12 王妃の出産
気をつけていたが、アレクがまた事故にあった。なにものかに毒を盛られたのだ。
幸い少量だったので、大事にはならなかったが、侍女たちは罰として三ヶ月の減給となった。その上犯人が見つかっていないと言うことでお互いがお互いを疑うようになり王妃の出産が近いと言うのに雰囲気が悪くなった。侍女長は侍女を入れ替えたいがこの時期に新しい侍女と言うのもまずいと思い、王妃の部屋で終日過ごすようになった。
そして、アレクが無邪気に笑ったり走ったりするのを苦々しい思いで見ていた。
そして王妃の陣痛が始まった。医者は満月が明るい中、駆けつけた。
侯爵夫妻も駆けつけた。国王は落ち着きなく歩き回っている。
翌日の朝は雨だった。雨に打たれて花壇の花がうなだれている。
そして、王妃はその夜、無事に王子を生んだ。
「王妃殿下も王子様もお元気でございます」と侍女長が皆に知らせた。侍女長は王子の髪をタオルで包んで王妃に見せた。
「まぁわたしと同じ目の色ね。良かった」と言う王妃に侍女長は
「おめでとうございます」と返事をした。
国王は部屋に入ると先ず王妃のそばに行き
「ありがとう。おめでとう。頑張ったね」と手を握りそっと頬に口づけをした。
「えぇ陛下・・・嬉しくて」と零した涙をそっと拭う王を見て、そっと部屋に入ってきたサンダース侯爵夫妻も涙ぐんだ。そして侯爵は『この子のためにアレクをなんとかしよう』と決心した。
医者が
「王妃殿下は少しお休みになられたほうが・・・お子様はあちらの部屋で」と国王と侯爵夫妻を部屋から追い出した。
やがて、ベッドに寝かせられた王子を見た侯爵はあれっと思った。
生まれた王子の髪の色が銀色に見えたのだ。だが、明かりのせいだと気にしなかった。
[ママ!ママ!]
[はい、出て来たのね]
[はい。髪色を頂きました]
[まぁネズミの色ね]
[銀灰色です]
[面白いことしたのね]
[だって、血肉はママからだし・・・血を見るのは楽しいからね]
[弟。元気だね。赤ん坊なのがもどかしい。僕もだけど・・・早く大人の体が欲しいよ]
[おぉアレク。アレク兄様]
[弟、同じ色かと思ったら違うんだね]
[うん、ママの色を貰ったの]
[二人でなんでも出来るよ]
[[ママ、楽しみにしてて]]
[してる。楽しんで]
[はい、ママ][はい!]
デイジーはガラス窓に打ち付ける雨を見ていた。
『王都の隅で貧乏で幸せだったのに・・・』
もう引き返せないことも引き返したくないこともよくわかっているけど・・・あの隙間だらけの家が恋しかった。
赤ん坊はマイクと名付けられた。
朝日が差す部屋で銀灰色の髪の毛の赤ん坊。あの女の紫の目の赤ん坊が目をあけて自分を見たとき王妃は小さく悲鳴を上げた。
「あの目。あの女の目だわ」
と王妃が声を震わせて言うと
「なにを言われるのです。あの目は王妃様の目ですよ。王妃様の紫の目でございます」と侍女は答えた。
「えぇそうよね。わたくしの目よね。紫の目・・・わたくしの子ですもの。当たり前よね」
王妃はそう言うと顔を背けて目を閉じた。
アレクはマイクを可愛がった。国王は二人を優しく見ていた。
サンダース侯爵も笑っていたが、アレクに向ける視線は冷たかった。
アレクが五歳、マイクが三歳の時、再び銀灰妃が妊娠した。それに気がついたのは身の回りの世話をしていた。ヴァレリーと名の侍女だった。
さっそく、ヴァレリーはそのことをサンダース侯爵へ伝えた。
その日のうちに届けられた薬を、ヴァレリーは食事に混ぜて銀灰妃に飲ませた。
翌朝、銀灰妃は出血した。薬のせいだ。
その夜
[ママ、アレクだよ]
[アレクどうしたの?今日はお庭で元気に遊んでましたね]
[うん、楽しかった]
[それはそうとママ。ヴァレリーがママに毒を盛った]
[毒?ヴァレリーが?]
[まぁ。それで定着しそこなった子をこちらに取り込んだ]
[そんな・・・気づかなかった。悪いことしたわ。謝っておいて]
[うん、こっちで元気にしてる。ただ、お母様の血肉が少ないのを悲しんでいる。そしてね。性悪になりそう。この子はまだお話が下手だから話せない。そのうち、会いに行くよ]
[それは、楽しみね]
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