05 国王目線
男爵の娘、エミリーを初めて見たとき、何故か胸がときめいた。初めてだ。王妃以外に・・・
だが、エミリー以外に目を向けないとずっと意地を張り続けたのだ。
だから心奪われた所など見せない。そう思ったが、男爵の娘で実家から連れてきた侍女もいない身の上。優しくしてやろう。
そうだよな。あまりに回りがエミリーを否定するから意固地になっただけだ。
跡取りは大事だからな。
エミリーは名前をデイジーと決めたらしい。デイジー・ガルシア。銀灰妃
デイジーと言う名前を知らぬものはいない。子供向きの絵本に描かれた魔女の名前だ。子供をさらって食べようと奮闘する魔女。
だが、すぐに失敗して池に落ちて魚につつかれたり、泥にまみれたり、階段から落ちたりする。
それでも懲りずに子供を食べようと追いかける間抜けな魔女の名前だ。
デイジードイジーなんて言われている。その名前だ。
何故、そんな名前にしたんだ?
銀灰宮の侍女がそれとなく教えてくれた。
「誰もが知ってる名前だから、この名前をつけると頑なで・・・お諌めしたのですが」
なるほど・・・本人が望むなら・・・この名前で呼んでやる。
ふん、やはり女は王妃のエミリーが一番だ。
さて、今日は医師に言われた妊娠しやすい日だ。
いつものように、早めの夕食を一緒に取り二人で部屋にこもる。それから真夜中過ぎにわたしは、最愛のエミリーのもとへ帰る。名残惜しいが身の程を知らせるいい方法だ。
一度デイジーが、なにを勘違いしたのか、泊まって行ってくれと言って来た。
無言で帰ろうと思ったが
「思い上がるな」と言ってやった。以来デイジーはなにも言わなくなった。
わたしは毎回
「元気にしていると聞いている。なによりだ」と話を始める。すると
「おかげさまで」と返事が返って来る。
「家族も会いに来ているそうだな」と続けると
「はい」と返事が来る。
そのあとは会話は要らない。手早くことをすますとエミリーのもとへ帰る。
こういった夜はおよそ月に一度、二・三日続いた。
そして、婚姻してそろそろ半年になる頃、デイジーは懐妊した。
宰相があからさまに胸をなで下ろしている。
わたしと王妃は幼馴染で十歳のとき、婚約した。婚約後、王妃は流行り病にかかった。十何年おきに流行るこの病にかかった少女は子供を産めなくなる。
それでこの婚約は解消するように両家の親、時の宰相などが進めた。
「エミリー様こそがお辛い立場になるのですよ」
「世継ぎは大切です。後継者争いが起きたら国民も困ります」
「わたくしが身を引くのが一番いいのです。お願いです。わたくしは修道院にはいります」とエミリーも解消を願ったが、わたしはエミリーを離さなかった。
今にして見ればわたしも意地を張りすぎていた。舐められまいと、侮られまいと肩に力が入りすぎていた。若くして即位したのだ。無理もなかった。
叔父が気を使ってくれるのも、素直に受けられなかった。
「ちゃんと将来を考えているのですか?」誰もがこう言ってわたしを非難した。
「三年たったら、第二妃を迎えるのであれば」と妥協案が出されわたしは承知した。そして紫の目の持ち主を迎える。絶対にその女を愛することはないと宣言した上で。
国民に祝われた結婚式からすぐに貴族は次々に結婚していった。紫の目の条件はどうしようもなかったからだ。
そして、四年たった時、貴族とは名ばかりの男爵家の娘が、第二妃となった。
そのデイジーが妊娠して、わたしはほっとした。後継がとりあえず出来たのだ。
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