第4話 オタクは語ると長くなる
「あ~成程……キャラ設定できなかっただけじゃなくて、ステータスとかもおかしくなってたわけね」
私の現状をいまいち理解していなかった愛依に、状況を詳しく説明し、なんとかわかってもらう事ができた。
まぁ言われてみればチャット中は、私かなりテンパっていて、その辺の状況をまったく言ってなかったかもしれない。
「どうしよう、め……アイ。運営は『データは正常だ』って言ってるけど、これって他の人からしたらインチキみたいなものだよね?ステータスリセットとかした方がいいかな?」
愛依を『アイ』と呼ぶ事に、まだ若干の戸惑いをしつつも、私はどうするべきかを愛依に尋ねてみる。
「別にこのままでいいんじゃないの?運営がOK出してるんだから、他の人に文句言われる筋合いはないよ。それにステータスリセットは課金しないとできないよ」
うっ……課金が必要とか言われると、ちょっと躊躇してしまう。
「課金……必要なの……?」
ちょっと動揺しての、無駄な再確認。
いちいち、ちょっとした事に動揺しているあたり、私のゲーム初心者っぷりが露骨に表れちゃってるような気がする。
「ええとね……このゲームってステータス振り分け制なのよ……そんでね……」
愛依によるこのゲームの講座が開始される。
簡単に要約するとこんな感じだ……
このゲームの基本職は、ファイター・ナイト・プリースト・マジシャンの4つで、それぞれで、力・防御・魔法防御・魔力が高くなっているらしい。
レベルが上がると、それぞれ職にあったステータス値が2上昇するのだという。そして、それとは別にフリーのポイントが4貰えるという。
フリーのポイントは、先程の力・防御・魔法防御・魔力の他、速さ・技・運を加えた7つのステータスに好きに振り分け可能らしい。
そのあたりは自由育成が可能で、ファイターにして力極振りするも、ナイトにして防御極振りするのも自由なのだが、ステータスの振り分け次第によっては、覚えられるスキルも違ってくるらしく、場合によっては取得できないスキルも出てくるのだ。
それが弱いスキルならいいのだけど、超強いスキルだった場合取り返しがつかなくなる。
そんな人のための救済処置として、数百円の課金でステータス振り分けリセット可能となっているのだ。
もちろん他にも、極振りしすぎて適性レベルの敵に勝てなくなった人とかの救済処置にもなっている。
「そんなわけで、ステータスリセットっていっても、そこまで育てた分のレベルはそのままで、累計されたポイントを再振り分け可能になるってだけだから、課金してステリセしても、今のクロエの強さに変化は起きないよ」
愛依が色々と説明をしてくれる……が、何となくは理解できるのだけれど、いまいちピンときていないのが私である。
ゲームの超初心者を、あまり甘く見ない方がいいよ、愛依。
先程の説明中に「力は攻撃力に直結してて、防御は守備力。あと微妙に最大HPにも影響してるかな?魔法防御はその名の通り、魔法に対する抵抗値で、魔力は魔法攻撃力。あと最大MPかな?速さは回避値に補正かかるし、ゲーム中戦闘外でも速く動けたりするよ。技はクリティカル値が上がって、運はクリティカル攻撃を受ける確率を低下させるって感じかな?あ、技と運は、覚えられるスキルにも影響してるとかっていう噂もあるんだよ」とか、一気に説明されたけど、私ほとんどわかってないからね!?
……まぁその辺の事は、やりながら覚えていければいいかな?
「ああ、それとね。職業は途中で変更も可能で、他職になるとレベル1からになるんだけど、フリーのポイントは一回しかもらえないんだ……例えば、ファイターでレベル10まで上げてナイトに転職した場合、ナイトレベル10まではフリーポイント無しなんだ。レベル11からは貰えるけど、そこでファイターに転職して、ファイターレベル10から11に上げても、11のフリーのポイントはナイトの時にもらってるから、もらえないって仕組みなんだよ。まぁ全職やれば平均的なステータスにする事はできるからこそ、フリーポイントをどう使うかってのがけっこうミソになっててね……」
「待って!!?待ってアイ!!?無理!!もうこれ以上情報詰め込まれても覚えきれないから!!」
怒涛の説明ラッシュにあっさりとギブアップを宣言する。
いやホント、いきなり全部は覚えられないから……
「そう?クロエがいいって言うならいんだけど……もう少し覚えておいた方がいいんじゃない?」
どれだけ喋れば気が済むんだろう……
というか、自分がどれだけ喋ってるか自覚してるのかな?
「とりあえず、やりながら覚えるようにするから、ね!」
朝一からゲーム始めたと思ったら座学受けるハメになるとか勘弁してほしいので、これ以上は説明いらない、という想いを伝えておく。
「せっかくサービス開始からログインしてるんだから、ゲームすすめよう?ランキング1位目指すんでしょ?まず何からやればいいの?」
「……そうだね、じゃあまず、この町にもハンターギルドの支店があるだろうから、そこに移動しよう。ギルドに行って依頼受けない事には何も始まらないからね」
私の言葉を聞いて、やっとゲームを進ませる気になった愛依。
もっと説明したかったのか、若干微妙そうな表情をしてるのは気のせいなのだろうか?
このゲームについて喋りたかったのに、話す相手がいなかった鬱憤が積もりすぎているのだろうか?
でもゴメンね愛依……せめて少しはゲーム進めないと、私も話相手になれないよ。
だって私、ゲーム開始してから『その場に座る』って動きしかしてないんだ……歩いてすらいないんだ……せめてさ、歩かせてほしいかな?