26 後悔
知らせを受けた瞬間、胸の奥が凍りついた。
孫が、狼に食い殺された。
言葉として理解するより先に、あの光景が脳裏に浮かんだ。
あの時の土の匂い。馬のいななき。嘲る笑い声。
こわれた馬車。
思い出した?
いや、違う。
忘れたことなど、一度もない。
わたしは、あの日、そこにいた。
ネズミだと、彼らを馬鹿にした貴族の一人だった。
スコットとは友人だった。
学院では席を並べ、酒を飲み、愚痴を言い合った。
彼の境遇を、気の毒だと思っていたのも本当だ。
娘が生まれたと聞いたときは、祝いまで贈った。
その娘が、やがて第二妃になった。
その知らせを聞いたとき、胸に湧いたものを、わたしは否定できない。
妬ましかった。
羨ましかった。
だからだ。
あの場で、流れに乗った。
笑った。
一緒になって、罵倒した。
冗談のつもりだった。
軽い言葉の応酬だと、自分に言い聞かせた。
だが、その直後に起きた事故。
狼。
混乱。
死。
事故だと、公式にはそう処理された。
だが、信じられなかった。
あまりにも都合が良すぎる。彼らは殺されたのだ。
そして、王子たちだ。
彼らの視線。
沈黙。
あの出来事を、忘れていないと示す、あの不気味な気配。
あの場にいた者たちは、皆、気づいていた。
だから震えあがった。
いつか、来ると。
そして、今回だ。
狼に食い殺された孫。
血の知らせが、過去と現在を一気につなげた。
逃げ場はない。
これは偶然ではない。
事故でもない。
因果が、回ってきただけだ。
わたしは椅子に座ったまま、動けなかった。
悔やんでも遅い。
言い訳も、祈りも、もう通じない。
あの日、口を閉ざしていれば。
あの日、笑わなければ。
そんな考えが、頭を埋め尽くす。
だが、現実は一つだ。
失った命は戻らない。
そして、次は……
わたしは、ただ絶望の中で、息をするしかなかった。
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