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第8話 対処方法

「ど……どうかな?アイ?」


「そうだねぇ……デスペナくらったのは初めてだけど、ステータス半減は厄介だね。まぁでも、この辺の敵なら、何とか倒せるかな?」


 私のせいでデスペナルティを受けた愛依が、湧いてきた魔物を数体倒しながら状態確認を行っている。


「ただ、この先にいると思われる、ステータス上位者と戦うには、今の私じゃあ、ちょっと足手まといになりそうだね」


 そう言いながら私を見る愛依の表情からは「責任もってお前やれよ」と訴えているのが伝わってくる。

 まぁそれは、私が悪い事は重々承知しているので、甘んじて受ける覚悟である。


「でもどうするの?衰弱付いた状態でも、この辺の魔物倒せちゃうんじゃ、仮に私が、狩り場独占してる人達倒しても、気にせずに居座って、狩りを続けたりするんじゃないの?」


 ステータス上位者っていうくらいだ。β版からこのゲームやりこんでる事を自称している愛依と、少なくとも同じくらいか、それ以上の強さなのだろう。

 β版の稼働期間が長くはないみたいだから、そこまでのステータス差は無いとは思うけれど、衰弱付けた今の愛依でも対処可能な魔物って事は、この先にいるプレイヤー達も、衰弱付いても対処は可能なのだろう。


 となれば、衰弱付いたくらいで、そのプレイヤー達が逃げ帰るとは到底思えない。


「まぁ最悪、逃げ帰らなかったら逃げ帰らなかったでいいんじゃない?昇格に必要なアイテムを私が手に入れられれば問題ないんだから、邪魔してこなければ居座ってても文句はないよ……邪魔してくるようだったら、何度でもぶっ飛ばせばいいよ。ぶっ飛ばされればぶっ飛ばされた分だけ、相手は無駄な時間を浪費するわけだから、そこまで馬鹿じゃないとは思うし」


 え?そんな感じのスタンスなの?

 私はてっきり、理不尽な思いをしたであろう洞窟の外の人達の無念を晴らすために、傲慢プレイヤーを退治するんだぁ!!みたいなノリなのかと思ってたんだけど……


「外で衰弱付けてた人達の仇を取る、とかじゃないの?」


 疑問に思った事がつい口から出る。


「そりゃあ『自分達さえ良ければいい!』って理由で他人を蹴落として我が物顔する連中は気に入らないよ。でも、私達もドロップアイテムが欲しいわけだから、仮に私達がこの先にいるプレイヤー達に衰弱付けて追い出したとしたら、結局はやってる事ソイツ等と同じになるじゃん」


 言われてみれば確かにそうだ……

 この先にいるプレイヤー達を倒して『これに懲りたら、もう弱い者いじめは止めて、皆で仲良くプレイしろ!』ってなっても、その後に私達がやる事はアイテム集めだ。

 結果としては、私達が新たに狩り場を独占するだけだ。


 そもそもで、『もう弱い者いじめは止めて、皆で仲良くプレイしろ!』とか、どの口が言ってるんだ?って話だ。


「だからさ、外にいた連中が言ってたみたいに、先にいるプレイヤーからケンカ売られたら買えばいいし、そうじゃなくて、狩りの邪魔されなければ、それでいいんじゃないかな?」


 たぶん愛依が言う事が、一番正解に近い方法なんだと思う。

 ただ、その方法……私の内心は何かモヤモヤする。


 外にいた人達だって、このゲームの正式稼働を楽しみにしていた人達なのだろう。

 β版では解禁されていなかったステージに心躍らせて、いざ始めてみたら、いきなり強い人達に蹂躙される……そんなの、あまりにも酷すぎるんじゃないだろうか?


「納得いってないって顔だねクロエ……でも、もうこの階段降りたら最深部だから、余計な衝突は避けていこうよ。ね」


 ゆっくりと歩きながらだったけれど、どうやらいつの間にか最深部まで到着していたようだった。

 そんな最深部への階段を、愛依に諭されながら降りて行き……


「は~い、ごめんなさいねぇ~今この先は通行止めなんだわ。悪ぃんだけど帰ってくれねぇ?」


 最深部に着くなり、いきなり5人組に囲まれる。


「あ、この辺ウロウロされててもウゼぇから、ついでに衰弱付けてってね」


 完全にチンピラだ。


 私達を囲んでいる5人組の隙間から奥の様子を覗き見てみると、20人くらいの人達が、次から次に湧き出てくるキノコの化物みたいな魔物を、現れたその場で倒していっている様子が見えた。


『私の考えが甘かったかもね……コイツ等予想以上にクソだわ』


 突然、頭の中に直接声が届くような感じで、愛依の声が聞こえてくる。


 あ、これダイレクトチャットか!……愛依、私にだけ声が届くように喋ってるんだ。


『パーティ組める人数は5人までだから、ここにいる……ざっと見た感じ5グループかな?全員グルね。敵のリポップスピード見る感じ、お互いわけあって狩ってれば、この3倍の人数にも対応できる感じだね……コイツ等、自分達が真っ先に昇格したいがためだけに、不必要に他人を排除してる……』


「通行止めってわりには、この先に人いるみたいだけど?」


 え!?愛依、私とダイレクトチャットしつつ、このチンピラ達とも普通に会話しようとしてる!?

 何それ!?凄くない?頭の中デュアルコアでも搭載してるの?


「あっちにいる連中は関係者だからいいんだよ。つぅか何?お前、既に衰弱付いてんじゃん?ここに出る魔物にやられるような雑魚は、なおさら帰れよ。お呼びじゃねぇんだよ雑魚!」


『ここにいる1グループが人払いしている内に、あっちにいる4グループが、協力者全員分のアイテムが揃うまで狩りまくってる、って構図っぽいね』


 やめて!?頭が混乱するから、耳元と頭の中で違う会話しないで!?


「もう衰弱付いてる雑魚は見逃してやるよ。ただし、そっちで黙ってるヤツはキッチリ衰弱付けて帰ってもらうけどな」


 ん?黙ってるヤツって、もしかして私の事?頭混乱してて会話に参加できないだけなんだけど……


 ともかく、コレってやっちゃっていいやつ!?外にいた人達の無念を晴らすために、正義の鉄槌を下しちゃってもいい感じな流れのやつ!?


 私はチラッと愛依の方へと視線を向ける。

 すると、私の向ける視線に気づいたのか、愛依は小さく首を縦に振り……


「仕方ない……クロエさん!こらしめてやりなさい!!」


 今日一ノリノリな声で叫ぶ。


「かしこまりましたぁぁ!!」


 そして私も、今日一ノリノリの声で返事をするのだった。


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