14 黒い髪、青い目のウィリアム
「元気にしていると聞いている。なによりだ」と国王が言うといつもの夜が始まった。
夜、国王が戻ろうとすると猫の鳴き声が聞こえた。
侍女長とジョシーが外に立っていた。
「これ、そちらへ行ってはなりません」と侍女長が猫に言った。
「ニャー」
「陛下、よろしければジョシー様の所へ寄って下さい」と侍女長の声がした。
「ニャーン」
「トーマも誘っています」とジョシーの媚びた声がした。
「トーマ。王妃の所には戻らないのか?」と国王は猫のトーマに話しかけた。
「はい、いつのまにか居ついてしまいました。慰めてくれる優しい子です」とジョシーが答えた。
「そうか、可愛がっておるのか。それはいいが銀灰妃に迷惑をかけないようにな」
そう言うと王は去って言った。
「ニャーニャ」と猫が鳴いた。
それからは、銀灰宮へ王が来る度にジョシーは姿を見せた。
ある夜、目立ってきた腹を見て王が尋ねた。
「いつ、生まれるのか?」
「はい、もうすぐでございます。陛下おなかの赤子に声をかけて差し上げて下さいませ」とジョシーが涙を零しながら言うと
「そうだな」と王は答えた。
「どうぞ、こちらへ」とジョシーが誘った。
足元にいつのまにかトーマが来ていて
「ニャーーニャーン」と鳴いた。
トーマは、こっそり遊びに来れるようになった。猫の体に馴染んだからだそうだ。
[ママ、猫の体だと話せるようになったよ]
[良かったわね]
[うん、やっと。兄様たちがママのことを教えてくれていた。あいつの腹のなかではまだ話が出来ないんだ]
[大丈夫よ]と答えながらわたしは猫を膝に乗せて頭を撫でた。
[ママ、ジョシーに嫌がらせをしてるよ。お腹をどんどん蹴ってるの]
[まぁ、それは大変]
[ママ、あの・・・血を少し飲みたい]
[血?]
[だってね、ママとはちょっとだけだったから]
[そうだわね。待ってね]と言うとわたしはナイフを取り出して指先を少し切った。
トーマはペロペロと血を舐めた。
[ありがとう]
[うん、遠慮しないでまた言ってね。ほんとよ]
[はい、ママ・・・好き]
わたしはそれから、しばらくトーマの頭を撫で続けた。
◇◇◇◇
その頃、ジョシーの実家のブラウン伯爵家に客が来ていた。
ゴードン伯爵と言う。彼はその領地に有望な鉱山を持っていて資産家として知られている。
ジョシーの妊娠を聞きつけて彼は、密かに持っていた野心が、再び育ち始めたのを感じた。
見つけて養女にすればいいのだから、彼も紫の目の娘を探したのだ。だが、娘は見つけられず銀灰妃が誕生したのだ。
だが、今回は既に腹に子がいる。順番は違うが、妃に出来る。妃の父親になれるのだ。
銀灰宮のジョシーの所に客が来た。
ジョシーの父親のブラウン伯爵とその友人と称するゴードン伯爵だ。
知らせを受けていたジョシーは、客を歓迎した。侍女長もやって来て大げさに二人を迎えた。
ゴードン伯爵はジョシーを養女に迎えることにしたのだ。
ブラウン伯爵がジョシーをゴードン伯爵に紹介してこう言った
「この娘がジョシーです。少し世間を見たいと言うので、いい経験になるならと侍女に出したら思いがけず王妃殿下に気に入られ、そこで陛下と心が通じて懐妊しました」
「なるほど、世慣れない感じがお目に止まったのですね。微力ながら、お手伝い致します。田舎者ですが、幸い財力はあります。頼りにして下さい」とゴードン伯爵が答えた。
わざとらしくお腹をさすっていたジョシーは、書類に署名をした。
「お義父様、お気をつけて」とジョシーは笑顔で見送った。
それから、ジョシーの元にはゴードン伯爵が何度か贈り物を持ってやって来た。
庭にあずまやが出来て、豪華な椅子が置かれた。
お土産のお菓子のおすそわけが銀灰妃のもとに届けられた。
ジョシーの陣痛が始まった。医師が呼ばれた。
四日後の朝、生まれたのは、黒髪に青い目の男の子だった。
弱って意識を失っているジョシーを王妃が見舞った。
「この子だわ。この子よ。 そっくりの子供。わたしの子はこの子よ」
王妃はそう言うと子供を抱き上げた。
そしてさっさと部屋を出て行った。
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