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黒と青、金と青、銀と紫  作者: 朝山 みどり


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13/13

13 ジョシー

 王妃の侍女が懐妊した。相手は国王だった。

 王妃はその侍女、ジョシーをひざまずかせて、叱責していた。

「おまえは、恩を仇で返すのね」

「いいえ、そのつもりはありませんでした。陛下の思し召しを断れなかっただけです」

 王妃は薄くなった髪はつけ毛で補い、濃い化粧をするようになり奥歯が抜けたため頬がこけている。その王妃が歪んだ口で言った。

「そう、わたくしへの恩は忘れていないのね」


 ジョシーはその顔を見て恐怖したが

「はい、殿下への恩は忘れておりません」と答えた。

「わかりました。わたくしは宮廷の混乱を避けねばなりません。そうですね、ジョシーおまえは、玄関の石畳でひざまずいて、わたくしへの恩を返しなさい」

「え?」

 王妃は微笑んで言った。

「出来るわよね。たかがひざまずくだけよ。罰にもならない」

 ジョシーは立ち上がったが、膝の痛みによろめいた。

「あら、随分、か弱くていらっしゃること」と王妃のあざけりの声を後ろに聞きながら、ジョシーは外に出た。


 夏の日盛りの午後、ジョシーは石畳にひざまずいた。


 暑さで汗が出る。ひざが痛い。のどが乾くが水は与えてもらえない。いつのまにか、ジョシーは石畳に座り込んでいた。


「あら、ひざまずくことも出来ないのね」と王妃が冷たい果実水を飲みながら言うのを聞いて侍女たちは、返事も出来ずに下を向いていた。


 誰が知らせたのだろうか?宰相が医者と共に駆けつけて来た。


 医者が朦朧としているジョシーに水を飲ませていると、王妃が出て来た。


「なにをしているのですか?許可なくここに入るなんて」と言う怒りの声を無視して宰相は言った。


「陛下のお子になにかあったらどうするのですか?」

「陛下のお子? 相手が誰かなんてわかりませんわ」と王妃は思いがけない宰相の語気の荒さに釣られたのか、いつもと違う強い口調で答えた。


「生まれたらわかります。それまでは陛下のお子として扱います。宮廷の不文律をご存知ないとは言わせませんよ。お子様は血筋としては王妃殿下より上でらっしゃいます」

「違います。駄犬が孕んだだけです」


 二人が言い争っている間に、ジョシーは馬車に運び込まれた。

 知らせを聞いた国王はジョシーを見舞った、確かに身に覚えはあるのだ。それだけで懐妊したことは、嬉しくもあったが、王妃エミリーに対して申し訳ないと思っていたので、すぐに王妃のもとへ向かった。その国王の態度はジョシーを失望させた。


 医局で過ごしたジョシーは後遺症もなく回復した。

 出産まで実家に帰る許可が出たが、ジョシーはそれを拒否してこう言った。


「しばらく銀灰宮殿に置いて頂きたいです。片隅でいいんです。陛下のお姿を影から見ることも出来ますし」


 宰相は銀灰宮に来るとジョシーの言葉を伝えた。


「いいですよ。場所を提供すればいいのですね」


 銀灰妃は、無表情にあっさりと答えた。


 ジョシーは銀灰宮の反対側に引っ越してきた。侍女長はあからさまに側妃扱いして侍女も多くつけた。


 ジョシーが引っ越した同じ頃、王妃宮に新しい侍女がやって来た。

 イサドラ・サンダース。エミリーの妹だ。


 エミリーが心配だとサンダース侯爵が送り込んできた。


「姉がとっとと引っ込んだら、わたしが王妃だったのよ。この無能が」とイサドラは面変りしたエミリーを見て、思った。


 銀灰妃が部屋で本を読んでいると侍女長がやって来た。

「ジョシー様が挨拶なさりたいそうです」


「どうぞ」の声で、ジョシーが部屋に入って来た。侍女が続いたが、猫も一緒に入って来た。



「銀灰妃様、こちらがジョシー様です」と侍女長がおおげさな身振りでこう言った。


「ニャーン」とジョシーの足元にいた猫が鳴いた。


「この猫は王妃様の猫ですが、ジョシー様を慕ってついて回ってます」と侍女長が言うと


「そう、猫もいいわね」とデイジーが言うと猫が


「ニャー」と鳴いた。


「ふん」と笑ったデイジーはジョシーに向かって


「どうぞ。おかけになって」と椅子を勧めた。


 そこにお茶が運ばれて来た。運んできたのはジョシーの侍女だった。


「出過ぎたことだと思いましたが、お茶の味は大事ですので」とジョシーが言うと侍女長が大げさに頷いた。


 デイジーはこちらからはなにも話しかけずに黙って座っていた。


 ジョシーが侍女長を見ると


「それでは挨拶も終わりましたので、失礼します。さっジョシー様行きましょう」侍女長が言った。


 それを合図にジョシーは立ち上がった。猫が「ニャー」と鳴いた。


「この子は誰にも負けない子供ですわ」とジョシーは言うと背を向けて去って行った。


「お大事に」とデイジーが言うと猫も「ニャー」と答えて、去って行った。



[ママ。マイクだよ。新しい子は小さいし、お母様の血肉が少ないからお話がうまくないんだ]

[だけど、あの猫に入り込めたんだ。すごいよな。僕たちが出来ないことが出来る。猫が遊びに来たら優しくしてあげて]

[そう、わかったわ。教えてくれてありがとう。アレクに愛していると伝えてね]

[うん、喜ぶよ]

[僕たち、侯爵があの女。ジョシーって言ったかな?あれに危害を加えないように守ってるんだ]

[うん、そうね。お願いね。無事に生まれて欲しい]




いつも読んでいただきありがとうございます!


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