地位もあり素敵な家族もある恵まれた人生をおくる男が、脅迫ビデオを受け取ることで、過去にある疚しい出来事に苛まれていく」という物語です。疚しさを抱えている加害者というのは、実は被害者以上に苦悩を抱えるものなのですよね。そこを理解すれば、この映画は最後まで観ることができるし、描かれているテーマにも共感できると思います。
(仏題:Caché,英題:Hidden)
監督 ミヒャエル・ハネケ
製作総指揮 マルガレート・メネゴス
ミヒャエル・カッツ
製作 ファイト・ハイドゥシュカ
脚本 ミヒャエル・ハネケ
出演者 ジュリエット・ビノシュ
ダニエル・オートゥイユ
公開 2005年10月5日
2006年4月29日
上映時間 117分
製作国 フランス・オーストリア・イタリア・ドイツ
言語 フランス語




