13. バカ正直に生きた証 ⑥
『当家に仕えます、浅野といいます』と、老男性を出迎えたバトラーから名乗られ、『宇崎といいます。当家の当主様でしょうか?』と自らも名乗りながら、一応は確認までしてみた。 背負っていた老男性の案内だから、間違いは無い筈なのだが…。『はい。当家の当主であります、武多慎太郎になります』と、椅子を用意する浅野さんから紹介されながら、背中に背負った老男性を用意された椅子に腰を下ろした。 私は椅子に腰を下ろした老男性の前で、右膝を曲げて老男性を見上げるように、片膝立ちでしゃがんむと、「もしかして…、武多商事の武多慎太郎会長?」と聴いてみました。「そうじゃが…、折角じゃから殿と呼んでもよいぞ」と上機嫌に言われたので、「それでは…、殿。改めまして、宇崎優人と言います」と改めて名乗った。「うむ、良きに計らえ」と満更でもないようで…。 甚くご機嫌な上に、「ふぉッふぉッふぉッふぉッ」と、まるで水戸黄門様のように笑われてしまいました。「貴方、大丈夫ですの!?」と、椅子に腰を下ろした慎太郎さんに駆け寄り声を掛けるのは、質素だが艶やかな着物を着た老女性。「居酒屋に行かれる道中にて、男性とすれ違いざまに身体が接触していまいました慎太郎さんは、バランスを崩されて路上に尻持ちを着かれましたとの事。もし掛かり付けの医師がお有りでしたら、診察をお願いします」と、私からの詳細な事情を聴かれた老女性は、「浅野。急ぎ、秘書の石田先生を」と、浅野さんに指示を出されました。




