19 叔父の登場
侍女長がその男を迎えると、王妃が立ち上がった。
「銀灰妃。今日はあなたにお客様よ」と大げさに手で男を指さした。
男はわたしに頭を下げた。
「ご立派になられて」
わたしは反応せずに黙って男を見た。
「わからないわね」と王妃は笑うと
「あなたの叔父様よ」と言った。
そうか、思い出した。叔父だ。この人には迷惑をかけられたんだ。
怒りで体が震えた。声が出なかった。
「この人がお母様の叔父様?」とアレクの声がした。
「お母様に叔父様がいたんだ」とウィリアムが笑うと
「へーーえぇ叔父様。一家が皆殺しじゃなかったんだね」とマイクが言った。
「子供は容赦ないですな」とゴードン伯爵の声がした。
「エミリー子供の頃は膝に座らせてあやしたものだ」と叔父が笑った。
この叔父のせいでわたしは、こんな所にいるんだ。
「お母様の叔父様ですね。お母様の家族のことを教えて下さい。お母様が子供の頃のことも」とアレクが叔父に話しかけている。
「叔父様、お母様の力になってあげて下さい」とマイクも話しかけている。
[ママ、怒らないでよ。こいつ使おうよ]
[マイクの言う通りだ。こいつ使えるよ]
[ママと血の匂いが似ている。そこはいいなぁ]
「おや、ウィリアムもこの人が気に入ったのか?」とアレクがウィリアムに言うと
「はい、兄上」とウィリアムが可愛く笑って答えた。
子供たちは、優秀さと仲の良さを出席者たちに見せつけた。
「マイクはすごい。いつも教師が褒めます。わたしが理解出来ない所もすぐに理解できます」とアレクが言えば
「わたしは兄上を見ているから要領がいいだけです。そこから発展させるのは兄上ですよ」とマイクが言うと
「兄上。僕・・・いやわたしは」とウィリアムがアレクにしがみついた。
「ウィリアムの年にわたしが出来てないことを簡単にやってるよ。楽しみだね」と言うと
「ジョシーお母様、聞きましたか?」とジョシーを見て、それから王妃へ駆け寄ると
「お母様ーーー」と膝にすがりついた。
王妃はウィリアムの髪を指でくしけずると、抱きしめた。ウィリアムも王妃を抱きしめた。
マイクがそれを切なげに見ていると、アレクがマイクの手を慰めるように握った。
やがて、国王が侍従に促されて
「わたしはそろそろ時間だ。今日はジョシーの為にご苦労だった。礼を言う」と去って行った。
するとアレクが
「それではわたしたちもこれで、失礼します。お母様の叔父様。少しお話しませんか?」と叔父を誘い、マイクとウィリアムも一緒に去って行った。
すると王妃が一転して意地悪な顔になると
「ジョシー。卑しい侍女が出世したものね」と言い出した。
「それは」とゴードン伯爵が言いかけた。
その時、王妃の足元で寝転んでいたトーマが、起き上がると、王妃の膝に飛び乗りそこから、もう一度飛び上がると、王妃の頭に飛び乗った。
「ギャー」と王妃が悲鳴をあげた。
トーマの後ろ脚に王妃の髪がひっかかっていた。トーマは「フギャー」と言うと一目散に走って行った。
王妃の様子は・・・様子は・・・笑うのを堪えた。
薄い髪がそそけだし、なぜか右頬に爪で引っかいた傷があった。傷から血が膨らんで溢れると王妃の胸に落ちた。
マイクったら本当に・・・
「お姉さま。酷い。これは・・・あの猫ったら」とイサドラ様が大声を出した。
「すぐに医者を!お姉さま・・・いえ、王妃殿下!こんな酷い」と騒ぐイサドラ様は騒ぎ、ゴードン伯爵は、上着を脱ぐと王妃に被せた。
ここでわたしも失礼して銀灰宮に戻った。
それから騒ぎが起こった。パトリシアが起こした。
同じ内容の勉強は無理だとしても、一緒にいたいとウィリアムが言った。それをアレクが承知して、銀灰宮に三人が揃い、教師もやって来た。
同じ部屋で勉強して、休み時間に教師も交えて四人で、お茶をしている時、パトリシアが王妃からだとお菓子を持って来た。
お菓子を侍女が受け取った時、パトリシアが短剣を落とした。
侍女が悲鳴を上げて護衛が、パトリシアを取り押さえたようだ。と言うのもわたしが駆けつけた時、パトリシアは取り押さえられていたのだ。
「殿下が・・・殿下に命令されて」と言うようなことを繰り返し言っていた。
子供たちは、短剣が落ちた瞬間、テーブルを離れたと聞いた。
なんとマイクは、小さな体でアレクを守るように動き、アレクはウィリアムを庇うように動いたと、護衛から聞いた。
安全な国王の所へ行くように言ったが
「お母様を残していけません。しばらく三人でお母様を守ります」と言いはったので、三人はここでしばらく過ごすことになった。
パトリシアは
「王妃に命令された」と言いつけたようだが、信用してもらえなかったようだ。
結局、強引に聞き出した所に寄ると、昔同僚だったジョシーが第三妃になり、子供を生んだことを妬んでウィリアムを殺そうとしたとか・・・
パトリシアは毒杯で死んだと聞いた。なにも感じない自分に驚いた。
パトリシアの騒ぎに紛れていたけど、王妃は自分の身なりの整え方が悪いと、侍女の顔に傷をつけて追い出したらしい。
そしてトーマを、恐ろしい猫にしたのはジョシーだと言って、罰を与えると言ったそうだが、ジョシーは、一応第三妃だからと止められて、ずっと一緒にいた侍女長を、責めているらしい。給金を差し止めているとか。
トーマは国王の所で、ぬくぬくと暮らしているとか言われているが、うちによくやって来る。それどころか、最近は手下の猫を連れている。
[ママ、こいつらは、よく言うことを聞く。なによりあちこちの内緒話を、よく聞いているんだ。ママ、もうすぐだからね]
わたしの血を舐めながらトーマは教えてくれた。
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