8 . バカ正直に生きた証 ①
私の名前は、『 宇崎 優人(うさぎ ゆうと)』。 都内の某老舗百貨店にて、MENSエリア(紳士服販売フロア)で、接客業に就く28歳です。 「まだ終わらないの?」と、少々苛立ちながら声を掛けてくる女性は、同じフロアにあるLADYSエリア(婦人服販売フロア)で、接客業に就く27歳の『 谷津 矢那(やつ やな)』。 閉店後の片付けを終えたばかりの私は、「今しがた、終わったところです…」と、声を掛ける矢那に振り向きながら答えた頃には、既にバックヤードから社員休憩室へ向かおうとしていました。 遥か前を歩く矢那を追い掛けるように社員休憩室へ急ぐ私は、バックヤードから社員休憩室内にある男性更衣室へ向かいました。 2年前に矢那から交際のアプローチをされた私は、すんなりOKしたものの…。 今では何故だか「私のような才色兼備な女性と付き合えて…」などと、遥か上から見下されています…。 男性更衣室で制服から私服に着替えた私は、男性更衣室から社員休憩室を経て、関係者専用通路を通り、社員専用出入口で社員証を機械にかざして、屋外にて矢那を待ちました。 晴れれば桜吹雪が綺麗だろうに、小雨に打たれ続けて葉桜になっていました。