16 ジョシーとウィリアム
サンダース侯爵目線
なぜか、国王は上の娘のエミリーと仲がいい。それはいいのだが、エミリーは子供が産めない。
だから、周囲はエミリーとの結婚に反対した。わたしだって反対した。国王の叔父のガルシーナ公爵閣下も、諦めるように何度も言ったが、王は承知しなかった。
わたしとしても、いくら寵愛があっても孫がいないのでは意味がない。だからエミリーを修道院に入れて、下の娘のイサドラを王に近づけた。
だが、王は修道院に乗り込んでエミリーを取り返した。
これにはわたしも驚いた。修道院に入れるだけでなく殺しておくべきだったのだ。
そして第二妃を娶る約束をして王はエミリーと結婚した。
貴族はすぐにその約束の娘、紫の目の娘を探したが、なんと宰相が見つけてしまった。
話を聞いてすぐに娘を養女にしようと手を打ったが、王の意を受けた宰相が全ての話を蹴った。
第二妃はすぐに妊娠して、おあつらえ向きに彼女の家族が事故で死んでしまった。
ちょうど良かった。下手に知恵を付けられて外戚として利用されたら厄介だった。
生まれた子供を一目見た王がその子を取り上げて王妃の子として育て始めた。
わたしも後ろ盾としてお披露目をやった。この子の祖父としての未来は明るかった。
それがどういうことなのか?奇跡が起きてエミリーが妊娠した。
生まれた子供は白銀の髪に紫の目をしていた。
その色彩の皮肉におもわず天を仰いだが、間違いなくわたしの血を引いた孫だ。
この子を王位につける。わたしはそう決心した。
エミリーは妊娠、出産ですっかり容姿が衰えてしまい、侍女の管理も出来なくなった。それで、お手つきが出てしまった。
それならと、しっかり者で自慢の娘のイサドラを、侍女として仕えさせた。
お手つきの娘が生んだ赤ん坊を、エミリーが気に入って自分で育て始めた。
私の血を引くマイクはイサドラが育てている。この娘を王妃の宮におくっていてよかった。
少しずつ憂いの種の排除をしないと、マイクの即位の妨げになる。
わたしはアレクが、マイクの手を引いて歩いていく後ろ姿を、見ながらアレクを排除するにはどうすれば良いかと、今日も考える。
◇◆◇◆◇
ジョシーは、半年後、やっと歩けるようになった。侍女長はウィリアムが王妃の元に行ってしまうと来なくなった。
「わたくしはお子様のためにそばにおりました」別れる時にそう言って去って行った。
「侍女長様に従います」と言って侍女も去って行った。
その後は見かねた銀灰妃が、侍女を貸してくれたおかげでなんとか生活できた。
そして半年後、ジョシーは侍女のヴァレリーに、助けて貰いながら王妃の所へやって来た。
ウィルヘルムは乳母に抱かれて、ご機嫌で笑っていてジョシーにも微笑みかけた。
「ウィルヘルムのお世話をありがとうございます。今後はわたくしが育てます」とジョシーが言うと
「あら、この子はわたしのもとで育つ方が幸せだわ。侍女が母親なんて可哀想」
と王妃が答えた。
そこへ、サンダース侯爵とアレクとマイクがやって来た。侯爵はしっかりとマイクと手をつないでいた。
サンダース侯爵はこう言った。
「ジョシーとやら、自分の生んだ子が王妃に大事にされているのを何故喜ばないのか?本当なら、おまえは殺されても文句を言えないぞ。子供も闇に葬られても仕方ないのに、それを生かしてやってるんだ」
「ジョシーまた侍女として働かせてあげるわよ」と王妃が笑った。
ゴードン伯爵の猛抗議でジョシーは、愛妾とされた。お情けで愛がついているが妾。それもただ一度のお手つきだった。
ただ、ウィリアムの生母が、ジョシーと言うことは公にされた。これにはサンダース侯爵の意が働いていた。
ジョシーは王妃の元へ通ったが、ウィリアムに合わせて貰えず、肩を落として帰る日々が続いた。
時折、銀灰妃の所で悔しさを訴えた。
「わかるわよ。アレクはわたしの生んだ子よ。もしかして忘れてた?子を奪われたのはわたしもよ」と銀灰妃はジョシーに言った。ジョシーは、銀灰妃の目でじっと見つめられた。
ウィリアムの一歳の誕生日のお披露目が、開催された。
銀灰妃が会場に現れると、マイクの手を引いたアレクが、勢いよく走ってやって来た。
「お母様」とアレクが言うと、マイクも
「お母様」と言った。
「こら、マイク。おまえは銀灰妃様と言うんだ」とアレクが言うと
「えぇ、アレク兄様だけお母様と言うなんてずるいです」
「ずるくない。知っておるであろう。おまえのお母様は王妃殿下だろ。マイク」
「知ってます。だけど僕もお母様と呼びたい」
「まぁまぁお二人とも、王妃殿下のお子でありますよ」と銀灰妃は言った。
[二人とも大きくなりましたね]
[お母様、王妃の顔見て!笑える]
[お母様、会いたかった]
[ママ、僕泣くからね]とウィリアムは言うと
「うわーーん」と泣き出した。
「大変。お母様を独り占めするからウィリアムが泣き出した。お母様。抱いてあげて」とアレクとマイクは銀灰妃の手を引くと、中央を横切って正面のウィリアムの所へ、銀灰妃を連れて行った。
ウィリアムは泣きながら手を伸ばす。乳母はオロオロして王妃を見るだけだった。
王妃も、サンダース侯爵も国王も魅入られたように、銀灰妃デイジーとウィリアムを見ていた。
「もう、なに意地悪してるんだよ。ウィリアムが泣いてるじゃないか。かわいそうだだろ?」とアレクが乳母に言った。
それで乳母は、ウィリアムを銀灰妃に差し出した。銀灰妃の腕に移ったウィリアムは、しっかりとしがみついた。
アレクとマイクは背伸びをしてウィリアムをのぞきこむと
「よかったねぇ、お母様にだっこされて」「ほんとのお母様だよ」「安心したね」などと言って回りを戸惑わせた。
[お母様、あいつらの顔面白い!]
[あいつら、殺し合いをさせるんだ!]
[ウィリアムは凄いなぁ]
[いっぱい甘えていいのよ]
[よかったなぁ]
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